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非日常LIFE 夜御飯

「わっ・・わかった 」


 僕はゴクリとツバを飲み込んだ。いざ人に食べさせるとなるとやは

り緊張するものだ。千春は僕の方を向いて正座しながら小さな口をあ

け待っている。そして、なぜかなぜか目もつぶっている。正直、その

光景はとても可愛かった。さっきより更に緊張が増してきた。幽霊と

暮らすことがこんなにドキドキするとは思わなかった。案外こういう

生活も悪くないのかもしれない。なんて事を思っていると、しびれ

をきらした千春が


「四季殿、焦≪じ≫らさないで下さい」


「あっ・・あぁ・・すまんすまん」


 僕はあわててスプーンでオムライスをすくい千春の口に運ぶ。そし

て千春はしばらく口をモグモグさせて味わっている。すると、さっき

まで目をつむっていた千春が急に目を開き、それと同時に「うっ・う

っ・うまぁぁぁぁぁぁぁ~い」と雄叫びをあげた。


「おっ・・おいっ!?、急に大きい声を出すなよ」


「すっ・・すいません、あまりのおいしさについ・・・」


「そんな雄叫≪おたけ≫びを上げるほどおいしかったのか?」


「はい!、四季殿のお母様は天才料理人か何かなんですか?」


「なわけないだろ。大袈裟なんだよ。とにかくこれからはちょっとし

 たことで雄叫びを上げるのはやめてくれ」


「お言葉を返すようですが四季殿、私は雄叫びなど上げていませんよ」


 僕は彼女が言っている意味がよく理解できなかった。あんな大きな

声を出しながらも彼女は雄叫びを上げていないと言っている。なら彼

女の中での雄叫びとはどの様なものなのだろうか?


「嘘つけぇ、おもいっきり出してたじゃねえかよ」


「いえ、私が上げたのは雌叫≪めたけ≫びです」


「千春さん、雌叫びって何なんですか?そんな言葉、存在しないと思

 うんですが」


「はい、もちろんそんな言葉は存在しませんよ。たった今、私が作り

 ましたから」


「だろうな」


「でもよく考えてみて下さい四季様。雄叫びと言う字は”雄”が”叫

 ぶ”と書いて雄叫びです。でも私は雄でも男でもなく雌です、女な

 んです。だから”雌”が”叫ぶ”と書いて雌叫び。どうですかちゃ

 んと筋は通ってるでしょ?」


「確かに筋は通ってるけどそんなのただの屁理屈だよ」


「それを言われてしまえばもう私に返す言葉はありません」


この様なやりとりがここから何回かあってそんなやりとりをしている

うちに時間はあっという間に過ぎていった。そして時刻は午前1時、

僕を除いて家族全員が寝た事を確認して千春にお風呂に入る許可を

だした。千春は僕の部屋を出て行ってから15分ほどたって部屋に帰

ってきた。お風呂の栓は抜かれていてシャワーしか使えなかったよう

で少し落ち込んでいる様だった。シャワーを出してやったのはもちろん

この僕だ。千春にアイマスクの装着を義務ずけられ風呂場まで誘導され

蛇口をひねる時だけは、はずす許可がでた。シャワーを止めるときは千

春が部屋に戻ってきてからわざわざ僕が風呂場まで行って止めた。そし

てこの日は千春に僕のベッドを貸してやり、僕は床に敷いてある絨毯

≪じゅうたん≫の上に寝ることにした。












 そして、僕の長い長い13日の金曜日はやっと終わりを迎えるのだ

った。



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