0.8.4.0 ポトフちゃんとウシカボチャ祭り
おはようございます!本日は先行プレイ最終日。泣いても笑っても、今日で終わり。最後まで楽しみましょう!
いつもよりちょっとだけ早くログインして、やってきたのは一ツ葉の街。ここからイベント会場へ向かいます。
マップに立てられたピンを頼りに、馬に乗って街を出ると、遠目にも分かる違和感。
見晴らしのいい草原の先、ピンが刺さっているであろう場所にドーム状の建造物が見える。
そう、あれこそがイベント会場です。
カッポカッポと馬を走らせ、たどり着いたそこには、見上げるほどに大きなシャボン玉のような結界。
オーロラのように揺らめく虹色は、透けているように見えて不思議と中の景色は映らない。
しかし、反対側の風景は見えるようで、青空や草原、そして、会場へ集まった人影が見える。
結界の周りをぐるりと回り込んでみると、想像以上に人がいた。100人……いや、それ以上いるかも。
聞こえてくる会話によれば、“入り口はこちら”と書かれた立て看板が数本立っているようだ。なるほど、だからこの辺りにたむろしてるのか。
辺りを見回すと、見知った顔がチラホラと目に入る。
結界のそばで会話している、真っ白と真っ黒なコンビは衣装班の天泣さんと闇夜さんだ。
あっちには昨日の建築班のお二人もいるし、そっちにはトンテンカンのドワーフトリオもいる。
クリエイターの皆以外にも、串焼きを作るときに話した獣人のお姉さんや配信者さん、パウンドケーキを一緒に作った、鬼いさんや、幽霊のお姉さん……あっ!推定転生者の狐さんもいるね。皆来てくれているみたいだ。
「あと何分?」
「あと……30秒!28、27……」
目が合った知り合いに手を振り返していると、何やらカウントダウンが始まった。
「「20、19、」」
「え?なになに?」
「もうすぐ開くの?11!」
「「「10、9、」」」
その声は周囲の人たちにも伝播し、カウントダウンの合唱が始まる。
「「「3、2、1、0!」」」
0、の声が終わると同時に、結界は天辺から溶けるように消え去り、歓声と共にイベント会場があらわになる。
「「「おお〜!」」」
入場口から真っ直ぐ、正面には『ウシカボチャ祭り』の横断幕の下がったステージが。
その両翼には、扇状に屋台やバーベキュー用のコンロが立ち並んでいる。
手前の広場には、肉焼き機と簡易的な椅子、包丁や調味料などが乗せられたトレイに、地面に敷かれた大きなラッ葉、の4つをワンセットにしたものが、およそ100セット、びっしりと並べられている。
そして何より目立つのがウシカボチャ、ウシカボチャ、ウシカボチャの山!至る所に積まれ、小山ができている。
『おはようございま〜す!皆さま!お集まりいただきありがとうございます!』
『お待たせいたしました!どうぞ、会場内へお入りくださ〜い!』
いよいよ始まったイベントに、ソワソワとざわめくプレイヤー達。そこへ、たんぽぽ族のスタッフがわらわらと寄ってきて案内を始めた。
固まっていた人の群れは、スルスルと会場に飲み込まれていく。
『イベントの開始は正午からとなっておりま〜す!それまでご自由にお過ごしくださ〜い!』
『お飲み物はいかがですか〜?』
正午からと聞いて、また後で、と会場を出る人もポツポツと出始めた。
しかし、中にはNPCに近づいて、会話に聞き耳を立てている人もいる。どれどれ、私も聞いてみよう。
『お姉ちゃんが言ってたみたいに、あのマンドラゴラ達が原因なのかなあ?』
あ、このお姉ちゃんって私の事らしいですね?まあ、間違いではないか……
『びっくりしたよ。ウシカボチャの畑になんでかジャガイモみたいな葉っぱが生えてるんだもの。』
『えへへ、可愛かったのでうちの子にしちゃいました。』
『キュワ〜!』
可愛いジャガイモ風マンドラゴラ、ジャガドラゴラ達を連れたNPCもちょこちょこいる。
ぽてぽてと人の間を駆け回って売り子達のお手伝いを頑張ってますよ。
ちなみに、マンドラゴラ見ての通り色んなフォルムの子がいるらしい。
その中でも、こんちゃんみたいな眉根、口の辺りに生える髭根、それから、しっぽのような尾根。このような根っこが生えた子はちょっとレア。複合タイプはもーっと希少。
……もう1個余談ですが、ジャガドラゴラはちょっとだけ髭率高くしてもらいました。男爵芋ってあるでしょ。
さて、私もちょっと時間を潰してきましょうかね。ここを拠点として、魔物を狩ってきま〜す。
………
……
…
さて、現在時刻はもうすぐ11時。
そろそろウシカボチャが配置される時間なので、イベント会場へと戻ってくると、ちょうどたんぽぽ族の子がステージへと上がるところでした。
この子は料理を教えてくれるNPC、調理場にいる子だよ。お手本もこの子がやってくれます。
『これより、会場内へウシカボチャを配置いたしまーす!』
ステージ上からの、そのアナウンスを合図に、ステージの後ろ、あるいは会場に積まれたウシカボチャが様々な方法で配置されていく。
数人で神輿のように担いで運ばれるウシカボチャ……
インベントリから取り出して、どむ、どむ、と置いていくパワフルなたんぽぽ族……
『は〜い、どいてどいて〜。』
『『『キュワキョワキュッキュッ〜!』』』
そして、マンドラゴラ達もお手伝い。大玉転がしの様にゴロンゴロンと運ばれていくウシカボチャ。
……そういえば、ちっちゃいマンドラゴラみたいな植物?が寄り集まって大きい荷物を運ぶ、そんなゲームがあったなあ。あ、歌うところも一緒だ。
「これ、触ってもいいっすか?」
『お触りはちょっとだけならオッケーで〜す。』
「でっけ〜!」
「〈鑑定〉!お、すげえこれ優じゃん。」
ふふふ、プレイヤー達もはしゃいでるはしゃいでる。
………
……
…
さて、ウシカボチャが運ばれる様子を眺めながら、飲み物を買ったり、プレイヤー達と話したりしていると、あっという間に正午になりました。
『本日は〜“ウシカボチャ祭り”へお越しいただき誠にありがとうございます!これより、本日のメインイベント、“マンガ肉”の制作に移らせていただきます!』
『皆さまどうぞ、ウシカボチャのそばへ移動してくださ〜い!』
ついに!始まりのアナウンスがかかりました。
目指すはど真ん中!会場へ響くたんぽぽ達の声を背に、意気揚々とセッティングされたウシカボチャの元へ向かいます。
『大掛かりな作業もありますので、大変ですので、2人から4人のグループで取り組んで頂いても大丈夫で〜す!』
『もしくは、近くのスタッフに手伝いをお申し付けください!』
私が動き出したのを皮切りに、プレイヤー達もぞろぞろと動き始め、私の周りの席も埋まり始めた。
椅子に座って解体ショーの始まりを待っていると、後ろか、横か、どこからか気になる言葉が耳に届く。
(綿毛マンだ……)
(綿毛さんいるじゃん!)
……?それ私?
いや、自意識過剰かな……




