73 真実 オリバー視点
(これは一体……どういうことだ……!?)
手紙にはローザに対する愛の言葉がいくつも綴られていた。
読んでいるうちに手紙を持っている手が小刻みに震え始めた。
理解が追い付かない。
これは一体何なのか。
今すぐ彼女に問い詰めたいが、どこにいるかが分からない。
(ローザ……)
答えは既に出ているはずなのに、信じたくなくて必死で頭の中からかき消した。
私はしばらくその場から動くことが出来なくなっていた。
「旦那様……」
「……」
開いたままの扉から姿を現わしたのは、数人の使用人だった。
彼らはオドオドした表情で私を見るだけで、部屋の主人の居ないこの状況をそれほど驚いていないようだった。
まるでこうなることをどこかで予想していたかのように。
(……知っていたのか)
結論は既に出ていたが、念のため使用人に尋ねた。
「……これは一体どういうことだ」
「だ、旦那様……」
遠慮しているのか彼らはなかなか話そうとしない。
「話せ、包み隠さず全て」
「……」
強めの声に観念したのか、そのうちの一人がようやく口を開いた。
「ローザ様は……公爵邸の執事と不貞関係にありました……」
「……」
予想してたことだったのに、いざ直接確認を受けるとショックを隠し切れなかった。
十年以上も連れ添った最愛の女に裏切られたのだ。
「知っていたなら何故私に言わなかったんだ」
「それは……ローザ様と執事の逢瀬を目撃した使用人たちが次々と解雇されて……」
「……」
嫌がらせをされたという話は嘘だったのか。
自分に都合が悪くなったから適当な理由を付けて追い出したのだろう。
勉強をしていたというのもウソ。
その時間はきっと執事との逢瀬を重ねていたに違いない。
そしてそんなウソに騙された自分も馬鹿だ。
「――やはりこうなりましたか」
「……お前」
そこで部屋に入って来たのは父の側近でもあった老執事だった。
この男もまた、こうなることを想定していたかのようだった。
「何故……ローザは……」
「人は辛いときに優しくされると、どれだけ愛する家族がいようとその相手に恋に落ちてしまうものなのです」
「……」
私は拳をギュッと握りしめた。
「旦那様、いつまでも落ち込んでいてはいけません。これからのことをお考えになってください」
「……」
彼はそれだけ言うと、一礼して部屋を出て行った。
他の使用人たちもそれに倣い、次々と部屋を出て行く。
残されたのはとうとう私だけになった。
放心状態になっていた私は、そこから一歩も動けずにいた。
この状況をまだ信じれない自分がいたのだ。
夢だと思いたかった。
だが、現実はどこまでも残酷で。
彼女のいないこの部屋を見ると一気に現実に引き戻された。
(……私も戻ろう)
私は部屋を出てそのまま自室へと戻った。
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