おっさんは、相棒とともに魔王軍四将を滅したようです。
「ジョカ……ッ!」
チタツの生み出した魔物の包囲をくぐり抜けた戦友が、魔獣の爪を腹に受けたのを見てクトーは歯を軋らせた。
ミズガルズ王のそばに残ったルーミィとセンカ、そしてユグドリア以外は全員、レヴィを助けようと駆け出している。
呆然とするレヴィを前に、魔獣は狂った笑い声を上げた。
「ヒャァハハッハハハハハ!! ヒィハハハッハハッハァ!!! なァにが、仲間は死なせねェ、だァ!! ウジ虫どもがァ!!」
殺せず、かといって無理やり引き剥がすこともできない。
一番近いのは、子竜を受け止めたフヴェルと得物を失っているケイン。
ズメイとギドラはまだ魔物の包囲を突破しておらず、魔法を連発したミズチにも、すでに最大限ゴーレムを生み出しているジグにも決定打はない。
「逃げろ、レヴィ!!」
クトーは、最後の最後にやらかしてくれた魔王への怒りに頭を沸騰させながらも、レヴィに指示を飛ばした。
しかし、彼女は逃げなかった。
「よくもーーー!」
ーーーよせ!
クトーはその時、初めての焦燥感を覚えた。
ミズチを、そして今ジョカを失いかけている状況ともまた違う、なぜか胸が張り裂けそうな焦燥感。
体の動きまで違和感を覚えるほどの強い感情のままに、クトーは偃月刀を突き出した。
「〝貫ーーー」
「やめろクトー!! ムーガーンが死ぬぞ!!」
リュウの制止に我に還り、クトーはほんの刹那の間だけ自問する。
ーーー俺は、何を?
そしてそのわずかの間に、ジョカが動いた。
「全く……冴えないわねぇ……!」
人狼の鎧を纏う男は、ボコリ、と筋肉を膨張させた。
腹を貫くチタツの腕を押さえ込んで、引き抜こうとする動きを阻害する。
「邪魔するんじゃねェよ、くたばり損ないがァ!!!」
チタツが強引にジョカの体を持ち上げ、剣の血糊を払うように投げ飛ばした。
その勢いでズルリと腕が抜け、ゴロゴロと大柄な体が地面に転がる。
「ああああああああああッッ!!!」
レヴィが吼えながら、長弓を放った。
しかしそれらは全て、チタツの尾に弾かれる。
逆に魔族が大きく腕を振り上げ、血に濡れたかぎ爪でレヴィの体を引き裂こうとする動きを見せた時。
「ぷにぃーーーー!!!」
『なん、だ……?』
むーちゃんの体が、緑の鮮烈な輝きに包まれた。
同時にレヴィの体も輝きを放ち、凄まじい密度の風の気が渦を巻いて瞬時に竜巻と化す。
むーちゃんとレヴィを包んだ竜巻は、合体してさらに巨大なそれとなって吹き荒れた。
「ギィヒヒヒヒヒヒィ!?」
『ぐ、ぅ……!』
チタツの体が吹き飛ばされ、聖気を纏う風が魔獣の体表を引き裂いていく。
風圧に耐えきれずにむーちゃんから手を離したフヴェルも、風の奔流に逆らわずに上空へと滑るように流されていった。
あまりにも想定外の状況に、一瞬クトーの思考が止まる。
ーーー何が起こった。いや、今はそれよりも……!
レヴィがとりあえず危機を脱したらしいことを悟り、少し冷静になる。
「グギュぁ……ッ!」
吹き飛ぶチタツと、発生した巨大な竜巻を見つめていた自分に対して、冷や水を浴びせるような声がかかった。
「クトー。何をボサッとしているのです?」
見ると、チタツの向こう側に飛翔の魔法で回り込んでいたニブルが、目配せと共に小さなナイフで自分の腕に傷を入れた。
ボトボトと流れ落ちる血と膨れ上がる聖の気配に、クトーは彼が何をしようとしているのかを悟る。
「……リュウ」
「見えてるよ! お前もさっさとやれ!!」
クトーとリュウも、同時に大剣と偃月刀の切っ先で自分の腕を裂いた。
ーーー何が起こったのかは分からないが。
そう思いながらユグドリアを見ると、彼女もミズガルズの体を支えながら腕に傷を入れていた。
ーーーむーちゃんが、聖と風の竜気に目覚めたらしいな。
感じる気配からそう判断すると、竜巻が止んだ後にそこにいたのは、子竜ではなかった。
成体の風竜が、レヴィを背中に乗せている。
「ぷぅうにぃいいいいいい〜〜〜〜〜ッ!!」
相変わらず鳴き声だけは可愛らしく、瞳はつぶら。
しかし見惚れるほど流麗な緑の毛並みを持つ細く長い首と、天使の羽にも似た翼を二対備えたむーちゃんは、優美に尾を波立たせて背中のレヴィに頬で触れた。
「むー……ちゃん?」
「ぷにぃ♪」
疑問形で尋ねるレヴィに、ますます頬を摺り寄せる風竜を見ながら。
「「〝創造の女神、ティアム〟……!」」
クトーとニブルは、同時に呪文を口にした。
ユグドリアを頂点に、ニブル、むーちゃん、リュウ、クトーの5人で破邪の五芒星を描くイメージを脳内に想起する。
「「〝我らが願いに魂を結び、血の贖いと竜の聖気に於いてその神威を顕現せよ……!〟」」
女神に捧げるのは、二人分の魂の契約と四人分の血の代償。
それに加え、覚醒したバハムートの聖竜気すらも取り込んで……。
「「ーーー〝聖なる力もて、この場の邪悪を、打ち祓え……ッ!〟」」
チタツを中心に【多重最高位聖魔法】が発動した。
通常ではありえない範囲を、高密度で包み込んで吹き上げる光の柱。
おそらくは今代魔王が出現して以来、最大限の威力を持つ聖攻撃魔法だ。
しかし。
「ヒィッッハハハハハハハァアアアアアッッ!! 効かねェなァゴミどもがああああああ!!!」
多少の効果はあったものの、聖属性に耐性のあるムーガーンの肉体に邪魔されて、魔法の威力が完全にはチタツに届いていない。
「そうかよ。だが、効かねぇってんなら……」
「……効くように、届かせるだけだ」
リュウが胸をそらすように、牙を剥いた笑みを浮かべて大剣を肩に担ぎ上げ。
クトーは逆に、静かに刃先を地面に向けて偃月刀の柄に両手を添えた。
そして、合図すらなくとも全く同時に跳ねる。
リュウは頭上から、大上段に勇者の大剣を構えた姿勢で。
クトーは、地を這うように低い姿勢で、刺突の構えを取りながら。
影響が薄れていはしても、その場から動けないチタツは狂ったように嗤う。
「今更、オレを殺したところでェ!! ゲヒャ、貴様らの仲間の一人は、もう助からねェんだよオォッ!!」
「そんなもん、やってみるまで分かんねぇだろうが!!」
リュウが最初に、背後から深く、背骨に沿って刃先をチタツの肉体に食い込ませる。
「この体も殺すのかァ!? ギャァハハハッ!! テメェら甘ちゃんどもには殺せねェよなァ!?」
ーーーベラベラとよく回る口だ。
そう思いながら、クトーは偃月刀をしごき抜いてチタツの胸元を貫いた。
リュウとクトーの刃は、それぞれムーガーンの心臓前後でピタリと止まる。
「だよなァ!?」
勝ち誇ったように、チタツが言葉を口にするーーーが。
「ギャハッ、ギャハッ、ハハハハ、ハ? あ、ぎ……!?」
チタツが徐々に苦しみ始めて、恐慌をきたした。
「バカ、ナァ……!? ナゼェ……!!」
「理解していないらしいお前に、講義してやろう」
クトーは片手を偃月刀から離し、メガネのブリッジを押し上げてチタツの顔を睨み上げる。
「魂が宿る部位の間近まで前後から刃先を届かせたのは、その間に聖気を通わせるためだ」
「そう。ムーガーンの魂に寄生する、ゴミ虫のようなお前だけ滅べやァ!!」
世界最高峰の多重聖魔法の効果範囲内で、それを行えば。
たとえ魔王軍四将だったところで、魂の昇華に抗う術などない。
白目を剥き、極限まで顎を開いたチタツは。
「ァ……アギャ、が、gyaguxoaaAAAAAAーーーーッ!!」
最後は言葉にならない絶叫とともにムーガーンの肉体から引き離され、空へと消し飛ぶように、黒い影と化して溶け消えた。
発売日の3/15が迫って参りました!(๑╹ω╹๑ )書店さんによってはもう並んでいるかもしれませぬ
Webの試し読み分ですでに公開されてますが、書影と情報、そして口絵を一つ公開いたします!
まず口絵!
これいいでしょう!(๑╹ω╹๑ )花柄ドラゴンがバッチリですお!
ブンさん、さすがわかっていらっさります_:(´ཀ`」 ∠):そう、これなのよ……
レヴィもクトーもいい感じで(๑╹ω╹๑ )個人的に語彙力が崩壊しておりますお
そして今回!
載せる書影は!!
帯付きの分でして!!!
それがこちら!!
以前言っていたうにょうにょな情報の詳細ですが!!
こちらの帯を、ご覧ください!!!
ええ。
なんと。
『コ ミ カ ラ イ ズ 計 画 進 行 中 。』
初めて知った時、リアルで「……え?」という声が出ました、ええ。
マジっすか。
いいんすか。
こんなペーペーに、そんな幸運与えていいんすか。
逆にそんな風に不安になるほどに……。
嬉しい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ*・゜゜・*:.。..。.:*・'(*゜▽゜*)'・*:.。. .。.:*・゜゜・*
ありがとうございまぁあああああああああああす!!!
というわけで皆様!!
書籍版も、買ってください!!!!!!(ド直球)
漫画が、見たいです!!
誰よりも私が見たいです!!!
というわけで本、売れて欲しいんです!!!
(ドゥゲザァ)
レヴィたんの可愛いさを存分に見せる書き下ろしも書きました!!
本編は8割くらい改稿しました!!
よりドラマティックに、カッコよく!!
してますので!!
どうぞよしなに!!
以上、告知でした!!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
Web版第4章も後二日で終わりの予定です(๑╹ω╹๑ )今後とも続けて参りますので、どうぞよろしくお願いいたしますー♪




