0.9.5.1 ポトフちゃんと神託
それじゃあ、クエストを続けましょう。
ベッドから降り、部屋から出て1階へ向かうと、再びクエストが進んだ。
・会話を聞く
誰の?と、辺りを見回すと、頭上にマーカーが浮かんだ、獣人と人間の男性2人組がテーブルについているのが視界に入る。
その2人を注視していると環境音が小さくなり、ラジオのチューニングが合うように、彼らの会話だけが鮮明に耳に入ってくるようになった。
聞こえる内容を要約すると、あの人達は冒険者で私達と同じようにここの宿に泊まったらしい。獣人の方は神樹の夢も見たようだ。
『多分あれが世界樹様なんだろうな……』
ん?あれ?夢に出たのは神樹だよね?あとでうさちゃんに聞いてみよう。
『ほーん。でも、ただの夢だろ?』
そう返す人間の男に、料理を運んできた女将さんが加わる。
『そりゃあんた、神託じゃないかい?』
『神託って、あれか?世界樹様が魔力よこせーっつってくるやつ?』
『んな言い方じゃなかったぞ。もっとこう、自分より格上のヤツに命令されるような……プレッシャーが凄かった。』
余程重圧を感じたのだろう、獣人はペッショリと耳を伏せる。
『でも、神託か……何すりゃいいんだ?やんなきゃ死ぬとかねえよな?』
『お前との旅もここまでか……』
『縁起でもねえこと言うな!なあ、女将さん!なんか知らねえのか!?』
『あたしに聞かれてもねえ。詳しく知りたきゃ、教会にいってみるんだね。』
と、ここで会話は終わりみたい。周りの音が戻ってきました。
・教会へ向かう
そして、クエストも進みました。次の目的地は教会です。
その前に、せっかく食堂にいるんだし、おやつを食べてから向かいましょ。
メニューを開いて、ふと思い出す。パウンドケーキ、ちゃんと実装してたっけ?
「出社してる奴に聞いてみるか?」
「お願いします。」
どうやら、お店に並んでないだけで、実装は出来てるみたいです。それじゃあ、今並べちゃおうかな。
調理場を借りて、クイック作成!からの盛り付け!
ひとつの皿に、1センチ程の分厚さに切ったものを2枚、ずらして重ねる。
そして、脇にホイップクリームを置いて、仕上げにミントをちょこんと乗せる。これでよし!
お店に並べて、改めておやつタイムにしましょう。
ついでに、さっきの会話で気になった事を聞きます。
「海底、地底の国には、現代じゃ訳あって行けないようになっててな。今生きてる地上の人間は海底にある神樹なんて知らないんだ。」
「そうなんですね。あ、だから、身近にある世界樹だと勘違いしてる感じですか?」
「そういうことだな。」
そんな感じで。まったりおやつタイムを終えたら、教会へ向かいますよ。
………
……
…
湖の国の中央区、ど真ん中にそびえ立つ大きな大きなお城。ここに、教会を含めた国の重要施設が詰まっています。
地下部分には魔道具の研究施設があって、そこは冷温庫などの家電を作ってくれたメリーちゃんの管轄なんだとか。
大きな入口はいくつかあるけれど、教会への入口は山林の国方面。世界樹のある樹海の国が正面に来る形になるね。
大きな観音開きの扉を開いて教会へ入ると、まず目に入るのは、正面突き当りにある壁一面のステンドグラス。
中央には世界樹であろう輝く大きな木が描かれていて、周りは小動物や草花で賑やかに飾り立てられている。
「ほら、根本の真ん中のところ見てみろ。」
「真ん中?……あっ!」
耳元に顔を寄せてきたうさちゃんが指さす先には、ちっちゃいけどたんぽぽが描かれてます。センターポジションとかちゃっかりいい場所に居るじゃ〜ん。
そのステンドグラスの手前には祭壇。そして、入り口からそこまで真っ直ぐ続く通路があり、左右に長椅子がずらっと並んでいる。“教会”と聞いてイメージするそのまんまの造形だね。
中に入ったところでクエストも進み、“司祭へ話しかける”と出てきました。
マーカーが示すのは、祭壇の横にある講壇のような場所にいる人。近寄って話しかけてみよう。
『おや、こんにちは。どうかされましたか?』
声をかけると、穏やかに微笑み返してくれる、耳先の尖ったエルフっぽい男性の司祭。目尻に現れるシワが過ぎた年月の長さを物語っている。
……おじさんのエルフって、相当歳食ってそうだね。
「神託について聞きに来たんです。」
私たち〜これこれこういう夢を見て〜と説明。
『なるほど、それは神託で間違いないでしょう。』
「それで、光を捧げるってどうすればいいんでしょうか?」
『そちらにある祭壇へ、魔晶石を捧げて祈るんです。こちらへどうぞ、一緒にやってみましょう。』
そう言って司祭さんは祭壇へ歩み寄り、懐から魔晶石を取り出して並べ始めた。
私達も司祭さんの動きを真似て、魔晶石を並べてみる。
準備する傍ら、司祭さんはこの祈りの成り立ちを語ってくれた。
『人類で初めて神託を受けたと言われている、偉大なるルチアーノ・グリムは、“光”を“光属性あるいは聖属性の魔力”ではないかと考え、自身の魔力を込めた魔晶石を、祈りと共に世界樹へ捧げたそうです。
その後、彼の足跡である“巡礼の旅路”を辿った人々も、同じように魔晶石を捧げました。』
聖属性……うちのもちさんがそうだったよね。でも、私達は持ってません。
私の手の中にあるのは、苔のような落ち着いた緑の魔晶石。うさちゃんのは、大地を思わせる赤茶の魔晶石。
どちらも、司祭さんの青白く艷めく月白の魔晶石とは天と地ほどの差がある。
『必ずしも聖属性である必要はないようですよ。魔晶石であればどんなものでも受け取ってもらえるようです。』
それぞれの魔晶石を見比べる私に気づいた司祭さんがそう付け足す。そうだよね、どちらにせよ元は殻の人達の力だし大丈夫か。
『さあ、次は祈りましょう。』
「祈る……」
『はい。どのような形でも構いません。国や人によって信仰の形は変わってきますから……ただその……激しく踊ったりするのは控えていただけるとありがたいです。』
そんな注意喚起されるってことは、踊った人がいるのかな……困ったように眉尻を下げて、苦笑いを浮かべてる。
祈りの形。といえば、合掌だろうか。そう考え、手を合わせて目を瞑る。
あとは、祝詞とか?でも、そんな格式ばった文言は知らないのて、なんとなく世界観に合わせたそれっぽいセリフをつけよう。
光を捧げよ……元は殻の人達の力だったんだから……
「“光”をお還しします。」
神樹様まで届きますように。そう願いを込めて囁く。
一拍おいてまぶたを上げると、魔晶石が星のようにキラキラと輝き、ゆっくりと上昇し始めた。
そして、私の目の高さを越えたあたりで、ステンドグラスから差し込む日差しに、溶けるように消えてしまった。
「これで、“光”は届いたんでしょうか?」
『……ええ。世界樹様も喜んでおられることでしょう。』
光芒をぼんやりと見ながら呟くと、どことなく意味深な間をもって返答がくる。消えただけだもんね、届いたかなんて分からないよね。
『ところで、お二人は見たところ他国からいらした方ですよね?こちらへは観光で?』
「いえ、今回はたまたま。ギルドの依頼をこなして、休憩をとりに来たんです。そこで神託を賜ったって感じですね。」
だよね?と、うさちゃんを見上げると、ニコッと笑い返される。私の判断に任せるよってことだろう。うさちゃんはテストプレイでメインクエは済ませてるらしいからね。
『ああ、冒険者の方でしたか。でしたらこちらを、よろしければ持っていってください。』
そう言って渡されたのは、リボンでくくられた羊皮紙の巻物。
リボンを解いて広げてみると、地図が載っている。右下に湖があるので、これは恐らく草原の国だろう。
何故か、所々丸く白抜きされているのだが……
『それぞれの街にある教会に、魔力で押すことのできるスタンプがありますので、その白く空いたところにポンと押してください。』
ポン、と猫の手のようなジェスチャー付きで示される。スタンプラリーみたいだね。いや、御朱印帳かな?
『そちらを埋められた暁には、またこちらへいらしてください。私どもからささやかな祝福を送らせていただきますよ。』
「分かりました。頑張って集めてきます!」
こうして教会から送り出されたところで、今日のゲームはおしまい。ちょっと現実の方でやることがあるので、時間は早いけどお開きです。
次にゲームをやるのは、リリース後。
今までにない“嗅覚”と“味覚”を利用するこのゲームがこれから先どうなるのか、不安だけど楽しみだ。
「じゃあ、また後でな。」
「はい!また後ほど!」




