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60 町と領主と昼寝

街に到着するまで、特に襲撃は無かった。流石に全員が警戒している中を襲撃するのは無謀だと考えたのだろう。一真のこの護衛での役割は見張りになった。リーダーのバーリーからは『何か気になることがあったらすぐに報告すること』と釘を刺された。ハイウルフマンの鼻を使って、匂いを嗅いでいたが、あの侵入者は近くにいないことは確認出来た。それ以外にもこちらに近づいてくる怪しい人間はいなかった。


「それじゃあ、積荷を確信します」


一応積荷の確認がされるが結構おざなりだ。一応門番とは顔見知りのようで、アルビーは門番と世間話をしている。城壁は所々壊れていて、完璧には修復されていなかった。城壁が崩れている所には見張りの兵士が立って対応しているようだ。魔物との戦いの激しさが伝わってくる。街に攻め込まれるかなりギリギリの戦いをしていたのだろう。勇者が来なかったら、この街は終わりだったろう。


積荷の確認ができると一真達は街の中へと入れた。


「これからどうするんです?」

「通常なら一回ここで解散するんだが……」

「今回アルビーさんの命が狙われたから、街の中でも護衛をしてもらいたい」


カンダーの言葉をバーリーが引き継いで答えてくれる。


「こちらとしてもお金を払う前に死んでしまっては困るから、護衛はするが……ここには色んな人間が出入りしているようだ。気をつけなければならないな」


カンダーは街中を歩いている人間を見ながら呟く。この街以外かも色々な人間が今入り込んでいる。特に商人が多いだろう。確かに魔物に襲われはしたが、それでも活気ある街には違いない。けが人も多いから薬などが大量に売れるのである。それ以外にも金属や石細工それに使う道具などその他諸々売れるのである。しかも街の中は殆ど壊されていないので、財産類は残っているから買える人間は多い。


「じゃあ、このまま護衛を続けると言う事でお願いします」

「流石に全員を連れて行くのは、大所帯になりますから……。リーダーのバーリーとカンダー、エンダー、サンダーそれと索敵としてカズマさんの五人で護衛をお願いします」


アルビーが連れてきた護衛の大半は泊まる予定だった宿へとスミスが連れて行った。俺たち以外にいるのは、馬車を動かすために必要な最低限の人員だけだった。奴隷は馬車を動かす人員に入っている。


「でこれからどうするんです? 路上でこれだけの物資を売るんですか」

「いや、これを買い取ってくれるのはこの町の領主様なので、まずはそこに挨拶をしに行くんです」

「わいらの服装はこのままで大丈夫だよな、直接領主に会うことは無いだろう?」

「そうですね、無いと思いますから、服装はそのままで」


アルビーは既に旅の服から人に合うために豪華な服に着替えていた。いつの間に着替えたのだろうか。アルビーを先頭に俺達は領主がいる家まで馬車に乗って行くことになる。


「そう言えば、カズマさん魔法も使えたんですね」

「え?」

「あの襲撃の時に魔法を使っていたじゃないですか」


俺はそう言われて自分が放った野球ボール程の、火の玉を思い出す。確かに魔法を使えるが、あんなものは使ったうちに入らないだろう。初心者に毛が生えた程度の魔法だ。


「あの程度の魔法は『魔法を使った』内には入りませんよ」


俺はお世辞だと想い謙虚な姿勢で対応した。正直アンナ魔法自慢できたものでは無いからだ。


「あれだけの魔法を使って、『魔法を使った』内に入りませんか、ハハハ、それでは大半の魔法は使った内に入りませんな」


アルビーは俺の言葉を聞くと可笑しそうに笑う。正直どこに笑うような場所があったかは疑問だったが、一緒に愛想笑いを浮かべて笑っておいた。


「カズマお前、魔法を使ったのか?」


カンダーが話に首を突っ込んでくる。確かカンダー達の前では一度も魔法を使ったことは無かったから知らなくて当然だろう。


「はい、カズマさんすごい魔法を使っていましたよ。ドラゴンを型取った炎の塊を放ってましたからね」


俺はその発言を聞いて、愛想笑いが固まる。何それ、そんな魔法を俺は使った覚えは無いのだが。この疑問はすぐに答えが出た。


(我が使った魔法だな)

(あ、あの激竜火だっけ)


そう言えば確かにゼノンがそんな魔法を使っていた。ドラゴンの形をした炎の塊。迫力満点だが、それ以外は特に意味をなしていなかった。


ちょっと待てよ。傍から見ると俺が異様に謙虚な返答をしたことにならないか。あんな魔法が魔法の内に入らないとか、本当に大半の魔法が使ったことにならなくなる。そんなことを言われれば、謙遜のし過ぎと確かに笑ってしまうだろうな。


「そんな魔法を使ったのか」


エンダーも話を聞いていたようで、こちらの話に首を突っ込んでくる。正直こんなに興味津々にこられても説明に困るのだが、どうしたものか。


「すごかったですよ、あの魔法」


俺が答える前にアルビーが勝手に答えてしまう。俺は『そんなことないですよ~』と言いながら、愛想笑いを浮かべるしか無かった。正直にドラゴンの魔力を使った魔法ですと言うわけにもいかないから。


領主様の屋敷に付くと、門番とアルビーが話すとすぐに中に入れてもらえる。アルビーが来ることは前もって連絡はしておいたのだろう。この領地内で襲われることは無いと思うので、俺達は屋敷の出入り口で馬車と一緒に待機する。まあ、ここでも盗賊に襲われることは無いと思うので、馬車の中でゴロゴロしていた。


「領主との話ってどれくらい掛かるんだ?」

「そうだな……小一時間かかってもおかしくはないな?」

「そんなに掛かるなら、少し寝る。昨日のあれで殆ど寝てない」


俺は大きく欠伸をすると返事を聞く前に、馬車の中に寝転がる。既に半分くらい意識が眠りの世界に入っていて、意識がはっきりしていなかったのだ。


「ああ、分かった」


昨日のことを知っているカンダー達はあっさりと俺の昼寝を了承してくれる。まあ、ここで寝なかったら、絶対どこかで居眠りをするだろう。そんな状態だから俺はあっさりと眠りの世界に落ちた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ん~!」


起き上がるとベッドの上だった。なんでここで寝てるんだろ、俺。寝たのは馬車のはずだったのに。しかも部屋は豪華な作りになっているようだった。


「お目覚めですか?」


ベッドの脇にメイドが立っていた。短い金色の髪に綺麗な顔が目に入る。


「俺はどうしてここに?」

「旦那様のご好意で、こんばんはお客様をここで一晩泊めることになりました。お客様が寝ていたので、態々起こすのは悪いと、そのまま寝室まで運びました」

「そうか……今は何時くらいだ?」

「既に日は落ちて、夕食の時間を過ぎたところです」

「他の人間は既に食事を終えたのか」

「はい」

「そうか……」

「お客様!」


俺はベッドから降りようとすると、メイドが慌てて呼び止めた。


「ん?」

「足元に」


メイドに言われて足元に視線を向けると奴隷が寝ていた。このまま降りていたら奴隷のことを踏んでいたな。


「こいつこんな所で寝ているのか?」


俺は呆れ顔で呟くと、奴隷を踏まないようにベッドから降りる。降りた後、奴隷を抱き上げるとベッドに寝かせる。前回より体が重くなっていた。ちゃんと食事をとったからだろう。そのせいか女らしい体つきますますなっていた。


「お客様、お食事どういたします?」

「食事が用意されているのか?」


既に明日の朝まで食べられないつもりいたので、俺は聞き返した。用意されているんだったら、食べておきたかった。


「はい、用意させていただいいます。こちらに持ってきますか?」

「そうだな……いや、食堂か別の場所で食事をさせてくれ」


奴隷が寝ているんだ、態々起こすようなことはしないほうが良いだろう。俺はそう考えてメイドに案内されて、食堂に連れて行ってもらった。食堂は物凄く広くて、何十人もが一度に食事が出来るようなテーブルが置いてある。そこに一人座って食べる食事は、落ち着かなかった。さっさと食事を終えると寝室に戻ることにした。



「お、起きたのか?」


部屋に帰る途中にカンダーに声をかけられる。


「酒飲んでいるのか?」

「ああ、お前も飲むか?」


カンダーから強烈なアルコールの匂いがする。顔が真っ赤になっていて、足取りもフラフラしていた。


「やめておく。飲み過ぎには気をつけてくれ」

「ああ、翌日にはこの街を出るから、そろそろ飲むのをやめるさ」


カンダーはそう言ったが、この調子ならあと一時間ぐらいは飲んでいるだろう。俺はカンダーの言葉を背後に寝室に眠り帰った。


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