63 特別な感情
「ルーク、よかったらウチでお昼食べない?」
「……お前、それ本気で言ってるのか?」
「私の友達だっていえば別に平気だと思うけれど……」
二人きりの部屋で、私はルークにそう声をかけた。
(レイラだって昔は時々伯爵邸に泊まったり一緒にご飯食べたりしてたし……)
幼い頃からの親友であるレイラはよく伯爵邸へ遊びに来ていた。
お兄様とも仲が良く、両親もレイラのことを本当に気に入っていた。
(ルークならお兄様もお義姉様も気に入ると思うんだけどな……)
挨拶だけでもどうかと提案したが、彼は無言で首を横に振った。
「これ以上迷惑をかけるわけにはいかないからな。俺はもう帰るよ」
「迷惑だなんてそんな……みんなにも紹介したかったんだけどな……」
何だか寂しいが、彼の立場を考えると仕方の無いことなのかもしれない。
ルークは必要以上に他人と関わりたいようには見えなかったから。
これ以上言っても迷惑になるだけだろう。
私はローブを羽織って帰りの準備をする彼を笑顔で送り出そうとした。
そのときだった――
突然、部屋の扉がノックされた。
「――お嬢様、失礼します。昼食のお時間でございま……………え」
ノックをしてすぐに扉が開き、レミアが扉から顔を覗かせた。
彼女はルークを見て固まっている。
「あ」
「あ」
私たちは二人して素っ頓狂な声を上げた。
(これは……まずいことになるかもしれないわね……)
私はこれから先の展開を想像して頭を抱えた。
***
「エミリア様、これは一体どういうことですか?」
「どういうことって……彼は私の友人よ。ルークっていうの。なかなかにイケメンでしょう!?」
「今はそういうことを言っているのではありません!」
女性なら誰もが見惚れてしまいそうなルークの容姿を盾にして追及から逃れようとしたが、レミアはそう簡単には騙されてくれなかった。
「あの方、とっても怪しいです。今だってほら!フードを深くかぶって顔を見せたがらないし……」
「あー、恥ずかしがり屋なのよ、彼」
「はぁ、恥ずかしがり屋、ですか?」
レミアはルークを訝し気に見つめた。
(庇いたいのはやまやまだけれど……私も彼の正体をそれほどよく知らないのよね)
ルークは自身と疑わしそうにじっと見つめているレミアから目を逸らしている。
「と、とりあえず!ルーク、この後すぐに行かなければならないところがあるんじゃなかったかしら?」
「……あぁ」
「じゃあひとまず解散しましょう!解散!」
「……」
一旦ルークを帰した私は、部屋にいるレミアと向き合った。
何とかして誤魔化さなければならなかった。
「お嬢様、あの方はもしかしてお嬢様の恋人ではないのですか?」
「こ、恋人!?」
とんでもない疑いをかけられ、慌てて否定する。
「無い無い!絶対無いから!」
「……本当ですか?」
「ほんとだってば!」
ルークが恋人だなんてそんなのありえない。
大体彼は私に特別な感情など抱いていないはずだ。
「ですが、あの方のお嬢様を見る目……」
「私を見る目がどうかしたの?」
「……あれはただの友達を見ている目ではなかったように思えますが」
「え?」
レミアがボソッと何かを呟いた。
「いえ、何でもありません」
よく聞き取れなかったため聞き返したが、彼女がそれ以上何かを言うことはなかった。
「とにかく、私とルークの間には本当に何もないからね」
「……そうですか」
数十分に及ぶ私の力説の末、レミアはようやく納得してくれたようだった。
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