37 ドレス
「お義姉様、ここは……?」
「ここは私のドレスルームですわ」
私が連れて来られたのはお義姉様のドレスルームだった。
様々な色の美しいドレスが掛けられており、とんでもない数である。
(ドレスいっぱいあるなぁ……)
おそらくこれは全て義姉にベタ惚れな兄が贈ったものだろう。
あの兄ならやりかねないことだ。
お義姉様はドレスルームの奥から大事そうに保管されていた白い箱を取り出した。
「それは……もしかして……」
お義姉様が中を開けると、私が購入したドレスが綺麗に畳まれた状態で入っていた。
(わぁ……こう見ると本当に綺麗だなぁ……)
美しい容姿をしているお義姉様に本当に似合いそうなドレスである。
そう思いながら箱に入っているドレスを眺めていると、お義姉様が信じられないことを口にした。
「エミリアさん、舞踏会にはこれを着て行きましょう」
「……………はいっ!?」
とんでもないことを言われたので、思わず大声を出してしまった。
「ほ、本気で言ってるのですか……」
「冗談など言いませんわ」
お義姉様の目は真剣そのものだった。
(どう見ても私に似合うドレスじゃないでしょ……)
私は美しいお義姉様にプレゼントするつもりだったのに。
そんな私の気持ちを読み取ったのか、彼女が口を開いた。
「エミリアさん、そのドレスは私には似合いませんわ」
「え、そんなこと……」
「いいえ、本当です。私の青い髪にはその赤いドレスは映えませんわ」
そこでお義姉様は私の方を見てクスリと笑った。
「私よりもエミリアさんの方がよくお似合いだと思いますよ」
「そ、そうでしょうか……?」
私にこんな華やかなドレスが似合うだなんて、俄かには信じられない。
自分の容姿が平凡なことなど誰よりも自分自身が知っていることだから。
(公爵邸で侍女に着せられていたのはどれもシンプルな物だったし……)
初の試みである。
正直不安でしかないが、完全にその気になっているお義姉様を私の手では止められそうにない。
「本当に大丈夫でしょうか……」
「きっとよく似合うと思いますわ。エミリアさん、どうか一度だけ私を信じてくださいませんか?」
「は、はあ……」
私は渋々その提案に頷いた。
それから私はお義姉様と一緒に、ドレスと共に身に着ける装飾品選びを始めた。
しかし、問題があった。
「あの……お義姉様……」
「はい?」
「私、ファッションには疎くてですね……今までドレス選びとか全部人任せだったんですよ……」
それを聞いたお義姉様がふふふと笑った。
「心配いりませんわ。私がいますし……何より舞踏会の当日は強力な助っ人をお呼びしていますから」
「助っ人……ですか?一体誰のことを言って……」
「それは当日までのお楽しみです」
「……?」
結局、お義姉様は最後までその助っ人が誰なのかを教えてはくれなかった。
引き続き装飾品選びをしていた私の目に、ある物が映った。
(あ、あれ……)
私の目を引いたのは赤い花のあしらわれたヘッドドレスだった。
私が買ったドレスに似合うだろうなぁと思ってじっと見ていただけだった。
しかし、お義姉様にはお見通しなのか嬉しそうな顔で私に声をかけてきた。
「その髪飾り、あのドレスによく合いそうですね。エミリアさんは見る目があります」
「え、た、たしかにそうですね……」
「よろしければ、お貸ししましょうか?」
「で、ですが……良いのですか?お兄様から貰った大切な物なんじゃ……」
「いいえ、これは私が実家から持って来たものですから平気ですわ」
「そ、そうだったんですね……ありがとうございます……」
結果として、私はお義姉様と日が暮れるまで舞踏会へ向けての装飾品選びを続けたのだった。




