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アタシが考えた最高の配列 〜推しのフィギュアが動き出したんですが、解釈違いなのでやめてください〜  作者: 藤紫


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1話目『最高の配列』

ちょっとホラー?チックなお話。

最期までお付き合いの程、宜しくお願いします。

「ただいま…」


帰ってくる返事なんてない、一人暮らしのアパートに、今日もなんとかたどり着いた。


(今日は終電に間に合った。シャワーは明日の朝でいいや。ていうか明日、アタシ起きられるかな…もう起きられなくてもいいかな…)


そんなことを思いながら机の上の”癒し”に目をやる。そこにはいつもと変わらない笑顔で推し達がこちらを見つめてくれていた。机の上にある棚には推しのフィギュアがいる。シリーズに登場する主要キャラは揃っている。

アタシが考えた最高の配列でキレイに並んでいる。


「よし。推しのパワーでHPは1に回復した。とりあえずカロリーチャージだ。」


推しからもらったパワーでなんとか動くことができるようになったアタシは、冷蔵庫からカニカマと発泡酒を取り出し、口の中に入れていく。入れたそばから口からはグチがこぼれだす。


「部長のハゲ野郎。自分のミスをこっちに押し付けやがって。アタシが何も言わないのをいいことに…」


「それと、ハゲ部長がどっか行った後に


『アレはないよ、部長のせいだよな』


って言ってきた佐藤。いい人ぶってキラキラした笑顔で話しかけて来やがって。こちとらカースト最底辺の女だぞ。砂糖みたいに甘い笑顔のイケメンに話しかけられたら、石化するっつーの。」


今日もグチが止まらない。フィギュアたちはいつも通り黙って聞いてくれていた。




翌朝、スマホのアラームが枕の下から喚いている。ノロノロとベッドから崩れ落ちユニットバスへ。さながら早すぎた巨◯兵のようにドロドロと移動していく。温まる前のシャワーの水はアタシを人間にしてくれる。”早く人間になりたい”と願った闇の住人は最終回で帽子とマントと靴を残していったが、アタシは昨日の記憶を置き去りにして排水口に流していく。


制服という武装を完了し、棚の推し達に心臓を捧げるように、別れを告げる。


「逝ってきます…」


帰ってくる返事なんてない。ドアを閉めた後、部屋の何処かに違和感を感じたが、ドアを開けて確認するのにかかる時間のせいで、遅刻を気にして走り出し、曲がり角で運命的なぶつかりイベントが発生するのもイヤなので、そのまま鍵をかけ、駅へ向かった。


小学校の頃、みんな楽しそうにアニメやマンガの話をしていた。


「ねえねえ、あのアニメの人気投票の結果知ってる?」

「えっ、また変なキャラが選ばれたの?」

「オレ、知ってる。1位がなんと『飛行機』だろ」

「え〜、なに、それ、ウケる〜」


中学生になると


「オレ、あそこで『私が来た!』ってさぁ、ズルいと思う訳よ」

「また、男子がマンガの話、してる。」

「でも、あのマンガおもしろいよ。うちの弟も持ってて、読んだんだけど、あのカミナリの子と耳の子のカップリングが…」


高校では


「エ〜ッ、あんたコクられたの!で、どうした?」

「剣道部の部長、かっこいいよね〜」

「ねえ、帰りカラオケ行かない。エ〜ッ、アニソンなんて歌わないよ。」


周りの人は、二次元への興味はそれこそ薄っぺらくなり、三次元への期待が膨らんでいった。アタシは取り残されたように思いながらも


「そうだよね。」


と肯定するだけのボットになった。


そのまま、卒業、就職して自由になるお金が手にはいると、部屋の中に楽園を作った。外界でコインを投げて行動を決めるキャラのように感情を殺して過ごすために。


そんなことを黒背景のコマ割りの中で考えている内に、会社へ着いてしまった。




今日は定時上がり。奇跡の定時上がり。アタシがいることに気が付かないかのように業務は流れていった。何か言われる前に、


(に〜げるんだよ〜)


と心の中で叫びながら、そそくさとタイムカードを押す。




「ただいま…」


静かな時を過ごしていた推し達に挨拶すると、今朝の違和感がなんだったのかに気づいた。


「動いてる…」


主人公とヒロインの間が5mmほど広くなっている。


勘違い……?


勘違いなんかじゃない!。


この距離ではヒロインの想いと鈍感な主人公の気持ちが表せてない!

この棚の配置は、何百回と眺めてきた。間違えるはずがない。


ダメ、ゼッタイにダメ!


アタシは震えそうになる指先を、暴走しかけた九尾の妖狐の力に抗うヒーローのように押さえ込み、ヒロインの位置を正しい配置へと戻した。






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