両親
「ただいま帰りました。」
「おかえりなさい。クティエ。」
「おかえり。しかし、少し帰るのが早くないか?」
「はい、説明が難しいのですが、王宮の方で一悶着ありまして…」
「あら、婚約が破棄でもされたことかしら?」
「え?いや、なんで?え、知ってらしたのですか?」
まさか既に知っているとは露にも思っていなかったため、驚きのあまり一瞬だけ下町の少女の様になってしまった。
「あぁ、こう見えても耳は早い方でな。とりあえず無事に帰って来てくれてよかった。」
「しかし、せっかくとの王子との婚約を破談としてしまって…」
「そんなこと大したことではないわ。しかも、王様もあの王子には手を焼いているようだし、かえって良かったかもしれないわね。とりあえず私たちはあなたが無事でいるだけで幸せだわ。」
「ですが、これがきっかけで王家との仲が疎遠になってしまっては申し開きもありません。」
私の焦りとは裏腹にお父様が少し笑みを浮かべながらゆっくりと口を開いた。
「なんだそんなことか。クティエは知らなかったかもしれないが、現国王様はクティエの手腕を高く評価してくださっている。浪費をした訳ではないことはもちろん、今のクティエの影響力もある程度把握していらっしゃる。賢王であるあのお方が、下手をすれば国が崩壊する様な真似はなさらないだろうよ。」
「そ、そうだったんですか!?大変な光栄でございます。」
「そうですよ。だから、あなたは家のことなんか気にせずしたいことをなさい。私たちはあなたのしたいことを応援するわ。」
「ありがとうございます。お父様、お母様。」
今日はもう休みなさいという両親の言葉を受け、ありがたく床に着く。あのバカ王子をどんな目に合わせてやろうと考えを張り巡らせながら。