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61 待ち伏せと戦闘と黒マント

遅くなりました リアルの方が忙しので中々更新出来ませんでした


「それじゃ、今から帰る準備をしてくれ」


領主の家から出ると、宿に泊まっている護衛と合流した。合流すると早速街から出ていくために荷物をまとめ始めた。街を出る時にトラブルに巻き込まれることも無かった。帰りは荷物が無いぶん馬車が軽くなり、早めに帰ることが出来る。そして半日ぐらい帰路の半分まで来た所で異変が起きた。


「ん?」


一真は体に若干の痺れを感じた。一真は馬車に乗りながら、自分の手足を動かして見る。やはり若干の痺れを感じた。疲れで体が痺れているのかと思ったが、だんだんと体の痺れが増していく。


(毒だ!)


一真がゼノンの叫びを聞くと、すぐに解毒薬を体内で作り出す。ゼノンは元々黄金竜ファフニールと呼ばれているドラゴン。彼は毒を武器として使っているドラゴンだ。つまり毒に関してはかなり詳しいのだ。一真の現代知識も加わって、更に凶悪な毒が作れるようになったのだが、毒を作れると同じように解毒薬も作れるのだ。


(あと五分で作れる。たぶん空中に漂っているのだろう、馬車を止めて毒の出処を探せ!)


「止まれ! 全員止まれ!」

「どうしたんだ、カズマ?」

「毒だ、空気中に毒が撒かれている」

「?! 馬車を止めろ!」


他の馬車にも伝わるまで時間が掛かり、結局止まるのに三分ほど掛かった。


「どうしたんです、カズマさん? 」

「毒が撒かれてる、体に痺れを感じないか、全員?」


全員が確かめるように、手足を動かす。全員体の動きが少しづつぎこちなかった。


「若干痺れている?」

「これはやばい、体の痺れがどんどん増えてきてる」


全員自分の体が痺れているようだった。中にはその場で膝をついて動けなくなる者までいた。


「一体どこに毒を?」

「馬車のどこかに仕掛けられているかもしれない」

「全員、馬車を調べろ!」


護衛のリーダーの指示で、動ける全員が馬車を調べ始める。


「見つけたぞ! 馬車の下だ! 車輪の軸に壺が結び付けられているぞ! 」


護衛の一人が毒の発生源を見つけたことで、全員が馬車の下を見ると、小さい壺が紐で馬車の車輪に結び付けられていた。


「これが原因か……」


一人がそれを車輪から外すと、思いっきり遠くに放り投げる。全員それに倣って放り投げる。壺が割れる音が次々と草原に響き渡る。


「くっそ、体の痺れが更に」


忌々しそうに護衛の一人が呟く。今までは馬車が走っていたことで、毒が後ろに流れてまともに吸っていなかったのだが、馬車を止めたことによって、毒をまともに吸うことになったのだ。


「あら、見つかってしまいましたか。でも毒は効いているようですね~」


黒く澱んだ声が背後から聞こえて、全員が後ろを振り向く。だけどそこには誰もいない。


「ふふふ、ここですよ」


背後で土が盛り上がる。そこから植物が芽を出すように人が出てくる。全身を黒いローブに覆っている。それに続くように次々と、同じ格好をした人が地面から出てくる。その人数三十人、丁度護衛の人数と同じくらいだ。


「お前らは………何者だ?」


バーリーの質問に可笑しそうに笑みを浮かべて先ほど口を開いた黒マントが喋る。


「これから死ぬからと言っても、話すわけ無いでしょう。取り敢えず死んでくださいね」


バーリーに向かって、黒マントがナイフを投げる。それは髪をかきあげるような、自然な行動でバーリーは反応が遅れてしまった。それが致命的だった。痺れた体でそのナイフを防ぐことは出来なかった。バーリーはナイフが急所に当たらないように、体を動かすことが精一杯だった。


キンッ!


ナイフがはじかれる音がする。


「おや、まだそんなに動ける元気がある人間がいるんですか。これは驚きましたね~。確かあなた透明マントを見破った……御仁ですか?」


「全員、ここから逃げろ。俺が時間稼ぎをする」

「だけどカズマ一人だと……」

「だからってまともに動けない人間がいても邪魔なだけだ。急いで馬車に乗れ」

「乗せるとでも~?」

「「「「「風」」」」」



黒マントがそう言うと、背後に居る黒マント達が一斉に魔法で攻撃する。呪文は『風』と言う一言だった。その魔法は風の魔法で統一されていた。風は見えないので、暗殺するときによく使われる。不意打ちには最高に良い魔法だ。


「水壁!」


一真はゼノンの魔力を借りて、水の壁を作り背後に届かないようにする。風の魔法は水の壁に阻まれ、背後にいる人間に当たることはなかった。風の攻撃をすべて防ぎ切ったと感じると、一真はすぐに魔法を解いた。空中に漂っていた水はすべて重力にしたがって、地面に音を立てて落下する。


「おやおや、ものすごい魔力と集中力ですね。賞賛に値しますね~」

「それに免じてここで引いてくれるのは無いか?」

「無いですね~。私達も仕事なんですよ」 


一真は会話をしている間に周りに隠れている人間がいないことを確認した。


「行け、ここは俺一人でやる」

「……死ぬなよ」


カンダーは体を引きずるようにして馬車に乗り込む、それで全員が馬車に乗り込んだことで走り出す。


「行かせませんよ!」

「「「「風」」」」」


後ろにいる黒マント達が風魔法で攻撃を仕掛けてくる。先程より威力と攻撃範囲が広くなっていることが、飛んでくる風圧で何となく一真には分かった。


「水壁」


だけどそれでも水壁で防ぎきれると考えて、先ほどと同じように水壁を出して攻撃を防ぐ。水壁で風の魔法は防いだが、地面からの攻撃は防げなかった。


「これで終わりです~」

「なっ!?」


いつの間にか地面に潜っていた黒マントが、水壁を地面に潜ってきたのだった。地面から突然出てきた黒マントに一真は反応出来なかった。黒マントの手にはテラテラと液体で刃が光るナイフが握られていた。毒が塗られていることは一目瞭然だった。


「フンッ!」

「グホッ!」


だがその攻撃は可愛らしい鼻息と澱んだ声共に防がれる。


「お前どうしている? 馬車に乗れとー」

「それは……ま、まともに動けない人だけ、わ、私はまともに動けます。ご、ご主人様」


途切れとぎれに言葉を紡いでここにいる理由を話す奴隷。両手には一真が渡したナイフが握られていた。黒マントの攻撃を防いだのは奴隷だった。奴隷の飛び蹴りが黒マントを蹴り飛ばしたのだった。

確かに奴隷の言う通り、他の毒に痺れていた人間とは違って、体の痺れは無いようだった。


「い、痛いですね~。命令無しで助けるとは思いませんでしたよ~。あなた随分好かれてますね~」


地面の穴を通って元の場所に戻った黒マントが蹴られた頬を撫でながら、忌々しそうに呟く。


「お前ら街の中でも俺たちの事をつけていたのか?」

「おや、どうしてそのような事を?」

「この身なりで、どうして俺の奴隷だと分かった? 注意深く会話を聞いてないと、そう言う推測をすることは無理だからだ」

「思った以上に頭の切れる御仁のようですね~、厄介です。さすが透明マントを見破っただけはありますね」

「お前ら一体何者だ?」


一真はバーリーがした同じ質問をする。答えてくれることはあまり期待はしてなかった。それと同時に水壁を


「とある暗殺集団の一つですよ」

「狙いはアルビーか……」

「話すと思いますか?」


後ろに控えている奴らが剣を抜く。さっきの魔法の打ち合いで、魔法で勝つことは難しいことがわかったのだろう。接近戦に切り変えたようだ。さっきの黒マントの攻撃も奴隷が助けなければ、確実に一真の命を奪った。接近戦の方が勝てると考えたのだった。


(ゼノン)

(解毒は完全に完了した。体の痺れは取れているはずだ)


ゼノンが作ってくれた解毒薬が全身に回り、先程まであった痺れが完全に消えた。一真は腰から剣を抜くと、一気に距離を詰めて黒マントを殺そうとした。黒マントは一真が飛び出すと同時に、その場から飛び上がり一真の攻撃をかわした。一真の攻撃は黒マントの後ろにいた黒マントの仲間を突き刺した。


「くそ!」


一真は今の攻撃で黒マントを殺せなかったことに悪態を付くと、剣に体が突き刺さったまま、剣を振り回した。剣に突き刺さっていた体が剣から抜けて、黒マントに体が衝突しそうになる。黒マントは飛んできた体を避ける。


「……とんでもない身体能力ですね~」

「だろ」


一真が笑みを浮かべて答える。だが実際は苦虫を噛み潰したような表情を心の中で浮かべていた。


「ですが足元が疎かです」


一真の下半身が地面に落ちる。いつの間にか足元に穴があり、一真はそのまま落ちそうになったが、肘が引っ掛て下まで落下することは無かった。


「?!」

「落とし穴です。意外に効果覿面なんですよね~」


一斉に黒マントの部下が襲いかかってくる。一真はすぐにそこから抜け出すことは出来なかった。咄嗟のことで一真はどうしたらいいのか分からなかった。


(一真!)

(頼む!)


ゼノンの呼び掛けに答えると、一真は体をゼノンに明け渡す。一真がゼノンより長けているのは、魔法の集中力、それ以外はゼノンの方が上だ。魔法での戦いなら一真の方が上だが、普通の戦闘ならゼノンの方が一枚も二枚も上手なのだ。ゼノンは最初に全身に鱗を巡らせて、ナイフ程度では傷がつかないようにする。ナイフについている毒が劇薬なら解毒薬を作る時間も無く死んでしまうからだ。


「フンッ!」


短い息と共に、穴から飛び出し、体をいつものリザードマンのようにする。着地刈りをしようと飛び掛ってきた黒マント部下の二人の顔面を鷲掴みした。爪が黒マンの部下二人の顔面にくい込む。黒マントの部下二人は完全に隙をついたと思っていたようで、すぐに抜け出すことが出来なかった。


バキバキバキバキ!


ゼノンが黒マントの部下二人の頭蓋骨を握りつぶした。なんの反応も示さなくなった肉塊を、ゼノンはそのまま地面に落す。


「次に我に殺されるのは誰だ?」


ゼノンは腕を振って手のひらについた血液を飛ばしながら、周りを睨みつける。黒マントは一真の豹変したことに恐怖を覚えていた。姿が変わったことでは無く、その雰囲気と瞳が変わったことにだ。確かに一真の魔力と身体能力は驚異ではあった。だが今までそんな敵とは何度も相対して、その命を奪ってきた。そんなことぐらいで、殺せないとは思ってはいなかった。だけど目の前にいるのは先ほどとは違う。人間が丸ごと変わったみたいだ。強者特有の香りを放ち、その眼光には強者の持つ独特の目をしていた。先ほどまで戦っていた人間とは同じに思えなかった。確かに一真も修羅場を潜ってきたが、その数は一回きりだ。黒マント達は百の修羅場を、ゼノンは万の修羅場を潜ってきている。圧倒的先頭経験の差が如実に現れる。


「このままではまずいですね~」


黒マントは唇を舐めながら呟く。黒マントの部下も先ほどと違う姿形に動揺している。その動揺は生死に関わることを黒マントは知っている。


「誰も来なければ、我から行く」


全員が何があっても対処出来るように身構えた。だがそれで終わりだった。一番ゼノンの近くにた黒マントの部下が死んだ。心臓があった場所に向こうまで見通せる穴が空いている。


「「「「「炎」」」」」


流石と言うべきか仲間が死んだことを気にせず、黒マントの部下が魔法を放つ。攻撃しなければ自分たちが死ぬのだ。死んだ仲間のことなど構っていられなかった。死んだ黒マントの部下ごとゼノンを焼くために炎の塊が襲いかかてくる。


「鋼鉄門!」


ゼノンの一言で地面から鋼鉄の門が出現して、炎を受け止める。


「回り込みなさい!」


黒マントは相手の姿が見えないのはまずいと思い、ゼノンの姿が見える位置に移動しようした。黒マントの指示で黒マントと部下二人が回り込もうとした時、鋼鉄門の門が開け放たれた。


「あ、開いた?!」


壁として出現していたので、門が開くとは思っていなかったため、回り込もうとした黒マントの部下から驚きの声が漏れる。


「門と言っているのだ、開かない道理は無いだろう」


空いた門からは、炎が放射されて、門の全面にいた物を黒焦げにしていく。つまり先ほど炎で攻撃していて、残っていた黒マントの部下の大半が黒焦げになった。炎が通った跡には、焼けた地面と区別がつかない黒い物体が残されていた。


「地獄の業火と言った所だ」


門が消えると、ゼノンの姿が黒マントの視界に入る。黒マントはゼノンに勝つことは無理だと判断した。こんな化物に勝てるわけがない。


「いいことを教えてあげましょうか?」

「何だ?」

「私が本当に馬車を見逃したと思いで?」

「どう言う意味だ」

「馬車が行った先で待ち伏せしています~。本当ならここで御仁を倒して合流するつもりだったんですがね~」


一真の反応を楽しむようにニヤニヤと笑みを浮かべる黒マントだが、ゼノンは特に反応を示さなかった。


「無視ですか、悲しいですねっ!」


黒マントは言い終わるど同時にナイフを投げる。


「これくらいナイフは」


ボンッ!


ゼノンがナイフを受け止めると爆発した。ナイフに爆発物が括りつけられていたのだ。その爆発でゼノンが傷つくことは無かったが。


(し、痛い)


ナイフには爆発と共にこの前ぶつけられた薬品がついていたのだ。その痛みに覚えがあったので、パニックになることは無かったが、それでも視界と嗅覚が潰されてしまった。


「くっそ」

「ご、ご主人様?!」


ゼノンは奴隷が駆け寄ってくるのが分かったが、敵がどうなっているのかは分からなかった。


「あいつらはどうした?!」


ゼノンは目を閉じたまま奴隷に訪ねた。いま魔法で水を出して顔を洗い流すのは危険だと考えて、直ぐには洗い流さなかった。


「じ、地面の中に消えました」

「逃げたと言うことか?」


ゼノンは目の痛みに耐えながら、奴隷に尋ねる。正直逃げたらここで顔を洗い流して、馬車に合流するのは難しくは無いだろう。


「見張っていてくれ、我は顔を洗い流す」


ゼノンは奴隷にそう告げると、水を出して顔を洗い流す。洗い流して最初にゼノンの目に入ったのは、奴隷の心配そうな顔だった。今にも泣き出しそうで、目から涙が溢れそうになっていた。


「心配するな、我は大丈夫だ」


ゼノンは大きな手で奴隷を安心させるように頭を撫でた。そこでゼノンが一真に体を返した。一真に体が戻ると同時に、体が元に戻っていく。


「あいつらと合流する。急ぐぞ」

「はぁ、はい」


一真はハイウルフマンになると、奴隷を背中に乗せて、馬車まで走った。


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