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愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした  作者: ましゅぺちーの


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45/50

45 変わった女 ?視点

深い夜。

冷たい夜の風が勢い良く吹き抜けた。



「……」



俺は今とある場所にいた。



ここへ来るのは本当に久しぶりだった。

今や誰も使っていない、古びた宮殿。

昔、実の父がお前たち卑しい血筋の母子にはここがお似合いだと言って俺と母に与えた場所だった。

その父はもう九年前に死んでいるが。



(……嫌なことを思い出してしまったな)



頭の中から記憶をかき消すように首をブンブンと横に振った。

そんな俺の目の前には一つの墓石が立っている。



「……母上」



俺は今日、亡き母の墓参りに来ていた。

ここは母との思い出が詰まった場所だったから、あえてここに墓を建てたのだ。



「……元気でしたか」



――ずっと一人ぼっちで寂しくなかったですか。



「……」



当然、答えは返って来ない。

ここにいると、幼い頃に亡くなった母との思い出が蘇ってくる。



誰よりも優しかった母。

父が気まぐれで手を出さなければ、もっと長生き出来たはずなのに。



(……貴方は、俺のことを恨んでいないんですか)



久々に会いに来たというのに、こんな捻くれたことしか言えない自分が嫌になる。



この場所には母の全てが詰まっている。

自由に外へ出ることも許されず、目立たずにひっそりと生きるしかなかった俺と母。

そんな生活が嫌で全てを捨てた。



しかし、念願叶ってようやく自由を手に入れたというのに、何故だか気持ちは沈んだままだ。

自分は一体何がしたいんだろうか。

ふとしたときにそう考えることもしばしばあった。



密かに胸に抱いていた疑問。

この答えを見つけられる日は、いつか来るのだろうか。



墓に花を供えてそっと手を合わせた俺は、母が眠っているこの地から背を向けて歩き出した。



それからしばらく歩き続けて、近くにある宿屋へと到着した。



「あら、お帰りなさい。今回は長く滞在するのかしら?」

「ああ、一応そのつもりだ」



宿の女主人が気さくに話しかけてきた。

俺は軽く返事をしてそのまま自分の部屋へと入った。

着ていたローブを脱ぎ捨て、ベッドに寝転がる。



「……」



何もすることが無い。

暇で仕方が無いからとりあえず今日あったことを振り返ってみる。

変わり映えしない日々だろうと思っていたが、一つだけいつもと違うことがあった。



(そういえば……)



今日、俺は面白い女に出会った。

複数人の男を相手に、立ち向かっていく強気な女。

元々他人に興味の無い自分だが、あの女には何故だか強く関心を抱いたのを覚えている。



そして気付けば間に入っていた。

助けるつもりなど無かったのに。



何故赤の他人のためにあそこまで出来るのか、興味が湧いた。

下手すれば男たちによって酷い目に遭わされていたかもしれないだろう。



あの力強い茶色い瞳は今でも鮮明に思い出せる。

あのような目が出来る人間はそうはいない。

思い出せば出すほど興味が湧いてくる。



(…………まぁ、どうせもう二度と会うことは無い)



そうだ、俺が彼女に関心を抱いたところで俺と彼女は赤の他人でしかない。

考えているだけ無駄だ。



俺はさっきから自身の頭を占めているその女のことを早く忘れようと、ゆっくりと目を閉じて眠りに就いた。



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