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魔剣使いの最凶冥王―ワールドアブソリュート―  作者: 神薙リンシア
最終章 彼女と明日を迎える為に
46/48

最終話 永遠の英雄(前編)

さて、物語も大詰めになってきました。(大嘘)

これは時系列的にはかなり後なので全く知らない剣や、技が出てくると思います、ご了承ください。


リメイクする為にこの最終話を上げなければと思い、執筆しました。これは前編なので後編はまた、いつか投稿します。


「なぁ、浅見」


ぽつりと隣に立つ自分と同じ年齢の少年に問おうとする声が暗く、ヌメリとした魔力を含んだ空間に沁み込む。隣の少年はなんだ、と訊き返す。


「お前には帰りたいと願う場所はあるか?」


俺の訊く不可解な問いに浅見と呼ばれた少年は少し考える仕草を見せる。すると答えが出たようで顔を此方に向け答える。


「ああ」


その答えに俺は拳を浅見に向け、突き出す。浅見は顔を闇が延々と続く通路に向けると俺の突き出した拳に当てる。


「・・・頼むぜ、相棒」


ゆっくりと上げた足を地面に叩きつける。ガラスが割れたような音が空間に響くと視界に広がっていた空間にひびが入り、砕け散った。そして砕け散る空間の裏で玉座に座る男が口角を上げ禍々しい笑みを浮かべた。


「よぉ・・・随分とお早い到着じゃねぇか」


四十代後半の外見で地球で見ればそこら辺にいるサラリーマンの様な顔、その身に纏うは灰色のマント。口角を上げた際に見えた鋭利な犬歯に背中から生えた立派な翼。この特徴から見るに、邪神とは――


「そうだ、お前等が思う通り。俺の種族は邪神(吸血鬼)だ」


そう言い虚空に手を翳すと黒い渦が展開されそこから一人の黒髪の少女が姿を現した。邪神は少女の首筋に噛みつくと少女は苦しそうに喘ぎ、ぐったりと邪神のなすがままになっていた。するとみるみる内に肌から血の気が引き、瑞々しかった四肢が萎れて行く。


「・・っち、胸糞わりぃな!」


浅見は右手に自身の能力で顕現させた宝剣を邪神に投擲した。邪神はその投擲された宝剣を鬱陶しそうに手で払うと払われた宝剣が音を立てて砕け落ちた。邪神は少女の首元から犬歯を抜き、此方をジロリと睨んだ。


「てめぇ、この俺様が美味しく飯を食ってるときに邪魔してんじゃねぇよ!!!」


邪神が右手を此方に向け魔力弾を放つ。俺はストレージから取り出した【吸収の魔剣システィム】を取り出し、魔力弾にブチ当てた。すると刀身に触れた瞬間魔剣に魔力が吸われ魔力弾が消滅した。


「・・・・あんた、魔力操作をキチンとこなしてなかったな?」


【システィム】が吸った魔力量を確認すると、先程飛んできた魔力弾の大きさと込められた魔力量が全く釣り合っていないことに気が付いた。


「お前魔力弾如きに魔力籠めすぎだわ。もう少し魔力操作を鍛えてたら今ので少しくらいはダメージを与えられたかもしれないのにな」


そう言って切っ先を邪神に向ける。切っ先を向けられた邪神は驚く事もなく、笑う事もなかった。ただ・・ただ邪神は無表情だった。ただ只管に感情を表に出すことはなく俺に感情の乗らない瞳で見る。


「ってかそろそろお前の名前を教えてくんない?あんまり邪神邪神ばっかり言ってっとゲシュタルト崩壊を起こしそうだから」


邪神は呟いた。過去、転移時に自身の感じる嫌悪感から捨てた名を・・・。


「・・・・義隆」

「あん?」

「新澤義隆・・・それが俺の捨てた名だ」


正直言って邪神――新澤の言った言葉の意味がよくわからなかった。奴が名前を捨てた理由を。たとえ知ったところでこれっぽっちも興味が無いので忘れてしまうだろう。だが俺は一つだけ聞きたかった。


「お前、地球での、親の付けてくれた名を捨て――」

「親から注いでもらった愛情なんて無かった!!!!」


新澤は俺の言葉に被せるようにして叫んだ。あまりの剣幕に思わず黙ってしまった。俺が黙っても尚続ける。


「俺には何にもくれなかった!!愛情も、親の温もりも、居場所も!!何もかも!!!」


ただ愚痴るように、子供の様に泣きながら叫び続ける。彼は・・・俺の目にはただ子供が泣きじゃくってるようにしか見えなかった。そして俯き、ボソボソと、まだ俺に聞こえる声で話す。


「俺の全てを・・・弟に取られた。・・・才能があったから。ただそれだけの事だった、ただ俺にはない物を持っていた。ただそれだけの筈なのに・・・・・俺の幸せを奪う弟が許せなかった・・・・だから殺した」


そして顔を上げた時には既に何かを割り切った様な顔になり――俺は右手に握ったままである【システィム】を本気で振った。音すら置いていく程の斬撃に空間そのものに亀裂が入る。それと同時に新澤から放たれたファイアボールが真っ二つに咲かれ、消滅した。


「おいおい、さっきよりも膨大な魔力量だし。尚且つさっきよりも威力あがってんじゃねぇか・・」


【システィム】の吸収したファイアボールの魔力量に眉を上げつつ呆れたように言う。新澤は憎悪の籠った瞳で俺を射抜いた。それは俺をも半歩引かせられる程の憎悪が籠っていた。その隙を新澤が見逃すはずもなく、ファイアアローを放ってきた。半ば慌てて剣を振ってファイヤアローを吸わせる。


「熱っ!?」


突如新澤のファイアアローを吸収した【システィム】の刀身から柄に至る全てが紅に染まり、熱を帯びた。【システィム】を手放さなかったのは底なしの魔力量を誇っているからであり、本来人間では握る手が灰化する程の熱量だ。そしてその刹那、肉迫した新澤に気が付かなかった。俺が気が付いた時には既に剣の届く間合いのその中。懐に入られており、どうすることも出来ずに新澤の拳を受けた。肋骨にひびが入る音が体内に響き苦痛に顔を歪める。伸ばして来た手を左手で掴み、右手に持つ【システィム】で新澤の腕を切り落とす。不思議と新澤の腕からは血が出なかった。だがそんな事は今言ってられない。


「『白虎』」


その声に呼応し蒼炎が巨大な虎に形を変え俺に襲い掛かる。【システィム】をストレージに引っ込め【妖刀村雨】をストレージから引き出し、そのまま虎を斬る。が、その刃は虎の額で止められ、火花を散らす。


「おいおい、その虎・・・実体化してんのかよ!!」


虎の下顎に蹴りをかまし、引かせると【村雨】を上から額に叩きつけ伏せさせると身体を半回転させ【村雨】で下段から斬り上げる。今度は抵抗されることなく真っ二つになり、消滅した。ちらりと浅見の方を見ると青い龍と戦っていた。先程の新澤の言葉が魔法の名前なのだとしたら浅見の戦うあの青い龍は『青龍』なのだろう。


「・・ってこたぁ、中国の四神かよ」


俺の推測を裏付けるように新澤が口角を上げると右人差し指に付けていた黄金の指輪を抜き、投げた。


「『百鬼夜行』」


新澤が魔法を発動させた刹那、浅見の戦っていた『青龍』が消え新澤の前に魔獣の軍団が現れた。それはリュウクド帝国で起こった百鬼夜行とは比べ物にならない程の軍勢、そして四神、神殺しの獣フェンリル、更には―――冥王。


「―――あー、胸糞わりぃな。てめぇに呼び出されんのは物凄く不快だ」


俺の羽織る漆黒のローブと全く同じものを羽織り、背中に背負う大剣は謎のオーラを発している。この世界では珍しい短く切られた黒髪に黒い双眸。一見すると只の日本人に見える外見に戸惑ってしまう。と、冥王の意識が此方に向き、冥王の目に怪しげな光が見えた。


「へぇ・・・・この時代の冥王かい。これはちょっと楽しみになって来たな」


冥王は獰猛な笑みを浮かべると大剣の柄に手を掛ける。ジャリン、と金属の擦れ合う音をさせながら大剣を鞘から抜いた。魔獣の軍勢を引かせ、大剣を引き摺りながら前に出てくる。


「ちょっと、試してみたくなっちまったよ」


大剣を上段に置き、此方を見つめる。大剣の刃は軽く刃毀れしており、刀身は荒く研がれ、もう剣自体の寿命が無いように見える。そして黒光りする刀身には何かの意思が宿っているように怪しく光る石が嵌っている。ゾクリ、鳥肌が立った。あの剣に嵌っているあの石からは何か・・・怨念の様な物を感じた。この世界に対する強大な怨念を。俺は上段に構えられたモノを見つめ、【村雨】を強く握った。数秒程流れ、何の合図もなく俺が踏み込んだ。地面が爆ぜ、俺の姿が消えると同時に冥王が大剣を振り下ろした。冥王の振り下ろす大剣を視界にキッチリ納め【村雨】でいなし、剣型を叩きこむ。


「『不知火式 初ノ型 不知火』!」


【村雨】を振ると同時に刃に魔力を込め、刃を補強する。【村雨】を胴に叩き込み一閃する。肉体を斬った感覚は伝わってこず、代わりに固い物に当たった感覚が返ってくる。その感覚の正体はいつの間にか引かれ胴をガードした大剣であった。


「くっそ、どんな反射神経してやがる・・ッ!!」

「クッハハハ!!滾る、滾るぞ!!現冥王ッ!!!!」


辺りに鋭い剣戟が響き渡り剣風が吹き荒れる。冥王は大剣とは思えない程の速さで振り、刀という細身の武器の利点である速さを大きく上回りまさに疾風の剛剣と呼ぶに相応しかった。


「『不知火式 新ノ型 凰剣豪覇(おうけんごうは)』!!」


冥王の大剣の刀身に横から【村雨】を叩き付け、折る技・・なのだが――パキンッ!、澄んだ音が剣戟の響いていた空間に響き渡る。俺は砕け散る【村雨】の刀身が視界に映り、一瞬、ほんの一瞬思考を停止させてしまった。


「残念だ」


冥王がそう呟いたと思った刹那、俺は吹き飛ばされ、真っ黒い壁に叩きつけられた。あまりの衝撃に肺の中の空気を吐き出してしまった。


「カハッ・・・」

「・・・弱い、弱すぎる。こんな奴が現冥王なのか?・・・お主、精神面(ココロ)が弱すぎる」


憐れむ視線を向けられ俺は思わず歯を食いしばる。その心情を現すような赤い血が傷口の開いた頭から流れた。冥王が言った言葉は浅見が懸念し、指摘をしてきた所だからだ。


・・・。畜生・・・畜生。こんな、こんな所で死んでいいのか・・?俺を庇って死んでいったユキノに、何か報いたか・・・・・?・・・いや、俺は、ユキノに何も出来ていないまま、何も伝えられないままユキノをむざむざと殺してしまった・・・・だから・・・だからせめて、人類の生き残れる道を示して逝こう。


遠ざかる意識を無理矢理繋ぎ止め、立ち上がる。俺の立ち上がる姿を見ると冥王は目を細めた。


「・・・お主の役目はもう終えた。お主は冥王でも、勇者でもない。ただの人の子だ」


あからさまに何も出来ない者と言う言葉に俺はニヤリと口角を上げ笑った。狂気の宿った様な笑い声に冥王は眉を上げ、神獣のフェンリルや犇めく魔獣達は恐怖を感じた。この漆黒の空間に響き渡る笑い声に浅見すら俺に視線を向ける。


「無冠の冥王」


俺の呟いた一言にストレージに納められていた剣達が呼応した。虚空に空いたブラックホール様な穴から無数の剣が飛び出し、魔獣に降り注ぐ。剣が命中した魔獣は勿論、刃の掠った魔獣も次々と消滅していく。両手の平を開くと右手に【古式歩兵銃】、左手に【短銃】が現れ、それを握る。そして【古式歩兵銃】の銃口を冥王に向けトリガーを引いた。火薬が爆発し、その爆風で鉛の玉が銃身の中を通り、銃口から射出され、鉛玉が冥王の眉間を目掛け一直線に飛翔する。冥王は大剣を振ると銃弾の一つを斬り裂いた。


「所詮は飛翔する鉄。斬れない訳がな――」


冥王が言葉を吐くその中、冥王の両足膝に風穴が空き、崩れ落ちた。驚きを隠せない冥王に俺は先程の速度を上回る速度で肉迫し、ストレージから取り出していた【魔刀クロノ】で居合いを放つ。流石に不意を打った一閃は避けられなかったようで大剣でガードした。冥王は衝撃で飛び、俺は後退した。互いに引いたこの状況を見ていた新澤は眉を上げた。


「・・不思議だ。主の撃った鉄の弾は全て斬った筈なのだが・・・、何故か我の膝に当たっていた。お主が撃った弾は全部で二つ。いや、我には二つに見えた。その二つは斬り捨てた、証拠はそこに転がる鉄の破片。我に与えられた弾は二つ、合計四つの弾を・・・まさか一度に発射したのか?」

「冥王の頭は風車かよって程回るな・・・正直、その短時間にその答えに辿り着くとは思ってなかったよ」


俺は【古式歩兵銃】に掛かっているリミッターを解除すべく己の血を銃身に垂らす。勿論、垂らす血は冥王に飛ばされた時から流れている物だ。自然に銃身に血がかかるように予め計算していた場所に固定する。ヒタリヒタリと銃身に血がかかる音が確かに俺の耳に届く。


「お主は弱くない。それを認めよう、だがお主が強いという証拠もなく、見てすらいないのだ。早う見せぬと――」


――死ぬぞ?


そう冥王が言った刹那眼前に冥王の大剣の切っ先が迫っていた。俺は転生者の中でも最高クラスの反射神経があった為か切っ先をスレスレで避ける。頬に一線の切り傷が刻まれ傷口から血が滴る。全力で避けたため銃身に僅かながらかかっていた血が飛んでいる。俺は口角を上げ左腕に噛みつき、自分の肉を皮と共に剥いだ。先程と比べ物にならない量の血が流れる。その流れる血を【古式歩兵銃】に浴びせると【歩兵銃】の銃身に刻まれた魔法印が朧げに光り、膨大な魔力を放出する。放出された魔力は空気に溶け込むことはなく【歩兵銃】を包む。そしてその状態のまま銃口を驚きの眼差しで此方を見る冥王に向けた。


「『剣製(ソード・ワークス)』」


トリガーを引くと銃口の数センチ前に魔法陣が展開されそこから真新しい剣が射出された。冥王は顔を歪め大剣で射出された剣を振り払う。


「『剣製(ソード・ワークス)』」


もう一度トリガーを引いた。そして先程と同じように魔法陣が現れ―――冥王が動いた。俺の懐に肉迫し、大剣を横薙ぎに振るう。


「――残念ながら、誰もこの銃口の魔法陣からしか出ない何て・・一言も言ってないんだが?」


その言葉の意味する事がわかったのだろう、冥王は再び驚愕の表情になると地面を蹴り、横移動した。すると先程冥王の居た位置に正確に剣が刺さる。俺は刺さった剣を抜き、逃げた冥王に向かって思い切り投げつけた。剣は音速を超えるが、それでもまだ冥王には届かないらしく、剣を大剣で真っ二つに斬り裂いた。


「・・何、面白い呪式よなぁ・・その呪式、ゼロから作り出す幻想ではなく、材料で一から作り出す錬成魔術のその応用」


俺は冥王の言葉に身体を硬直させた。冥王は全てを見通したようにカラカラと笑った。そして言葉を続ける。


「だがその呪式は我の生きていた時代には既に禁術とされ封印し、失伝されたと思っておったのだがな・・。愉快で仕方ない。最初は少女の為に戦っていたんだろ?そこの浅見楓真に奪われた魔剣の少女の為に。なぁ?」


俺は嫌でも耳に入ってくる言葉に眉をひそめながら銃口をを向け、発動コードを呟く。


「『剣製(ソード・ワークス)』」


銃身の魔法印が輝き魔法陣を展開する。が、途中で魔法陣がブレ、砕け散った。魔法陣展開失敗(ファンブル)ッ!?あり得ない。そう叫びそうになる口を結び、迫る冥王の大剣を銃身で逸らす。グニャリと目を背けたくなる程歪んだ【歩兵銃】を投げ捨て、ストレージから毎度毎度お世話になっている【聖剣エクスカリバー】を引っ張り出し、スキルを発動する。


「『英霊降し/アーサー・ペンドラゴン』!!」


いつか、届くはずの手を俺はまだ、伸ばす。これは、俺が神の座に手を掛ける為の力・・・。さぁ、寄越せよ過去の英霊。お前等の無念、願い、残した物、全て背負ってやる。だから、俺に、神になる――いや、神を超える為の力を寄越せ!!


――特殊スキル『アーサー・ペンドラゴン』を発動します。


いつからか聞かなくなったこの世界(システム)の声が脳に響き、湧き上がる力と共に一つの魂が俺自身の魂と一つになった感覚が身体の内側であった。


「この一刀でお前を超える(・・・・・・)!!!」


俺の声が聞こえたようで俺の魂と結びついたアーサー・ペンドラゴンの魂が声無き声で叫ぶ。それと同時に冥王の口角が一気に上がり、叫んだ。


「・・やってみろ!!!英雄ゥゥウウウウウウウ・・ッッ!!!!!!!」



―――我が命は我が手の中に


―――汝の命は汝の手の中に



俺は【エクスカリバー】を上段に上げ目を閉じる。



―――世の理を外れ、冥府への道は開かれた


―――今、汝の命は我が手の中



そして魂から聞こえる声に耳を傾け、



―――招き、導き、常世の全てを蹂躙する


―――冥府の剣は扉を開き、新しき贄を迎え入れるだろう



魂の叫ぶまま俺は叫んだ。



―――汝、その運命を受け入れ給え



「『刻黄泉―――千華』ッッ!!!」


黒と銀の入り混じった光が【エクスカリバー】を包むと、【エクスカリバー】の刀身に刻まれた魔力刻印が青白く光り、不可思議な色合いを見せ、冥王に叩きつける。冥王は大剣を下段に置き、


「『オーバーロード』」


冥王の剣に赤黒いオーラが纏いつき、剣に六芒星が現れた。そして冥王は魔法の重ね掛けをした。


「『血に飢えた剣(ブラッドブレード)』」

黒い魔力が赤黒いオーラの纏いつく剣に纏いつき、剣が鼓動した。上から打ち下ろされる【エクスカリバー】に大剣を叩きつけた。不可思議な色合いの光と赤黒い光が交差し、互いに色を食いつぶし合う。


「ッッッ!!・・く、うぉおおおおおおおおおおッッ!!!!!」


俺の身体の――魂の奥深くに宿る無限に等しい魔力をこの剣に入る分の魔力を一気に込め、威力に変換する。勿論、威力に回す為、数億もの魔力が秒で消費される。今、この空間の魔力濃度はあり得ない程高いだろう。【エクスカリバー】の刀身にヒビが入り、その部分から剣に内包された魔力が漏れ出す。


「吹き荒れろ!!」


漏れ出した魔力を刃に纏わせ、纏わせた魔力の流れを荒くさせる。【エクスカリバー】を中心に暴風が吹き荒れ、魔力消費が先程とは比べ物にならない量になっているが今は目を瞑っておく。【エクスカリバー】の破片が暴風に攫われ飛ぶ。聖剣の名は伊達ではなく破片でも掠っただけで五センチの傷を作ってしまう。――そして遂に【エクスカリバー】を冥王に叩きつけた。冥王の大剣は半ばから折れ、今の一撃で【エクスカリバー】はボロボロになっている。そして冥王は最後の魔力を拳に纏わせたかと思うと、その拳をカウンターとして俺の左肩に突き出した。突然のカウンターに反応できず俺はノーガードで受けた。


「・・・お主は――強いな」


フハハ、と笑うと膝から崩れ落ち冥王は息絶えた・・・。それと同時に今まで待て、をしていた魔獣共が俺に襲い掛かった。全く、と呟き【エクスカリバー】を強く握り、振る。襲い来る魔獣を一刀のもとに叩き伏せ、【エクスカリバー】を掲げ、改めて名乗りを上げる。


「・・・俺はこの戦争を終わらせに来た!俺は神々の意思、そして勇者達の代行者――夏井楓真だ!!覚えとけ、クソ神!!!」


そして切っ先を新澤に向けた。新澤は額に青筋を浮かべ体内の魔力を放出する。椅子を立ち、俺に近付いてきた。その圧倒的な魔力量に新澤の呼び出した魔獣が一匹ずつパタリと倒れてゆく。浅見は新澤から立ち昇る魔力の色に驚き、目を見開いた。


「それがお前の遺言でいいんだな?」


藍色の粒子が新澤の左手に渦巻くと粒子が目も眩むほど輝くと一振りの剣が現れた。剣の返す光は禍々しく、そして何しろ全貌が読めない。まるで闇を纏っているかの如く、その刀身が黒く染められ、刃渡り、間合い、細剣なのか長剣なのか、全くと言っていい程分からない。その剣に俺は少しの恐怖を覚えた。




―――――――――――――――【浅見視点】



俺は自分のユニークスキルを発動し、砕かれた右手に握る宝剣を補充した。汗が額から頬に伝わり冷たさを多少感じる中、両手に握る宝剣の柄を強く握った。


「おやおやおや?これはこれは~邪神様じゃないっすかぁ~??こんな所でお会いするなんて~・・・あぁ、申し訳ない、()邪神様でいらっしゃいましたねぇ~???」


ニコニコと俺に向けて笑みを絶やさない男に、本当にこいつは・・、と心の中で毒づいた。こいつは以前、夏井が俺の建てた『不夜城』にのり込んで来たときに真っ先に逃げた七つの大罪の一人。傲慢のルシフェルト・・・っていう名前だった気がする奴だ。奴の手には鈍く輝く蒼い長剣が握られており、切っ先の刺さった地面は凍っている。奴のユニークスキルは確か――


「おやおやおや?まさか元邪神様はワタクシのユニークスキルを覚えていてくださらないとぉ~??そんな薄情なぁ~、では改めてワタクシのユニークスキルの名前をお伝えしましょう。ワタクシのユニークスキルの名は【無欠の聖擬剣】ですよぉ~、今度はおぼえてていてくださいねぇ~???まぁ、どうせ貴方は此処で死ぬので、教えても意味は無かったと思いますねぇ~????」

「相変わらず、ストレスの溜まる言い方だな、ルシフェルト」


俺は肩を竦め、ルシフェルトは俺を睨み付けた。ルシフェルトの背中から巨大な翼が姿を現した。左右で色が違い、左翼が黒、右翼が白というまさに――堕天使のようである。否、彼の者は堕天使である。その整った顔に憎悪の色が浮かぶのが目に見えて分かった。


「貴方がッ!貴方があの異常者(イレギュラー)に情けなく!倒されるから、我らが主に見放されるんですよ!この無能がァッ!!」


俺は血走った目を此方に向けるルシフェルトを冷めた瞳で見つめる。ルシフェルトは冷めた視線を気にせず続ける。


「貴方は我らが主の偉大さをわかっていない、なのでワタクシが我らが主に導かれた時の事をお話ししましょう。ワタクシは魔王を倒すべくして民から選ばれた勇者であったのです――」


いや、此処で新しい設定を入れなくていいんだけど・・・・。

ルシフェルトの言葉を聞きながら冷めた視線から困惑の眼差しに変わり、俺はは少し、面倒くさい奴、と思った。突然ルシフェルトが話を止め、此方を睨み付けた。


「だからこそ、ワタクシは貴方を許せない。あの万人に救いの手を伸ばしたあの方を裏切った貴様には!」


ルシフェルトは【聖擬剣】を握り、踏み込む。白刃がキラリと光り首筋に届く。それを宝剣で斬り上げ、弾く。スピードを乗せた一刀を弾かれルシフェルトが体制を崩した。ガラ空きとなった胴に一撃を叩きこむ。ルシフェルトはその一撃を【聖擬剣】で防ぐ。バチリと火花が散り、ルシフェルトの顔が苦に満ちる。俺は叩きつけるような重力魔法を使い、ルシフェルトを吹き飛ばす。そこに追撃を入れる為ルシフェルトを追う。


「『月鏡(ルーナ・ローグ)』!」


右手に握られた【聖擬剣】と全く同じ剣が左手に靄と共に出現した。そしてこの空間の上空に蒼い月が浮かんだ。地面を滑りながら俺の双刀による追撃を【聖擬剣】を十字に構えて受ける。鍔迫り合いのまま俺達は睨み合う。


「此処でくたばりなさい!反逆者!!」


ルシフェルトは双剣で押し返す。俺は地面を蹴り後退を余儀なくされた。それでも尚迫る双剣を手に持つ宝剣で逸らし、滑らせ、回避する。


「悪いが、此処で死ぬ訳にはいかねぇんだよ!!」


迫りくる双剣の刃に宝剣で防ぎながら斬り結び、空間に剣戟の音が響く。【聖擬剣】から徐々に青い軌跡が生まれ始め、目に見えて剣速が早まり一刀一刀の威力が上がり、押されていく。


「負けて・・・溜まるかってんだッッ!!!」


宝剣から黄金の光が溢れ、刀身に纏わり付いて波打つ。押されていた戦況が傾き始め、逆にルシフェルトを押し始めた。ルシフェルトの顔が苦虫を噛み潰したようなものに変化し歯を食いしばる。


「『勇気ある者(ブレイバー)』発動!」


ルシフェルトに後光が差し、【聖擬剣】に真っ赤な光が溢れる。まるで狂戦士(バーサーカー)の様で緊張感が走る。この剣戟の間合いからルシフェルトがバックステップで抜け出し、俺がそれを追う形で斬り伏せに行く。と、ルシフェルトが右手の【聖擬剣】を逆手に持ち帰ると瞳に光が灯り、ヌルりとした動きで俺の剣を捌き、ルシフェルトがぼそりと呟いたのを俺は聞き逃さなかった。


「『オール・カウンター』・・・これが俺の魔王討伐に使った技だ」


紅の光が迸る【聖擬剣】が迫り、俺はそれを残った片手の宝剣で防ぐ。防いだのも束の間、紅の刃がもう一刀迫るのが視界に入った。何故・・・、そう考えるが、答えに行き付いたのは案外早かった。あぁ、そういう事か・・、納得した。何故一刀だけだったのに急にもう一刀飛んできたのか、それはルシフェルトの行った先程の行動にある。・・そう、‟逆手″である。逆手にした後身体ごと回転したのだ、俺が一刀目を防ぐことを予見して――否、俺が、ではなくこれを初見で受けた者が、だ。そこで俺は宝剣を離し、もう一振りの宝剣を作り出すと、現在夏井から盗んだ再現可能な技を使う。


「『偽・七神刀流奥義 雷迅黒双刀』」


黄金の光が溢れていた宝剣から黄金の光を塗り潰すように黒い焔が立ち昇る。バチリと小さな雷が刀身に発生すると共に、ルシフェルトの視界から俺が消えた。ルシフェルトの放った一刀が虚空を斬り裂き、ルシフェルトが目を見開く。黄金の光を纏ったもう片方の宝剣に黒い焔が移り、更に速度が上がる。一刀一刀が死を刻む刃であり、死神だ。ルシフェルトは冷静にその刃を受け流していく。


「ちっ、クソが!」


悪態を吐きながらだが確実に驚いていた最初よりかは動きが良くなり精神状態が正常になってきたという証拠である。仕掛けるのは此処しかない・・此処で仕掛けなかったら確実に負ける!、タイミングを見定めるべく攻撃を続け、遂にそのタイミングが現れた。此処だっ!、足に力を入れ直角に動きを変える。両手の宝剣から黒い焔が失せ、スピードが格段に落ちる。原因は無理矢理身体を直角に変えた事と技の途中で全く別の行動をとったからと推測し、そのまま前進を続ける。


「『宝剣 桜花』!!」


俺が声を出したことにより此方を振り向いたルシフェルトの顔には困惑と驚愕の色を浮かべた。その時は既に俺は片方の宝剣を捨て、一振りの宝剣を両手持ちにして上段に構える。宝剣から桜の様に鮮やかなピンク色の光が満ち溢れそれを一気にルシフェルトに振り下ろした。最後に見たルシフェルトの表情は何処か寂し気で、満足したような顔だった。そして宝剣はルシフェルトの肩口から斬り裂き、真っ二つに斬り落とした。俺は何とも言えない心中にその場に立ち竦むことしか出来なかった。ガクッと俺は膝から崩れ落ち、俺は自身の燃費の悪さに苦笑を浮かべこの戦いに使った魔力の量で残りの寿命を数え、最後と悟った俺は聞こえる筈もない言葉を呟いた。


「後は、頼んだぜ・・・・夏井。・・・・ミリア・・今行くぞ・・・・・」


愛する者の名前とたった一人の相棒の名前を呟いて、浅見は逝った。



―浅見楓真 十六歳 死亡―




はい。これが最終話の前編でございます。実に後味の悪い終わり方です。まぁ、後編も後味が悪いのでお覚悟を!(すいません)


とまぁ、後編はお待ちください。それでは後編でお会いしましょう。ありがとうございました

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