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59 襲撃と透明な暗殺者と旅の再開

明けましておめでとうございます((。´・ω・)。´_ _))ペコリ 

「おいで」


食べ終わった奴隷が一真のいるテントに入ってきた。一真がローブを広げて言うと、奴隷は一瞬こちら側に近づくが、何かに気づいたように、テントを早足で出て行った。


(何だ?)

(わからん)


ゼノンと一真は顔を見合わせお互いに顔を傾げていた。だがすぐに奴隷は戻ってきて、一真のローブの中に入る。ローブに入る前に、一真が渡したナイフと今回のために買い与えた革の鎧を脱いで、身軽な格好になった。奴隷はゆっくりと一真のローブに入る。ローブの下が上半身裸だど奴隷は一瞬びっくりして体を離すが、最終的に一真に体をひっつける。一真もそれを良しとした。一真は奴隷の体が若干濡れていることから、先ほど出て行ったのが体を洗いに出て行ったことに気がついた。汚れたまま寝るのが嫌だったのだろう。一真はそう結論づけると、このまま寝ないように気をつけた。奴隷が一真に引っ付く。奴隷の人肌の温かみが心地よくて、そのまま寝ないように気合を入れる。


(交代するぞ)


そんな気合を無駄にするようにゼノンが横槍を入れる。確かに侵入者を探知するにはゼノンの方が感覚が鋭くていいのだろうけど。ゼノンが交代すると一真は自分から眠気が遠ざかっていくことが分かる。やはり精神だけだと眠気なのが遠ざかるが、ゼノンの感覚が俺に繋がる。空気の流れ、人の呼吸音が大きく聞こえる。鼻や目をドラゴンに変えたことによって、更に感覚が鋭くなることが分かる。テントに寝ている人間が寝息を立てるような時間になった。護衛もうつらうつらしているのが、伝わってくる。そこで一真が自分達のテントに近づいてくる足音が分かる。一真が分かると言うことは、ゼノンにも分かると言うことだ。ゼノンが奴隷を起こさないようにゆっくりと体を起こして、テントの外に顔を出す。テントからゼノンが顔を出すと冷たい風が顔を通り抜ける。その風に混ざる侵入者の匂いを嗅ぐ。


(どこにいるか分かるか?)

(まだ分からない、どちらの方向にいるかくらいだ)


ゼノンが風の匂いを嗅ぎながら、侵入者を探そうと鼻をヒクつかせる。ゼノンの鼻には確かに侵入者の匂いを捉えていたが、風が強すぎて、正確な場所を確認するのに時間が掛かった。


(くっそ、分からない)

(なあ、ゼノンテントから出て近づけば分かるんじゃないのか?)

(それもそうだな)


ゼノンはかテントから体を出して、足音を忍ばせて、侵入者の所まで匂いを辿って近づいていく。


(おい、この先って)

(まずいな)


ゼノンもその先にいる人物が分かると、忍び足をやめて大きな音を立てて走り始める。


「お、おい、どうしたんだ?」


驚いたようで見張りが声をゼノンに声を掛けるが無視して、そのまま突っ走る。この先はこの一番戦闘、つまり行商人がいるはずだ。たぶんそいつを狙っているのだろう。一真がそこまで考えると、ゼノンが更に加速する。通り道にテントと飛び越える。飛び越えた先にもテントが見えるが、ゼノンの驚異的な反射神経で、無理やり避ける。


(すごいな、ゼノン)

(賞賛は後で良い)


そういった時には既に目的の馬車が目に入っていた。何もいないはずの地面には草が踏みつけられ、折れており、ゆっくりとテントが開けられていくのが見えた。


(間に合わないぞ!)

(魔法がある)


一真は無理やりゼノンがから体を奪うと右手を突き出して、呪文を唱えた。


「ファイヤーボール!」


呪文を唱えると野球ボール程度の大きさの火球が放たれる。一真だけ魔力で放ったため、魔法の威力が弱くて相手を殺すほどの威力は無かったが、テントの中にいる人間に当たった場合を考えて一真はゼノンの魔力を使わなかったのだ。


侵入者は一真の呪文を唱えた声を聞いて振り返ったようで、攻撃されたことに気づくと、テントから離れる。火球がテントに当たると穴を開けた。侵入者がテントから離れると一真はゼノンに体を渡した。


「な、何だ?」

「邪魔だ、隠れていろ!」


この騒ぎと火球でテントの中から商人が顔を出した商人に向かってゼノンが怒鳴る。ゼノンの言葉ですぐにテントの中に姿を隠す。ゼノンは一瞬侵入者から気がそれたため、侵入者を見失ってしまった。


(逃げたのか?)

(いや、匂いがする。まだ近くにいるはずだ)


ゼノンが地面に生えている草を注意深く眺める。折れている草がないか探した。だけど侵入者を見つけたのは音だった。草が擦れる音がゼノンに侵入者の存在を教えてくれた。侵入者はこのままでは人が集まって、逃亡が困難になると考えての行動だった。


激竜火げきりゅうか!」


ドラゴンの形をした炎の塊が侵入者の目の前に突然現れる。ドラゴンの形にした意味は特に無かったが、だが突然現れたドラゴンの形に侵入者は一瞬動きが止まってしまう。すぐに避けようと足を動かしたが既に遅く、激竜火が侵入者を掠めた。何かに炎が燃え移り、燃え出す。ゼノンの目に侵入者の姿が入る。全身を黒尽くめで、いかにも暗殺者の姿をしていた。侵入者は自分の姿が見られていることに気が付くと、地面に向かって何かを投げつけた。侵入者が投げつけたものから煙が飛び出して、辺りが煙で見えなくなる。


(煙玉か?!)

(大丈夫だ)


ゼノンはそう言うと鼻と耳を使い侵入者を捉えようとしたが、その時ゼノンの顔に何かが投げつけられる。


「ガアア!」


ゼノンが目と鼻に走る激痛で思わず声が出る。侵入者は見えない自分を見つけたゼノンには、煙玉だけでは姿を隠しきれないと考えての攻撃だった。ゼノンは必死に視界を回復しようとするが、出来なかった。


(ゼノン、交代だ!)



一真はゼノンから体を戻すと、鼻と目に激痛が襲ってきた。心構えをしていたから、冷静に魔法で水を出して顔についている薬品を洗い流す。洗い流した時は既に侵入者はいなくなっていた。


「あ~滅茶苦茶痛かった」


一真は何度が瞬きして目の調子を確かめる。この時殆どの人間がこの騒ぎで目を覚まして集まってきていた。


「どうした、何があったんだ?」


全員を代表するようにバーリーが聞いてくる。その顔は険しく、すぐに戦闘になっても戦えるように、腰から剣が抜かれていた。


「侵入者だ。よく分からないけど、どうもアルビーさんを狙っていたみたいだ」

「今見張りをしている人間は誰だ?」


一真の言葉で険しい顔が更に険しくなって、見張りをしている人間を尋ねる。


「じ、自分です」


おずおずと手を上げる護衛の一人だ。その顔には怯えと焦りの表情が浮かんでいた。自分のミスで侵入を許してしまったのかと危惧しているのだった。


「しっかり見張りはしていたのか? まさか居眠りなんて……」

「しっかり起きてました! そこにいる坊主に聞いてくれれば分かるはずです」


早口に言って、一真のことを指差す。確かにゼノンが通った時にしっかりと起きていた。


「ならなぜ侵入者など……」

「理由はこれだろう」


護衛部隊の副リーダーをしているスミスが焦げた何かを持ち上げて、バーリーに見せる。それはゼノンの攻撃によって焦げたものだった。だが不思議なことに焦げている部分が浮いていて、スミスの体が半分無くなっているのだった。


「これは?」

「おそらく透明マントだ」


スミスがマントを裏返すと、しっかりとマントを見ることが出来た。透明マントの裏側は透明では無いようだ。スミスからマントを受け取ると、マントを付ける。マントをつけた部分が見えなくなり、バーリーは生首が浮いているような状態で見える。


「これで姿を隠していたのか………カズマ殿どうして気がついたのだ?」

「え~っと草ですかね」


一真は咄嗟に答えたのがこの答えだった。流石に匂いとかだと無理があるからだ。実際踏まれている草で見つけたのも嘘では無かった。


「草とは?」

「草が踏まれると折れるじゃないですか、それで見つけました」


一真は実際に草を踏んで、実演してみせる。バーリーと周りは感心したように唸る。


「坊主だとしてもよく気がついたな」

「たまたまですよ」


いつの間にかいたカンダーに声をかけられる。カンダーも実際に踏んで確かめているようだが、首を捻る。侵入者がいると知って、注意深く見ていれば気がつかないレベルでは無いが、知らなければ気にも止めないからだ。


「カンダーさんが才能があると言ったのは間違って無いですね………どうします? アルビーさん」

「これからも襲撃してくる可能性があるなら、夜の見張りを増やして対応するのが一番だ。だけど他にも大勢で襲われた場合のことを一旦、護衛の人数を増やすために街に戻る必要があるな」

「そうですね、大勢の敵が透明マントで姿を隠して襲ってこられたら、対応が難しい」


いつの間にかテントから出ているアルビーがバーリーと話していた。


「その可能性は低いと思いますよ」


一真のその言葉にまた一真に視線が集まる。


「どうしてそう思うんだい?」

「いえ、街を出発してからずっと付けられていたんですけど」

「……街を出てからずっと付けられていたのか」


スミスが驚いたように呟く。彼にしては珍しく動揺した声が漏れた。普段からあまり感情が現れないタイプだったので、これでもかなり驚いているのだ。


「どうして他の人間に知らせなかったんだ?」

「確証が持てなかったもので」


一真の言葉に納得出来ていなかったが、バーリーは先を促した。これから襲撃があるか無いかの方が重要だからである。


「つけてきたのは一人です。大勢で襲われることは無いと思います。それに今回襲撃に失敗して自分の存在がばれています。透明マントを失った上に、また襲撃が無いかと警戒されている状態で襲撃してくるのは自殺行為です。それに姿を隠していても、気づかれたことで、かなり慎重になるのが普通かと」

「だから警戒はしなくても良いと?」

「いえ、相手が死ぬ気で突っ込んでくることもあるかもしれないので、警戒は必要ですね。ですが大勢で襲いかかってくることは無いと思いますよ」


バーリーは悩んだ。一真の言っていることは一理どころか十理近くあるだろう。だが街からつけてきた奴らだけでなく、他のところで待ち伏せをされていたらこの前提は崩れる。なにせ相手は透明マントが使えるのだ。最悪この草原でも隠れることが出来るだろう。


「待ち伏せされていたらどうする、いやそれはないか……それならそこで襲撃される」


バーリーは言葉の言葉を即座に打ち消した。。自分が襲撃するなら相手に存在を知られてない状態で一気に決める。態々単独で襲って自分の存在がばれてしまえば、相手が警戒して、襲撃するのが難しくなるからだ。

透明マントが用意出来なくても、山賊に扮して、そのどさくさに紛れて透明マントを来ている人間が殺しにくればいいのだから。


「アルビーさんどうします」


バーリーは自分で判断するのをやめて雇い主に聞いた。最終的には雇い主次第だからだ。


「この護衛で対応出来ない事態が起きるとは思わない、このまま街に向かうぞ」


旅は再開されたのだった。







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