30 疑問
「ふぁ~……いっぱい遊んだら何だか眠くなっちゃいました」
「エドモンド、今日はここへ来るために早く起きてきたでしょう?ならお昼寝でもしましょうか」
「はい、そうします……」
あの後、私とお母様は庭で遊んでいたエドモンドたちと合流した。
案の定、お父様はエドモンドの体力について行けずヘトヘトになっていた。
「エミリア……」
「お父様、大丈夫?」
「ああ、子供の体力というのは本当に恐ろしいな……」
(どっかで聞いたことあるセリフね……)
お父様も昔は立派な騎士様だったのに。
私はもう動けなさそうなお父様の代わりに、眠たそうに目をこするエドモンドを用意された部屋まで連れて行った。
エドモンドをベッドに入れ、上からそっと布団をかぶせた。
「叔母さん、今日はとっても楽しかったです」
「本当に?そう言ってもらえて嬉しいわ」
布団を手で握りしめて目だけを出したエドモンドは嬉しそうにそんなことを口にした。
私はベッドサイドに腰掛け、その様子をじっと眺めていた。
眠りに就くまではここにいるつもりだ。
「また遊びたいです。いいですか?」
「当たり前じゃない、いつでも付き合うわ」
「やった!」
そんなことを話しているうちに、エドモンドはウトウトし始めた。
「次は叔母さんとお祖父様とお祖母様と僕でお出かけしたいです……」
「もちろんよ、お父様とお母様も私もみんなエドモンドが大好きだもの」
「本当ですか……?」
「当然じゃない」
エドモンドは元々眠たそうにしていた目をさらに細めて満面の笑みを浮かべた。
(本当に愛らしい子だわ……)
私にもこんな子供がいたらいいのになと思う。
「お父様とお母様も一緒に来れたら良かったのに……」
「そうね……」
ケインお兄様とリーシェお義姉様は居候である私とは違ってれっきとした伯爵夫妻である。
なのでどうしてもスケジュールが合わず、今回ここへ来ることが出来なかった。
(お父様とお母様とお兄様とお義姉様とエドモンドと私……)
たしかにいつかはそんな風に家族全員で集まれたらいいなと思う。
私にとっての大切な人たちだ。
ふとエドモンドを見てみると、かなりの間眠気を我慢していたみたいだがどうやらもう限界が来ているようだ。
エドモンドはゆっくりと瞼を閉じて眠りに就いた。
「おやすみ……エドモンド……」
「……」
私はぐっすりと眠っているエドモンドにそっと声を掛けた。
既に寝ているのか、返事は無かった。
エドモンドが眠りに就いてからも私はしばらくの間ベッドサイドに腰を掛けたままでいた。
(もし私に子供がいたら……)
こんな風に愛らしかったのかなとついつい考えてしまう。
結婚などは別に望んでいないが、子供が欲しくないかと言われれば正直よく分からない。
オリバー様に放っておかれる前までは、子供を産むことが当然だとずっとそう思っていたから。
(子供……私の子か……)
「――あら、そんなに難しい顔して何を考えているのかしら?」
「……お母様?」
考え込んでいた私に、突然背後から話しかけてきたのはお母様だった。
一体いつの間に部屋に入って来たのやら。
考えるのに夢中だったからか、まるで気が付かなかった。
「いや……ただ私に子供がいたらどんな感じだったのかなって」
「あら、もしかしてエドモンドを見て子供が欲しくなったのかしら?」
「欲しくなったというか……」
まぁ、そりゃあ欲しくなくはないけれど。
叶うはずの無い願いをわざわざ口にしたりはしない。
「エミリア、育児は本当に大変なのよ」
「それは分かってるけど……」
育児の大変さは十分すぎるほど理解している。
もちろん出産の痛みも。
レイラもリーシェお義姉様もそれに関しては本当に辛そうだったから。
だけど、それ以上に――
(……そういえば、どうして私はオリバー様との間に子供が出来なかったんだろう?)
オリバー様は私のせいだと言い張っていたが、本当に自分の体に何か問題があったのだろうか。
このときの私はそんな疑念を抱き始めるようになっていた。
私は別に体が弱いわけではない。
むしろどちらかというと強い方だ。
幼い頃から風邪を引いたこともほとんど無かったのだから。
(全然分からないわ……)
まぁ、オリバー様と愛人の間には子供が産まれているので少なくとも彼側に問題があるということは無さそうだが。
(……結果的にオリバー様と円満に離婚出来たんだから良かったのかしら?)
そうは思うものの、何だか複雑な気持ちだ。




