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愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした  作者: ましゅぺちーの


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6 歩み寄る

オリバー様と結婚して一週間が経った。

相変わらず彼は私に冷たいままだ。



あの日からオリバー様は時折夜遅く邸に帰って来ては乱暴に私を抱いて、朝になったら再び邸を出て行くという生活を繰り返していた。

どうやら彼は本当に私を子供を産む道具としてしか見ていないらしい。

それに加えて使用人たちも明らかに私を良く思っていない。

本当に私が何をしたというのだろうか。



彼にも、使用人たちにも嫌われることをした覚えは無い。

理由も分からないため、改善のしようがないのが辛かった。



この広い邸にたった一人でいると、何だか暗闇に取り残されたかのような気分になる。

終わりの見えない、果てしない闇。

オリバー様との結婚生活はこれからも永遠に続くので、ある意味間違ってはいないのかもしれない。



だけど、こんなにも辛い日々が永遠に続くだなんて私は耐えられるだろうか。

公爵邸での私の扱いは完全にお飾りの妻だ。

主人であるオリバー様が私を蔑ろにしているから周りも私を見下している。



今すぐここから消えてしまいたいと思ったことも何度かあった。

自分がこの場所にいる価値をどうしても見出せないのだ。



(……本当に、私はどうしてここにいるのかしら?こんな生活がこれからもずっと続くのであれば……)



――もういっそ、死んでしまった方が……



「……!」



私はそこまで考えてハッとなった。

父や母、兄に幼少期からずっと一緒だった伯爵邸の使用人たちの姿が脳裏に浮かんだからだ。



(ううん、そんなことを考えてはダメよ。今の状況を変えることから始めなければいけないわ)



そう思った私は、オリバー様に少しずつ歩み寄っていくことを決めた。




***




「――お帰りなさいませ、旦那様!」



オリバー様が帰宅した日、私は満面の笑みで彼を出迎えた。

どれだけ酷い扱いを受けていようとも、私と彼が夫婦であることに変わりはない。

一生嫌われたまま、というのだけは御免である。



何より私は、彼を愛しているから。



「……」



もちろんオリバー様はそんな私を見てしかめっ面をしていた。

私だって彼の冷たい視線に何も感じないわけではない。

何度も心が折れそうになったし、胸も痛んだ。



(これもオリバー様と良い夫婦になるためよ!我慢我慢!)



彼の傍を離れることだけは、今の自分にはどうしても出来そうにない。

愛は得られなくても、お互い信頼出来る良きパートナーになれたらなと思う。



「――おい、あの花は何だ?」



オリバー様は帰って来て早々、廊下に飾られている花を指差した。



「あ、あれは私が飾ったものです。屋敷が華やかになるかなと思って……」



言い終わる前に彼は私にギロリと鋭い視線を向けた。



「誰がそんなことをしろと言った?」

「あ……ご迷惑でしたか……?」



その冷たい目に怯んでしまう。



「余計なことをするな」

「……」



オリバー様は不機嫌そうな顔でただそれだけ言うと、すぐにいつものように自室へと戻って行った。



「あ、も、申し訳ありません……」



私は慌てて去って行く彼の後ろ姿に謝罪したが、彼がこちらを振り返ることは無かった。

そんな私を見た侍女たちがクスクス笑った。



「何て惨めな奥様……」

「とてもじゃないけど見ていられないわ……」

「旦那様により嫌われてしまったのね」



私を嘲笑うような声。

私の心をズタズタに切り裂くには十分だった。



「……」



彼女たちが去った後、私はすぐに廊下に飾られていた花を片付けた。



(これ、どうしよう……)



あのままここに飾っておくとまたオリバー様の機嫌が悪くなるかもしれない。

だけど捨てるのはいくら何でも勿体ないのではないか。

こんなにも美しく咲いているのだから。



(……私の部屋に飾ろう)



私は自室に戻って、空いているところに花を飾った。



(綺麗ね……何だか部屋が明るくなった気がする)



私は花が好きだ。

正直に言うと、花を嫌いな人なんていないと思っていた。

実際に私の家族は全員が好きで、邸のいたるところに花が飾られていたし、お母様も庭園の管理を好き好んでしていたから。



(でももしかすると、男の人はそうじゃないのかもしれない……)



私の勝手な行動でオリバー様に不快な思いをさせてしまった。

これからは気を付けようと心に誓い、その日はベッドに入って休んだ。



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