42 女子会
デルタール嬢の前から立ち去った後、王妃付きの侍女がホールにいた私に声をかけてきた。
「ログワーツ嬢、王妃陛下がお呼びです」
「王妃陛下が……ですか?」
どうやらレイラが会場の近くにある控室で私を待っているようだ。
「すぐに向かいます」
私はすぐにそう言うと、彼女と共にホールを出た。
侍女に案内された私はレイラの待つ部屋へと通された。
「王妃陛下、ログワーツ嬢がお見えになられました」
「入れてちょうだい」
「――失礼いたします」
私は案内された部屋の中に入ってカーテシーをした。
「王妃陛下にご挨拶申し上げます」
「そんなに固くならないで。いつも通りでいいわよ」
礼儀正しく挨拶をする私に、レイラは気さくにそう言った。
「ふふ、お言葉に甘えてそうさせてもらうわ、レイラ…………って、お義姉様?」
驚くことに、部屋にはレイラだけではなくリーシェお義姉様もいた。
「エミリアさん、お疲れ様です」
「あ、お疲れ様です。お義姉様」
私はレイラの向かい側――お義姉様の隣に腰を下ろした。
「エミリア、あなた本当に変わったのね。さっきのデルタール嬢の顔は見物だったわ」
「あ、あれ見てたの……?」
「当然じゃない、会場にいる全員が注目してたわよ」
「う、嘘でしょう……?」
まさか貴族たち全員に見られていたとは。
途端に恥ずかしさがこみ上げてくる。
(……まぁ、名誉挽回出来たから結果的には良かったのかしら)
「とにかく、これであなたの評判は大きく変わるはずよ。良かったわね、エミリア」
「これも全部レイラたちのおかげだよ!お義姉様もありがとうございました!」
「いえいえ、可愛い義妹のためなら何だってしてあげますわ」
(可愛い義妹だなんて……)
私とお義姉様が笑みを交わしていたそのとき、レイラが突然ある提案をした。
「そうだわ!せっかくこうやって三人で集まれたのだから、女子会でもしましょうか」
「ああ、それ良いわね!」
「女子会……でございますか?」
盛り上がる私とレイラをよそに、お義姉様はきょとんとした顔をしている。
どうやら深窓の令嬢として育てられたお義姉様は女子会というものをしたことが無いようだ。
「お義姉様は初めてですか?」
「はい……ご夫人たちの間で行われるお茶会のようなものでしょうか?」
「まあ似たようなものです!最近流行りのファッションとか恋愛に関する話とかするんですよ!」
「恋愛に関する話……」
その言葉にお義姉様の顔が赤く染まっていった。
***
女子会を始めてから三十分ほどが経過した。
「それで……そこで旦那様がですね……」
「「……」」
私とレイラはドキドキしながらお義姉様の話を聞いていた。
「――君と一緒になれるのなら、全てを捨ててもかまわないと、そうおっしゃったのです」
「「キャー!!!」」
部屋中に悲鳴に近い歓声が鳴り響いた。
あまりにも衝撃的なその話に、私とレイラは二人して顔を見合わせた。
「え!?何!?ケインってそんなこと言うの!?」
「私も初めて知ったわ!あのお兄様、そんなロマンチックなこと言ってたの!?」
あの兄にそんな一面があったとは、長い付き合いである私もレイラも知らなかったことだ。
「はい……そんなことを言われたのは初めてでしたので、私は嬉しくてつい泣いてしまって……」
「良いわねぇ!一度でいいからそんなこと言われてみたいわ!」
「お義姉様は本当に幸せ者ですね」
口々にそう言った私たちを前に、お義姉様は照れたように笑った。
私たちは今ちょうどさっき言っていた恋愛に関する話をしていた。
いわゆる恋バナというやつだ。
恋バナと言っても、私は話せることが無いので主にレイラとお義姉様の話を聞いているだけだが。
(でもそれだけでも全然楽しいわ!)
私はオリバー様と結婚する前にもよくレイラと恋バナをしていたのだ。
以前と変わらない接し方をしてくれる彼女には本当に感謝しかない。
未だに赤い顔のままであるお義姉様が、恥ずかしそうに顔を背けながら言った。
「次は王妃陛下の番ですよ」
「レイラ、でいいわよ」
「えっ?」
「公の場じゃなければレイラって呼び捨てにしていいわ。その代わり私もリーシェって呼ばせてもらうから」
「レイラ様……」
(あら)
どうやらこの女子会を通じてレイラとお義姉様は仲良くなったようだ。
好きな人同士が親しくなると何だか嬉しい。
「私、ちょっとお手洗い行ってきますねー!」
「寄り道しちゃダメよ、エミリア」
「いってらっしゃいませ」
私は二人に見送られながら、一度控室を出た。




