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エニグマvs全人類vsダークマター。宇宙最強ラスボス会議。③


 独特な空気感が場を支配している。

 オレも暗黒物質(ダークマター)も、互いにどちらから口を開くか様子伺いをしている。

 レオナルドはその様子を口角を上げたまま静観していた。


「レオナルド、我々の総意はこうだ、貴様は真実を語らない。確かに貴様ならエニグマの正体を知っていても不思議ではない、いや、知っているのであろうな。だが、貴様はこの宇宙で一番信用ならない存在だ、従って、余計な情報に惑わされては身の破滅を招く危険がある。我々が貴様に何かを問うことは未来永劫、ないだろう」


「オレも同意見だ。こいつは人が悔しがる顔を見て喜ぶタイプだからな。適当にはぐらかされて笑われるのがオチだ」


 二人は明確な拒絶の態度を見せる。

 レオナルドは小さく嘆息した。


「そう、か、残念だ。さて、親交も深まったし、無駄話は終わりにしよう。我々にしかできない話があるだろう。この宇宙で最強の存在が揃ったわけだし、宇宙の今後について語らおうじゃないか」


 レオナルドが悠々と語った。

 エニグマ代表のように扱われていることに疑問を抱いたオレは、自分はそこまでの器ではないと感じ、すぐに反発する。


「待て、それだとオレは適任じゃない。オレは10番だし、エニグマの中で最強なのは1番だと聞いている。オレじゃないだろ」

 

「いいや、適任だね。君がエニグマとして完全に覚醒すれば、1番なんて目じゃないほどの力を手に入れる。私はそれを知っている。この宇宙で最強のエニグマは、間違いなく君になる。人類視点でみれば、君こそが倒すべき悪の親玉なのさ」


「そうかよ、何が何でもオレを悪だと決めつけたいなら、勝手にすればいいさ。オレがやるべき事に変わりはないからな」


 事実ではなく推論で話すレオナルドに苛立ちの感情を覚えるが、こんなことは今にも始まったことではないと、オレは怒りの矛先を半ば強引に納める。

 そうでもしなければ、レオナルドという異常な男とは、対話などできないと悟った。

 その考えは暗黒物質(ダークマター)も同じなようで、レオナルドに対し終始、呆れと苛立ちの表情で対応していた。


「どんな戯言も聞くだけなら造作もないことだ、()()()()()


「いいね! よしよし、では腹の探り合いは無しにして、まずはお互いの目的を述べようじゃないか。私は宇宙の生命を人類だけで統一したい。他は全て殺す。つまり、エニグマも暗黒物質もこの世から完全に消し去り、世界を人類のための人類による人類だけのモノにしたい。それが人類と、我々調停者の総意なのだよ!」


 両手を広げて演説をするかの如くレオナルドは語る。

 その姿はどこか喜劇染みていたが、誰も笑うことはなかった。


「我々は生命全てを飲み込み、黒で染める。原初への回帰。宇宙はかつて、純粋で無だった。世界、つまり、人類など不要だ。全てを闇に沈める。それを邪魔するエニグマも我々の敵だ。どんな手を使ってでも葬り去る」


 レオナルドの狂気が伝染したのか、暗黒物質(ダークマター)も宇宙の意思としての総意であろう心情を語りだした。

 二人の男が熱く自分の目論見を語っている姿を、オレは冷めた目で眺めていた。こんな時、神様はなんと主張するのだろうか。

 しばらく考えて、オレは自身の中に燻る正義という感情を形にして口に出してみることに決めた。


「オレの望みは……アンタ(ダークマター)アンタ(レオナルド)、二人とも倒す。戦いを生む原因を根こそぎ潰して、全ての生命が争う事なく平等に生きていける世界を作る。世界に平和が戻ったら、俺は人間に戻って故郷に帰る。それだけだ」


「つまり、人類全てや暗黒物質を敵に回しても、エニグマは戦う、それがエニグマの総意という事でいいんだな?」


 念を押すように尋ねるレオナルド。その顔は悪意に満ちている。

 そこに何かの意図を感じとったオレは逡巡する素振りすら見せずに即答する。


「勘違いしないでくれ、それは違う。これはオレ個人の意思だ。エニグマは関係ない。オレ一人で、お前達の野望を潰す」


 真剣な表情でオレがいい放つと、レオナルドは笑い、暗黒物質は憎らしげに舌打ちをした。


「ハッハ! 言うねペルセウス! 私の意に反して人類が君に希望を抱くわけだ、面白い! 神話の再現を見せてもらおうか!」


「小僧が……」


 宇宙で最も強いであろう男が三人、互いを威嚇し睨み合う。

 息をするのも躊躇われるような緊張感、そこに緩和をもたらすのは、やはり異常な存在であるレオナルド。


「まぁ、これでお互いが憎むべき敵だと改めて認識も出来たわけだし? 今この場で殺し合いを始めてもいいのだが、それだと芸がない。ダンナ、特にあんたは、過去にエニグマに()()()()傷が癒えていない。今戦えば確実に負ける。違うかな?」


「……万全でないのは事実だ。しかし、このまま引き下がるわけにはいかない。我々はいつでも全人類とエニグマに宣戦を布告する用意がある」


 核心に迫られたからか、暗黒物質の声に今までのような覇気や威厳が感じられない。

 レオナルドは含み笑いで、今度はオレを見つめる。


「意地張りなさんな、オヤジの痩せ我慢は醜いだけだぜ。オレくんはどうかな? 今この場で戦争を開始して、出来立てホヤホヤの10番街に私の軍隊を送り込んでも平気かな?」


 相手が嫌がる事を的確に見抜き、交渉に持ち込む。

 付け入る隙すらないレオナルドのやり口に、オレは思わず下唇を噛む。


「……できる事なら、今はまだ、遠慮願いたいね」


「そうだろう、そうだよな! 実は私も色々と実験中でね、全人類がエニグマに対抗するための【進化】にもう少し時間が必要なんだよ。そこで提案なのだが、今からキッカリ三年後までを準備期間として、その時がきたら宇宙を賭けた全面戦争を始めようじゃないか」


 意見でも提案でもなく、拒否権のない命令である。

 当然、返ってくる言葉もレオナルドは把握している。


「三年か、それもまた一興。我々としては異論はない」


「オレもそれでいいよ。色々とやるべき事もあるし、それまでに、アンタらを完全に倒す方法を考えるから。……負けじゃないからな、レオナルド」


 思い通りの展開に満足したのか、レオナルドは満面の笑みで指を鳴らし、何もない空間から一枚の羊皮紙を取り出した。


「よろしい、実に懸命な判断だ! ではエニグマ、人類、暗黒物質による全面戦争は三年後、それまでは互いに手出し無用、こんなところで協定を結ぶとしよう。宇宙最後の刻を有意義に過ごしてくれたまえ!」


 オレも暗黒物質(ダークマター)も黙って書類にサインする。

 ここに三者間による協定が正式に結ばれた。

 宇宙の存亡をかけた最終戦争まで、残り三年。

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