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第二星は、おっさんと対面するようです。


 ーーー第八、坤捌(コンバツ)の扉。


「来ましたね」


 謁見の間で、玉座の脇に立っていた帝国七星第二星パラカは、開け放たれたドアから姿を見せた人物を見て絶世の美貌に笑みを浮かべた。


 開け放たれたドアから最初に姿を見せたのは、赤い鎧を身に纏って肩に大剣を担いだ日焼けした黒髪の男。

 

 若々しく精悍な顔立ちをしており、口元に凶悪な笑みを浮かべた彼は、竜の顔と翼を模した額当てをしており、その奥から覇気が迸る目でこちらを睥睨した。


 ーーー〝竜の勇者〟リュウ・リン。


 その少し後ろから現れたのは、肩に聖白龍を乗せた銀髪の男。


 とても強い冒険者には見えない細い長身で、文官のような雰囲気を纏う彼は、黒い杖を手に持ち、細いチェーンを備えた銀縁メガネをかけている。


 無表情な彼は、歩くたびにチェーンをシャラリと音を鳴らしながら、青い瞳で射抜くようにこちらに目を向けた。


 全身を白く装うのは、礼服とその上に羽織ったファー付きのコートである。


 聖白龍や神々より与えられたそれらの装備に、決して装備の神威や横に立つ勇者に劣らぬ〝圧〟を彼は身に纏っていた。


 ーーー〝策謀の鬼神〟クトー・オロチ。


「どうやら、全員無事に陣を抜けたようだな」


 コツ、と足を止めたクトーは、自分の後ろの扉からぞろぞろと現れた〝三殺トライアド〟や時の巫女、ゴーレムなどに目を向けて、軽くうなずく。


「一人、まだ姿を見せていないようですがね。まだ陣を突破していないのでしょうか?」

「最後の扉に入ったからな」


 彼らを待っていたパラカは、その答えに軽く目を開いた。


「鬼の待つ扉に、一人だけで行かせたのですか。随分と自信がおありのようだ」

「自信があるのは俺ではなく、あいつの方だ」


 クトーは、扉の前に展開された魔法陣の上にあぐらを掻き、パラカらに背を向けて座っているマナスヴィンに目を向ける。


「……ネアルはどこだ」

「ここにいますよ」


 パラカは、軽く体を退ける。


 そこに、マナスヴィンのものと同じ魔法陣の上に座り、後ろ手に縛られて虚ろな目をしている黒色人種領の副官がいた。


 さらに、謁見の間の頭上には【使者の杖】と呼ばれる神の傀儡……カードゥーとケウスが、それぞれに吊られており、ハイドラが玉座に腰掛けている。


 パラカと逆の位置にはラードーン、そして玉座のある場所から短い階段を降りた先に、第一星のタクシャが立っている。


 その布陣を眺めて、クトーが軽く目を細める。


「ネアルを解放しろ」

「そんな命令を聞いて差し上げる義理はありませんね。それに、第七の扉をあなたのお仲間が突破すれば、自然と解放されますよ」

「死と共に、か?」


 パラカは、やはり見抜いていたらしいクトーの様子に嬉しさを覚えながら、拍手を送った。


「やはり読んでおられましたか。ということは、レヴィ・アタンは捨て駒ですかね?」


 【ドラゴンズ・レイド】に最後に加入した彼女は、実力で言えば他の連中に一歩も二歩も劣る。

 たった一つでも突破不可能となれば、マナスヴィンの『負け』はない。


 捨て駒としては最適、とパラカは考えたが。


「……元々誰かを犠牲にするつもりなどない」


 クトーはそう口にしながらも、なぜか微かに顔をしかめた。


「上手く行くのかどうかは読めなかった。……だが、あいつならやるだろう、と思わせるものがあったから、任せた」


 そう言っている間に、開けっ放しのドアからコツ、コツ、と足音が響く。


 そうして最後に姿を見せたのは、一人の少女。


 褐色の肌に、ツリ目気味の目。

 頭の上にポニーテールを結った彼女は、ニンジャの白装束を身に纏っており、ヘッドギアをつけている。


 そして、鬼を突破してきた割には、全く怪我をした様子もなかった。


「へぇ。陣を完成させたのか。……でも、それだとネアルが死ぬよ?」


 パラカが首をかしげると、レヴィは鼻を鳴らして、得意そうな様子でこちらに向けて親指を下に向けてくる。


 雑魚のくせに生意気だ。


「陣はちゃんと突破してきたわよ。ーーーでも、完成はしてないのよね!」


 彼女が言った瞬間に、マナスヴィンとネアルの座っている魔法陣がボヤッとした輝きを放ち。


 そのまま、パリン、と砕けて無数の燐光となって散った。


今日は二作更新です。17時にもう一本上げます。

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― 新着の感想 ―
[一言] さすがクトーさん。 レヴィーも流石だ!
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