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【完結】愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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74/110

74 名案 オリバー視点

私は自室までの道をトボトボ歩いていた。



ローザが私を捨てて男と出て行った。

その事実だけが、永遠に頭から離れなかった。

まだ夢ではないのかと疑っている自分もいる。

それほどまでに、ローザがそのような行動に出たということが信じられなかった。



(ローザ……)



そういえば、最後に彼女の笑顔を見たのはいつだっただろうか。

もう随分と前のような気がする。

昔はいつだって私に笑いかけてくれたというのに。



「……」



放心状態のまま、私は部屋へと入った。

一人でこの部屋で過ごすのは慣れているはずなのに、何故だか今日はとても寂しく感じられた。



とりあえず自室へ来たのは良いが、自分がこれからどうすればいいのかが分からなかった。

執事はこれからのことを考えてくれと言っていた。



(……これからのことって何だ?)



ローザがいなくなったことで空いた公爵夫人の席?

私の大嫌いな貴族令嬢と再婚でもしろというのか。



(どうすればいいんだ……)



少し前までは幸せな未来を確信していたというのに、こうもあっさりと崩壊してしまうとは。

本当に人生何があるか分からない。



そのとき私は、上着のポケットの中に入っているある物に気が付いた。



「……」



そう、私がローザに贈るつもりで用意した指輪だった。

彼女が男と駆け落ちした今、何の意味も無いものとなってしまったが。



「……」



その指輪を見ると、彼女に対する怒りが沸々とこみ上げてくる。

ローザは十年以上も共にいた私をあっさり捨て、他の男を選んだのだ。

彼女の私に対する愛はその程度のものだったということだ。



「こんなもの……!」



私は指輪の入った箱を思い切り床に投げつけた。

その拍子に、箱が開き指輪が外に投げ出された。

もういらないものだったから気にもならなかった。



今、私が抱いていたのはローザと執事の男に対する激しい怒りのみ。



(アイツら……!このまま上手く逃げられると思うなよ……!)



私はすぐに公爵家の騎士団を動かしてローザと男の捕縛を命じた。

平民風情が、公爵家の当主である私を裏切ったのだ。

何としてでも報いを受けてもらわねばならない。



(もし捕まえたらどうしてやろう……ああ、ローザの目の前であの男を処刑するのも良いな……)



ヤツらの最期の姿を想像すると少しは気持ちが落ち着くかと思ったが、私の怒りはそう簡単に収まることは無かった。

こんなにもイライラしたのは久しぶりだ。



イラついた気持ちを抑えるため、私は部屋の外に出た。

ローザが男と駆け落ちしたことで公爵邸は騒がしくなっていた。

既に仕事を終えた使用人たちも部屋から出て来てあたふたしている。



(騒がしいな……)



その騒音が、私をますますイラつかせた。

そんなときだった――



「お母さんはどこにいるの?」



背後から聞き慣れた子供の声が聞こえてきて思わず足を止めた。



「……」



ゆっくりと後ろを振り返ると、リオが邸宅の中でローザを探し回っていた。

その顔は今にも泣きそうだ。



(リオ……)



そこで私はようやく大切なことに気が付いた。

そうだ、今はアイツらのことなどどうでもいい。

愛する息子のことを一番に考えなければならなかった。



(リオに……どう説明すればいいんだ……)



母親が他の男と家を出て行ったなど、とてもじゃないが言えなかった。

リオはローザにかなり懐いていたし、二度と帰ってこないことを知ると絶望するだろう。



(どうすれば……どうすれば……)



私は必死で考えを巡らせた。

どうすればリオのためになるか。



「……」



そして私は、ある一つの考えに辿り着いた。



(そうだ!元妻にリオの母親になってもらえばいいじゃないか!)



エミリアは私のことを深く愛していたし、ローザのように性根も醜くないから血が繋がってなくともきっと良い母親になってくれるはずだ。

元々優秀な上に離婚してから見た目も良くなったし、私の隣を歩くに相応しい女だ。



(今のあの女となら、ちゃんとした夫婦の生活をしてやってもいいだろう)



私は口元にニヤリと笑みを浮かべた。

そして次の日から早速それを実行に移すことを決めた――



読んでくださってありがとうございます!


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