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【完結】最強パーティーの雑用係〜おっさんは、無理やり休暇を取らされたようです〜【書籍全3巻】  作者: 凡仙狼のpeco
第4章:魔王暗躍編

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おっさんは、仙人の助力を受けるようです。


「仙人というのは、嘘だったのか?」


 神の召喚を行う魔法。

 それをむーちゃんが行使したことも驚きではあるが、それによって現れたのがトゥスだった。


 ならば、トゥスは人ではないということになる。


 しかし自称仙人は、ヒヒヒ、と再び笑って尾を揺らした。


『わっちはヒトさね。神と呼ばわる連中もちっとばかしいたりはするけどねぇ』


 神仙さ、とあっさり告げるトゥスに、後ろめたさは感じない。

 しかし今はそれに関して追求している場合ではなかった。


「翁。ジョカの魂を救ってほしい」


 クトーの願いに、トゥスは耳をピクリとさせる。

 あぐらをかいた姿勢のまま、片眉を上げてキセルから口を離した。


『……魂だけでいいのかねぇ?』

「それ以外に方法がないのなら」


 ジョカを死霊と化すことも、下僕と化すことも望まない。

 魂さえあれば、肉体は最悪作り出すことができる。


 だがそんなクトーに、トゥスは意地悪い笑みを浮かべて問いかけた。


『そいつぁ、ゴーレムの体にでも入れ込むのかい? 兄ちゃんは、それを『生きている』と思うのかねぇ?』


 ゴーレム化。

 その手段を正しいと思うかどうかと問われれば。


「正しいとは思わない。ジョカの気持ちを考慮もしていない。これは、俺のワガママだ」

「クトー……」


 レヴィが辛そうな表情を浮かべて自分の名を呼ぶのを、あえて無視した。


「ルーもバラウールも俺の仲間で、意思ある者だ。自らの意思で動ける肉体を持つ仲間だ。……その外見が気にくわないというのなら、生前の姿を作り出しもする」


 魔法陣で動く生身というのなら、ホムンクルスという手段もあった。


 本来、ビンの中に収まる全知の小人を指す言葉だが、生きた肉を使ったフレッシュゴーレムの代わりとして意思なき肉を成長させる方法も知らないではない。


「だがそれは全て、生きていてこそだ。翁」


 クトーはメガネのブリッジを押し上げて、まっすぐにトゥスの目を見つめた。


「魂に、記憶を持つ、俺の知るジョカがそこにいる事が、俺にとってなによりも重要なのだ」


 かつてクトーには、何もなかった。


 自分は人よりも多くのことを早く理解して、様々なことをこなせはしたが、ただそれだけの空っぽの男だったのだ。


「俺に喜びを、悲しみを、強さを。ーーー生きる意味を、俺に与えてくれたのは【ドラゴンズ・レイド】の仲間たちと、その周りにいる人々だった」


 自分が、誰かを失う痛みも。

 自分以外の誰かが、失った者を嘆く姿も。


 今まで、何度でも感じ、見てきたのだ。


「仲間がいなければ、彼らがいなければ、俺は今ここにいない。だから、翁」


 頼む、という願いに、トゥスは。

 もう一度静かにキセルをくわえると、ふー、と煙を吐いた。


『兄ちゃん。わっちはそんなことを聞いてるんじゃねーねぇ』

「何?」


 意地悪い笑みはそのままに。

 トゥスは、衝撃的な一言を放った。




『体ごと救えるのに、魂だけでいいのかい? と、わっちはそう聞いているんだけどねぇ?』




「……出来るのか?」

『やるのはわっちじゃねぇ』


 あぐらの膝に肘を置いて身を乗り出したトゥスは、ふよん、と移動してクトーと目線の高さを合わせた。 


『兄ちゃん自身、さ』

「俺が?」

『そうさね』


 トゥスは、晴れ渡る空に目を上げて、誰かに問いかけた。


『お前さんも、もうそろそろ腹を決めねーかねぇ? どうせ見てるんだろうしねぇ』


 それが誰への問いかけかは分からなかったが。

 少しして、クトーは手の中の偃月刀に違和感を覚えた。


※※※


「やれやれ、相変わらず、他人を巻き込むのが好きなジジイだねぇ……」


 薄暗い場所だった。

 さして広くもない店の中は年季が入っており、様々な魔導具が一見ごちゃごちゃと、実際は完璧な形で配置されている。


 腰の曲がった老婆は、水晶の中から自分を見上げてくる獣の姿をした旧知を見ながら、青い光に照らされた顔に小さな笑みを浮かべた。


「ま、いいんじゃないかねぇ……クトーもレヴィのお嬢ちゃんも、わたしゃ気に入ってるからね」


 老婆が水晶に手をかざすと、水晶の視点が同じように虚空を見るクトーに移る。

 

「特別サービスだよ」


 そう、小さく笑いながら……王都のオンボロ魔導具店の店主であるメリュジーヌは、もう一つの姿に変わる。


 彼女は、漆のような髪と瞳を持つ白い顔の美しい女性になった。

 そして、自らの作り出した武器たちに命じる。


「お変わり、我が子ら。あんたたちの惚れ込んだ、今の主人のためにねぇ」


 神竜の偃月刀が、言葉に答えて徐々にその刀身を光に変えていく。

 そしてカバン玉の中に存在する双竜の魔銃もまた、創造主の言葉に応えた。


 勝手に飛び出して空中で、4色の光を放ちながら球体になり、同じように巨大な光の玉になった神竜の偃月刀と入り混じり始める。


 普段は、偏屈だが腕のいい魔導職人。

 しかし彼女にはもう一つの名がある。


「サマルエのボンのタガが外れたなら、アタシも好きにやっていいのかねぇ。……ティアム。わたしゃクトーに肩入れするよ?」

 

 かつてティアムの要請によって、情報屋カードゥーと夢見の主ケウスの素体を作り出し、神竜の装備を作り出した存在。

 魔王の魂を保護し、輪廻の輪から外していた張本人。

 



 ーーー死と輪廻の神、ウーラヴォス。




 彼女は婉然えんぜんと微笑んでから老婆の姿に戻り、皺だらけの手で水晶を撫でた。


「あんた、世界を救う男になれるかい? クトー」


 人知れず笑った老婆は、姿を変えた自らの子である武器たちを見て、満足そうにうなずいた。

 

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