0.8.4.1 ポトフちゃんと先行プレイの終わり
解体ショーの始まりを待っていると、席が埋まりきったのか、椅子に座れずうろうろと歩き回る人がぽつぽつと出始めた。100セットしかないから、溢れちゃう人はどうしても出るよね。でも大丈夫!
『ウシカボチャはまだまだございます!2回目、3回目の分もご用意しておりますので、焦らずお待ちくださ〜い!』
『それ以降は解体済みのウシカボチャを焼いていただく形となりまーす!ご了承くださ〜い!』
ホントは何回でもやりたいところなんだけど、時間がない。ある程度自由時間も欲しいので、解体から実食まで、通しでじっくりやるのは3回としました。
『それではウシカボチャの解体を始めまーす!』
『まずは私共がお手本をお見せしますので、皆さまも続いて実践してみてください!』
さあ、いよいよ始まります。
たんぽぽ達のアナウンスを合図に、ステージ上空に、大きなスクリーンが投影された。
映し出されるのは、ウシカボチャの左右に立つステージ上のたんぽぽ達。
これも一応、魔法らしいです。
『まずはこうして……っと、ヘタが横に来るように横倒しにして下さ〜い。』
それでは、席を立ちまして、彼女達を真似てウシカボチャの解体を始めたいと思います。
………
……
…
『は〜い、この中央にある太い骨!この周りに着いているお肉が、マンガ肉に使われる部位で〜す!』
『バラ肉、ランプ肉等の外側のお肉は、一旦回収させていただきま〜す!後ほど外周にある屋台にてお召し上がりくださ〜い!』
皮を剥ぎ、肉を剥き、マンガ肉の素となる骨つき肉を取り分けると、不要部分はスタッフに回収され、空いたラッ葉の上には2回目用のウシカボチャが置かれた。
お次は、肉焼き機に骨付き肉をセットし、成形したり、しなかったり。好きな形に整え、最後に塩を振って、焚き木に火をつけ焼いていきます。
『回すごとに火が通りますので、回しすぎにはご注意くださ〜い!』
『ぐ〜るぐる、ぐ〜るぐる。』
え?プレイヤーを子供扱いしてないかって?……セリフは私が考えたわけじゃないんで。調理における注意点とかは伝えたけどさ。
『さーて、そろそろいいかな?表面に焼き目が着き始めたら完成で〜す!火の通りが甘ければ、もう一度肉焼き機にセットしてぐるぐるしてくださいね〜!』
『外側から少しづつ切り分けるもよし、そのままかぶりつくもよし!お好きな方法でご賞味ください!』
ということで、出来ました!マンガ肉!
「……これで完成かな?」
「おお、マンガ肉出来た!」
「えっと、食べていいんだよね?」
周りの人達のお肉も、続々と焼き上がっております。しかし、口にする人は見当たらず……スクショに夢中になっているように見えて、その実、未知の味への恐れや警戒があるのだろう。
そうだよね、そんな3日4日じゃ食べ物への興味は生まれても食欲は湧かないよね。
てなわけで、私の出番ですよ。プレイヤー達に見せつけるように、颯爽と肉焼き機からマンガ肉を取り外し、ワイルドにかぶりつく!
「……うんまぁ〜!」
柔らかいのに歯ごたえもあって、肉を食ってる!という満足感がすごい。うっすらピンクな焼き加減も最高だ。
にこにことご機嫌で頬張っていると、周りの熱い視線を感じます。ゴクリと飲み込む生唾の音まで聞こえそうだ。
「ほふっ柔らかあ!」
「んん〜口の中で溶ける〜。」
「こ、これが高品質の肉……!」
「これで〈優〉だろ?〈極〉ってどんだけ美味いんだ……?」
ヨシッ!皆さんついてきてくれました。やはり、一人やり始めると一気にハードルが下がるね。
ある程度食べたら、周りの人と交代。肉焼き広場を離れ、屋台の方へ向かいます。ちょっと喉を潤そう。
………
……
…
『では、もう一度始めから説明いたしま〜す!まずはこうして……』
2回目の解体ショーを横目に見つつ、バーベキューエリアにやってまいりました。
ここではたんぽぽ達がお肉や野菜を焼いてくれてます。んん〜いい匂い。
でも、私の目当てはその近くにある、“ご自由にお使いください。”の看板が立てられた、無人のバーベキューグリルが並んだ場所。
そう、セルフでも焼けるようにしてあるんです。
近くにいるたんぽぽに話しかけ、『バーベキューセット』を注文。内容物は、食べやすくカットや加工がされたお肉と野菜、調味料などなど……こちらを調理していきます。
まずはお野菜から食べようかな。バーベキューと言えば〜トウモロコシ!こちらあらかじめ茹でてあります。
これを網の上に転がして、スプーンで醤油をちょちょっと垂らしながら焼いていくよ。
しばらくすると、醤油の焦げた香ばしい匂いが漂ってきました。はあ、いい匂い……
くるっと一周、焼き目がついたら『焼きトウモロコシ』の完成です!
茎を掴んでジャクッ!と一口。
甘〜い!口の中に広がる粒達は、トウモロコシの自然な甘みがギュ〜っと凝縮されて美味い!そして、しょっぱくもコクのある醤油がその甘みを更に更に引き立てている。美味……単品でもう一つトウモロコシ頼んじゃお。おっと、その前にお肉だお肉!
………
……
…
キャベツにパプリカ、カボチャ。タマネギアスパラ、シイタケ。肉を食べながら合間合間に野菜を挟む。火を通した野菜の甘みって、最高だよね。塩をパラッと振っただけで、もう、たまりません。
そうやって、もくもくと焼いてもぐもぐと食べていると、時折プレイヤーから声をかけられる。
「あの、その食材ってどっかで売ってます?」
「そこのNPCから買えましたよ。これは『バーベキューセット』ってやつの中に入ってました。」
ふふふ……釣れてる釣れてる。私ってば客引きの才能があるのかもしれないな。
………
……
…
時刻は17時55分。楽しい時間はもうすぐおしまい。
皆、記念スクショを撮ったり、可愛い仲間達を抱きしめたり。思い出を語らっては、別れを惜しんでいる。
夕焼け空も相まって、どこか物悲しい雰囲気が漂い始める中、それを吹き飛ばすような大きな声が響いた。
「正式リリース版もやりまぁす!!」
祭りでハイになったのか、はたまたヤケクソか、その声をキッカケに、プレイヤー達は思いの丈をぶつけるように叫び始めた。
「俺もやる!」「私もー!」
「やだー!終わりたくない!」
「マンガ肉美味かったよー!」
「ありがとー!」
「楽しかった!」
「皆またねーっ!」
そして迎えた18時00分。
今までのことが夢だったかのように、周りにいた人たちが一瞬にして消え去った。
あとに残されたのは、閑散としたイベント会場と、未だ動き続けるNPC達。
そして、クリエイターと運営の皆さん!
「「「お疲れ様!」」」
『『『おつかれ〜!』』』
皆の弾むような声に、寂しさは一瞬で消え去った。
「ポトフ〜!大成功じゃん!」
「はい!」
飛びかからんばかりの勢いで駆け寄ってくる、弾けるような笑顔のテンさんとハイタッチ!
集まった皆でハイタッチを交わし、喜びを分かち合う。
そして最後は、社長の締めの言葉。
『皆、お疲れ様。ポトフ、大成功だったね!』
「はい!」
『それじゃあ、今日はこれで解散だ。片付けは後回し!帰ってしっかり休むように!』
「「「はい!」」」
大丈夫、きっと大丈夫だ。ユービキアスは成功する!間違いない!
料理だって、もっとたくさんの人に広められる!
それではそろそろこの辺で。社長のお達しの通り、帰ってゆっくり休みたいと思います。今日も1日お疲れ様でした!




