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【完結】最強パーティーの雑用係〜おっさんは、無理やり休暇を取らされたようです〜【書籍全3巻】  作者: 凡仙狼のpeco
第6章:最終決戦編

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おっさんの迷いに、誰かが手を上げたようです。


 ーーー第六、坎陸(カンロク)の扉。


 水にして次男、陰陽陰ゆえに内なる迷いを呼ぶ扉である。

 扉を開くと、その先に広がっていたのはおそらく交渉の場と思われる景色だった。


 赤絨毯が敷かれた中に置かれている二つの机。


 女神像の前に存在しているそれは縦向きに置かれており、目の前にある女神像に最も近い一つを除いて椅子に座す者たちがいた。


 当然ながら顔は見えない。


 そして長机の間にも、跪(ひざまず)いた誰かがいた。


 ーーー一体、この場の迷いは何だ?


 〝采配八計の陣〟各扉が時間通りに動いているのだとすれば、扉の先にある状況から、察するに黒色人種領の誰かが敵対するどこかと軋轢を起こしたのだろうと察せられる。


 それが内なる迷いを表すとするのなら、この場において問われるのは。


「法と、情。そして交渉の行方……」

 

 支配者の責任につきまとう、最も厄介なものが濃縮されているのがこの場なのだろう。

 そしてマナスヴィンの迷いを払い、現在の支配者たらしめた場でもあるのかもしれなかった。


「真ん中にいるのは誰なのかしらね?」


 部屋の中を覗いたレヴィの言葉に、クトーは淡々と答えた。


「この場が交渉の場とするのなら、恐らくは罪人だろう。もしくは、軋轢の原因になった人物だ。マナスヴィン側にとってのなのか、相手にとってのなのかは定かではないが」

「あの人を裁くってこと?」

「単純に裁けばいいのであれば、簡単な話だな」


 法に則り、適正な裁きを受けさせればいい。


「問題は、おそらくあの罪人をマナスヴィンが裁きたくはなかったか、交渉そのもので相手と手を打つ条件が厳しいものだったと思われるな」


 でなければ、マナスヴィンが迷う理由がない。


 攻める側にしてみれば、どれだけ自分に有利な条件を引き出せるか、という部分だけ考えれば良く、仮にイーブンであったとしても損はない。


 失うものがない交渉で迷う者はいないのである。


「何が起こるかは……分からんな」


 しかし、今までの扉の状況から推察は出来る。


 己との決闘、敵からの逃走、仲間を見極める観察、進むべき導(しるべ)を得た場、喪われた大切な者。


 ーーー今までの扉は全て、マナスヴィンの柔らかで繊細な心と、その弱さを示しているのだ。


「そして仲間がいる。ネアルが、マナスヴィンが陣を張る理由であるように、扉の中もほとんどが仲間に関することばかりだ」


 強く在らねば、守るべきものを守ることは出来ない。

 マナスヴィンもまた、迷い、己の弱さと戦いながら仲間を得て、黒色人種領主まで上り詰めたのである。


「ならば、あの場に跪いているのはマナスヴィンの仲間だ」


 この場でその命を奪うか、あるいは相手に裁かせるか……おそらく交渉の落とし所としては、そのくらいが妥当なのである。


 迷いを払うのが、それを覆すことなのか、もしくはより多くを守るために切り捨てることなのか。


「……ミズチを行かせたのは、失敗だったか」


 他のレイドの連中は直情的で、交渉ごとに向くかと言われればそうではない。


 ーーージョカがいればな。


 あの男ほど、この扉に向いている者もいなかった。

 レイドの中で、ミズチと並んで賢く、また豪胆な者だったのだ。


 ここは、クトー自身が行かなければならないだろう。


 ーーー次の扉はほとんど、答えが決まり切っている。


 扉の内容と、誰を行かせるか。

 その指示を与えるためにクトーがシャラリとメガネのチェーンを鳴らしながら振り向いた時、足元から声が聞こえた。


『俺が行こう』


 目を向けると、そこにいるバラウール二号が軽い調子で手を上げていた。


「お前が?」

「って、あなたゴーレムじゃない!」

『ゴーレムが行っちゃいけねぇってルールがあんのかい?』

「……お前に、人とのしがらみがあるのか?」


 この場は、試練として成立し得ない者を赴かせることは禁じ手である。


 いかに人間臭いとはいえ、生まれたばかりのバラウールにそうしたものがあるとは思えなかったのだが。


『お前さんとあの変態ゴーレム使いが仕込んだ『心』ってやつは、なかなか妙なもんだったらしくてな。俺にゃ、人間としての記憶がある』

「……なんだと?」

『もちろん俺自身の記憶じゃねーんだろうが、俺はそいつを『自分だ』と認識してんのさ。だから、過去があるかねーかと言われりゃ、俺には過去がある』


 バラウールはこちらを見上げて、軽く首を傾げた。


『なぁ、クトーよ。俺はお前さんじゃねぇお前さんを知ってるのさ』

「……なんか、デストロを倒した時もそんなこと言ってたわね」

『まぁ、任せろよ。指揮官が出張るのは、最後の最後だろ? お前さんが行くって選択は、取れる手を全部取り切ってからだ』

「……信じていいんだな?」


 口から出まかせを言うとは思えないが、出会った時からのバラウールの言動を考えれば、決してあり得ないことではなかった。


 嘘であれば計略が崩れるだろうが、嘘でなければ。


『任せろよ、クトー。しがらみの落とし所についちゃ、俺はそれなりに知ってる』

「分かった」


 クトーは決断した。

 彼もまた、レイドの仲間である。


「行け、バラウール。ーーー心の傷を抉り揺さぶり、迷いをもたらす者を論破してこい」

『おうよ』


 扉が閉まる前に、軽く拳を上げたその背中が、ジョカと、そして懐かしい誰かと重なった気がした。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] その背中に重なった者は誰だったのか・・・ いろいろ忘れちゃってるなぁw
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