第二十八章 少しずつ見えてきた?
何度かの害虫討伐を経て数日後。
昼前の道場では――。
「今日は、これを捌いてもらう」
カールが綾子の前に魚を置いた。
口をパクパクさせ、跳ねようとしている魚。
「あのう……まだ生きてますけど……?」
「そうだな」
「昨日までは死んだ魚でしたよね?」
「ああ」
カールが間を置いた。
「今日からは、自分で締めてもらう」
(えっ……?)
「……どうやればいいんですか?」
「そうだったな……」
「手本を見せよう」
カールは魚をまな板の上へ置いた。
綾子は、その手元をじっと見つめる。
「魚の頭と胴の境目に刃を入れるんだ」
カールが魚を押さえ、刃を入れる。
「そこが境目なんですね……」
「ああ」
魚が一度、大きく跳ねた。
それから、動かなくなった。
「へぇえ……」
魚を見つめる綾子。
「綾子」
「はい」
「次はお前さんだ」
「はい……」
一瞬、躊躇する綾子。
「そうだ」
「そこに刃を入れるんだ」
「こうですかね……」
「しっかり抑えてないと暴れるぞ」
「はい……」
教えられた場所へ、慎重に刃を入れた。
魚が暴れようとする。
そして――。
「上出来だ」
「はい……」
綾子は、動かなくなった魚をしばらく見つめた。
「あとは任せる」
「はい」
「今日も”あら”で汁を作る」
一拍。
「マルキーは放っておけ」
綾子は数匹の魚を捌いた。
身は刺身に。
”あら”はあら汁に。
後ろではカールが漬物を切り、
マルキーは魚を焼いていた。
――――
料理が揃うと、三人で昼食を囲んだ。
「いただきます……」
「いただきます」
今日も二人の声が揃う。
「ああ」
「好きなだけ食べなさい」
綾子も箸を手に取った。
「……美味しい」
口に入れた瞬間、身の弾力が伝わってくる。
「プリップリ!」
(熟成させた魚のほうが美味しいって聞くけど……)
「締めたてって、こんなに美味しいんですね」
「そうかい」
「それは良かった」
「はい!」
続いて、あら汁を一口。
魚の旨味が汁に溶け込んでいる。
「これも美味しい……」
(私も結構やるじゃん)
綾子は汁をもう一口飲んだ。
さっきまで目の前で動いていた魚。
それを自分で締めて、捌いた。
それなのに、今はこうして美味しく食べている。
(……私が締めた魚なんだよね)
そう思うと、少しだけ不思議な気持ちになった。
「先生」
「どうした?」
「今日のお魚、美味しいですね」
「そうか」
カールはそれだけ答えると、自分のあら汁を口に運んだ。
綾子はもう一度、刺身を箸でつまんだ。
「……やっぱり美味しい」
綾子はマルキーに目を向ける。
「でさ……、マルさんも、そろそろ刺身食べてみたら?」
「いや……俺は……刺身は遠慮しますよ……」
「せっかく、私が毎日捌いてるのになー」
「ははは……」
「こんなに美味しいのに……」
冷や汗を流すマルキー。
「焼き魚、美味しいですよ……」
それから三人は、いつものように昼食を終えた。
――――
午後からの稽古。
「では、始めるぞ」
カールが木剣を構える。
綾子も木剣を構えた。
「お願いします!」
「来い!」
いつものように、カールとの立ち合いが始まった。
綾子はカールの動きを見る。
一歩。
二歩。
カールがゆっくりと間合いを詰めてくる。
綾子も足を動かした。
最近の綾子は、少し違っていた。
カールだけを見ているわけではない。
視界の端に、マルキーがいる。
道場の柱。
壁。
自分が立っている場所。
それらが、以前よりも自然に目に入ってくる。
(……あれ?)
カールが踏み込んだ。
綾子は反射的に横へ避ける。
「ほう」
カールの木剣が空を切った。
「今のは悪くない」
「本当ですか?」
「ああ」
綾子は少し嬉しそうに笑った。
だが、カールはすぐに構え直す。
「もう一度だ」
「はい!」
二度目。
今度はカールが綾子の右へ回り込む。
綾子は追わない。
少しだけ身体を動かし、先回りする。
「……」
カールが足を止めた。
「どうしたんですか?」
「いや」
一瞬だけ笑みを浮かべるカール。
「ここ最近、周りが見え始めておるな」
「……そうなんですか?」
綾子は首を傾げる。
「自分では、よく分からないですけど……」
「それでいい」
カールは木剣を構え直した。
「今は、見えるようになれば十分だ」
「はい」
「では、次だ」
「お願いします!」
綾子は、周囲にも目を向ける余裕が生まれていた。
マルキーがどこにいるか。
自分がどこにいるか。
カールがどこへ動けるか。
(……私、道場だと意外と周りが見えてる?)
(あの害虫退治のお陰なのかな)
その後も立ち合いは続いた。
――――
休憩を挟んだ後。
「そろそろ頃合いか……」
カールが呟いた。
「よし、次は綾子とマルキー、二人一緒にかかって来なさい」
「えっ?」
「ええっ?」
二人は驚いた。
「いきなり連携しろとは言わん」
一拍。
「だが…味方の動きを見ながら動け」
「はい!」
「分かりました!」
二人は木剣を構えた。
カールも木剣を構える。
「来い」
綾子とマルキーが、カールを前後から挟む。
そして、ほぼ同時に踏み込んだ。
「せいっ!」
「やっ!」
カールが一瞬で横に移動する。
そのまま木剣を滑らせるように振り、二人の胴を軽く捉えた。
綾子は、そのまま勢いを殺せず前へ出た。
「……っ!」
マルキーが息を呑む。
既のところで綾子の木剣を避けた。
「お嬢、ちゃんと止まって下さいよ」
「ご、ごめん!」
二人は一度距離を取った。
「味方を見る、か……」
綾子が呟く。
「ええ」
マルキーも頷いた。
「じゃあ、今度は動線を少しずらしてみるよ」
「いや…それでも、簡単に避けられちゃいます」
「そっか……」
「真反対じゃなくても良いです。先生の隙を突ければ」
「……分かった」
(先生に隙なんて無いと思うけど……)
二人が再び構える。
カールがゆっくりと近づいてくる。
マルキーが右へ動いた。
綾子も少し遅れて左へ回る。
カールの視線がマルキーへ向いた。
「今です!」
マルキーが踏み込む。
綾子も同時に動いた。
「えいっ!」
カールが一度、右へ避けるように身体を動かした。
次の瞬間、左へ切り返す。
二人の間をすり抜けた。
「……!」
綾子の木剣が空を切った。
マルキーの木剣も届かない。
「惜しかったな」
カールが笑う。
「でも、さっきよりは良い」
「本当ですか?」
綾子が顔を上げる。
「ああ」
カールは二人を見る。
「今のは、互いの動きを見ていた」
「はい!」
綾子が嬉しそうに返事をする。
「だが」
カールが木剣を構え直す。
「見ているだけでは、まだ足りんな」
「……?」
「もう一度だ」
「はい!」
「分かりました!」
二人は再び構えた。
(先生の動きと、マルさんの動きを読まないと……)
綾子は大きく息を吐いた。
(これは大変だねー)
二人が構え直すと、
今度のカールは二人を待ち構えた。
(今度は、同じ側から……)
綾子はカールを見ながら、
視界の端でマルキーを見ようとする。
マルキーの足が僅かに動いた。
(右……?)
綾子も身体を動かす。
「そこっ!」
マルキーが踏み込んだ。
綾子も合わせる。
二人の動きが噛み合った。
だが、カールが少しだけ間合いを開けた。
それに合わせて、マルキーもさらに踏み込む。
直後――。
「あっ…」
綾子が気付いた時には、もう遅かった。
――バシッ!
「痛っ!」
綾子の木剣が、マルキーの肩に当たった。
「ごめんマルさん……」
マルキーが肩を押さえる。
「いえ、大丈夫です」
「ごめんなさい……」
綾子が申し訳なさそうに頭を下げる。
カールが二人を見て苦笑いをする。
「動きは悪くない」
「でも、マルさんを打っちゃいました……」
「そこだ」
カールが二人の立ち位置へ木剣を向ける。
「味方を見るのも大事だが、自分と味方の距離も見ておけ」
「……距離」
綾子がマルキーの立ち位置を見る。
「近過ぎたんですね」
「ああ」
カールが頷く。
「気が高ぶると、一瞬…周りが見えなくなるからな」
一拍。
「だから、味方の動きも予測しなきゃいけない」
「……はい」
「もう一度だ」
「はい!」
(次は少しだけマルさんと距離を取って……)
今度の綾子は、マルキーを見ながら視界の端でカールを見る。
(多分、先生とマルさんを交互に見ないとダメなんだろうね……)
(見えない時もあるから予測も大事……)
(右……じゃない)
マルキーの身体が僅かに沈んだ。
(こっち……だと思う!)
綾子は一歩下がるのではなく、少しだけ横へずれた。
カールの視線が綾子へ向く。
その瞬間、マルキーが踏み込んだ。
綾子も同時に踏み込む。
今度は、声がなかった。
「……!」
カールが二人の攻撃を受け流す。
「……今のは声を掛けていなかったな」
カールの口元が僅かに緩んだ。
マルキーも驚いた顔で綾子を見る。
「お嬢、今のは……」
「……分かったんですか?」
「何となくかな。……半分は偶然だけど」
綾子は自分の木剣を見た。
「マルさんが、こっちに来る気がしたから」
カールは二人を見て、僅かに笑った。
「それでいい」
綾子も照れながら笑った。
「でも、まだまだだ」
「そーですよねー」
カールが木剣を構え直す。
「続けるぞ」
「はい!」
「はいっ!」
その後も、綾子とマルキーの稽古は続いた。
何度も失敗しながら、少しずつ互いの動きを合わせながら。
まだ上手く噛み合わない。
それでも、最初よりは確実に動きが変わっていった。
やがて稽古が終わる。
カールは木剣を下ろし、二人を見る。
「今日は、ここまでだ」
「はい!」
「二人とも、少しずつ相手の動きが見えてきたな」
「嬉しいです」
「ありがとうございます」
「それと」
「挟み込みで動線が被ると、同士討ちの危険が増える」
少し間を置くカール。
「……気を付けなさい」
「はい!」
「はい!」
カールの表情が少し緩む。
「分かっていると思うが」
一拍。
「連携を声に出すと相手に筒抜けだからな」
「ですよねー」
「わしはしばらくの間は……」
「聞こえない振りをする」
「その間に意思疎通を考えなさい」
「はい」
「分かりました」
「だが、敢えて声に出して」
「相手を撹乱するのも、一つの手だ」
「えっ?……どういうこと?」
「嘘ついて相手を惑わすんですかね」
「そうだ」
「へぇえ……」
「命のやり取りでは」
カールが間を置いた。
「卑怯だの、ずるいだのは関係ないからな」
(命のやり取り……)
「覚えておきなさい」
「はい!」
「はい」
二人は木剣を棚に戻した。
「ありがとうございましたー!」
「ありがとうございました」
「ああ、また明日」
「気を付けてな」
――――
道場を後にして、宿へ向かう二人。
「今日は、少し早めに終わったね」
「そうですね」
綾子が上を向いた。
「最近さー……」
「何ですか?」
「ラーメン成分が足りないんだよね……」
「えーっと、……ついこの間、行ったじゃないですか?」
「ここんとこ、ラーメン多くないですか?」
「うん、そーなんだけどねー」
「あんまり食べると、太りますよ……」
「うるっさいっ!」
「ラーメンは大丈夫なの!」
「……いや、俺が太っちゃいますよ」
「じゃあ、エールを控えたらいいじゃん」
マルキーが冷や汗を流す。
「……じゃ…じゃあ、今度の休みにしましょうよ」
「宿屋も、もう晩飯の準備してるでしょうし……」
「それはそうなんだけどねー」
綾子の眉が少し下がる。
「それがさー……」
「オーダさん、全然休みが合わないんだよね」
「そうなんですか?」
「うん。今度一緒に行こうって言ったのに」
「……」
「仕事が忙しいんだって」
「へぇ……」
「だからさー……」
「はい……?」
「このまま宿に戻って、食事を断ってラーメン行こうよ」
「ええぇ……?」
マルキーが苦笑いする。
「お嬢は、オーダさんに教わった店に行きたいだけでしょ?」
「そうだよー」
「だってオーダさん、全然連れてってくれないんだもん」
呆れるマルキー。
「だって、豚骨醤油だよ?」
「いや……意味が分からないです……」
「だから、豚骨醤油なの!」
「ああ……そうですか……」
呆れたまま、しばらく考え込むマルキー。
「分かりました」
「じゃあ、宿屋で食事を断れたら、行きましょう」
「うん、それでいいよ」
「じゃ、宿に戻ろっ!」
綾子が足早になる。
マルキーの足取りは少し重かった。
――――
宿屋へ着くと、マルキーが食堂へ向かった。
綾子は入口で待っている。
(頼む……今日はダメだと言ってくれ……)
マルキーは、そんなことを願いながら宿の人に話をする。
しばらくして、戻ってきた。
「どうだった?」
「……今日は外で食べてもいいそうです」
綾子が小さく拳を握る。
「よしっ……!」
「はい……」
マルキーが小さくため息を吐く。
「……では、……行きましょうか」
――――
二人は宿を出て、ラーメン屋へ向かった。
綾子は足取りも軽く、楽しそうに歩いている。
マルキーの足取りは、変わらず重かった。
(お嬢が……こうなると……)
(もう誰にも止められない……)
しばらく歩くと、目的の店が見えてきた。
店先には小さな看板が出ている。
中からスープの香りが漂ってくる。
「ここだよね?」
「そうですね」
二人は店へ入る。
「いらっしゃっせー!」
元気な女性店員の声が響く。
二人は奥の席へ案内された。
座るやいなや、綾子はメニューを見る。
それを見たマルキーが苦笑する。
「お嬢……、どうせ頼む物決まってるんですから……」
「あーうるさい!」
「他にどんなものがあるのか見てるの!」
そして、穴が開くほどメニューを見続けた綾子が顔を上げた。
「お薦めのラーメン下さい!」
「やっぱり……」
マルキーが下を向いて静かに苦笑する。
注文を終えて、二人はラーメンを待つ。
そして綾子がいつもの儀式を行う。
「そういえばさ、アメピン作ってくれる話ってどうなった?」
「ええ……。それなんですけどね……」
マルキーが少し困った顔をする。
「かなり苦労されているみたいです……」
「そうなんだ……」
「ええ……」
マルキーは頷いた。
「いくつかの試作品を作ったそうなんですが……」
「うん」
「広げると、ひん曲がったまま戻らなかったり……」
「逆に途中でポキポキ折れたりするそうです」
「そっかー……」
綾子は少し残念そうに呟いた。
「どうやら硬さと軟らかさの釣り合いが取れないようでして……」
「早く出来るといいなぁ」
「そうですね」
しばらくして。
「お待たせしましたー!」
店員がラーメンを運んできた。
「わーい!」
「ありがとうございます!」
綾子の目が輝く。
透き通ったスープの湯気と一緒に、上品な豚骨の香りが立ち上ってくる。
「ん~、すっごくいい匂い!」
「そうですね…。少しクセはありますが……」
綾子は箸を手に取った。
「いただきます!」
麺を持ち上げ、スープと一緒に口へ運ぶ。
「んー! 美味しー!」
「醤油の甘さがいい!」
綾子の顔が一気に緩む。
(久々の豚骨醤油……美味しいな)
マルキーも一口食べる。
「意外と美味しいですね……これ」
「でしょ!?」
「このチャーシューも柔らかいし」
綾子は嬉しそうに頷いた。
「オーダさんも一緒に来てくれてたらなぁ」
「仕方ないですよ」
しばらく二人は、黙々とラーメンを食べた。
「……そういえばさ」
綾子が箸を止める。
「なんで豚骨系のラーメン屋って少ないんだろうね?」
「そうですね……」
マルキーは上を向いて少し考える。
「豚骨って、スープを作るのに骨を沢山使うじゃないですか」
「うん。それは知ってる」
「でも、その骨ってラーメン屋だけが使うわけじゃないんです」
「そうなの?」
「ええ。色々な業種で需要がありますから」
「……例えば、膠屋ですね」
「あっ、えーっと、……接着剤屋さんだっけ?」
「そうです」
頷いたマルキーが説明を続ける。
「それと工芸品や肥料、その他にも使われますから、取り合いだと思います」
「へぇえ……」
「だから、豚骨を仕入れようとすると結構高いはずです」
「ラーメン屋が単独で仕入れるというのは、かなり厳しいと思いますけどね」
「そうなんだー……」
「養豚が盛んな地域なら、また違うかもしれませんが」
「多分、この店は……、膠屋とか肥料屋のお遊びなのかも知れません」
「なるほどねー」
「……でもさ」
ニヤッとする綾子。
「分からないよぉ?」
「膠屋の店主さんが、実はラーメン好きかも知れないよ?」
「……そうですね」
またマルキーが苦笑する。
その後の綾子は、ラーメンを一口ずつ味わうように食べ続けた。
――――
「あー美味しかったー!」
「そうですね」
「ちょっと高かったけど……」
「また来たいなぁ」
「銀貨2枚ですもんね……。でも美味しかったです」
「でもお嬢……今後は宿の夕食を断る理由を考えないとですね」
「今日は、たまたまだよぉ」
「どうしても食べたかったからさぁ……」
綾子は少しだけ申し訳なさそうな顔をした。
「さすがに食堂の人に悪いから……」
「次からは、朝か前日に言っておこうか」
「それがいいですね」
結局、ラーメンを食べる回数が増えるだけなのではと思うマルキーだった。
――――
二人は宿への道を歩いていた。
「ほんと美味しかったなー」
「そうですね」
「まだ余韻が残ってる……」
「…またあのお店行こうね」
「ええ……」
少し歩いたところで、綾子がふと思い出したように口を開く。
「あとさー」
「はい」
「連携、何とかしないとね」
「そうですね」
マルキーが頷く。
「まあ、何とかなるんじゃないかと思います」
「そうなの?」
「ええ。…腕が立つ奴は、無言の連携も上手いですから」
「それ、どうやってんの?」
「俺もハッキリとは言えませんが……」
「何となく、雰囲気で分かるんですよ」
「また雰囲気かぁ……」
「お嬢も、雰囲気を読めるじゃないですか……」
「……ラーメンがあるかどうかを……」
「……それとは違うんじゃないの?」
「同じですよ」
「よく分からなくなってきた……」
「でも、お嬢。本当に最近、周りが見えるようになってきましたね」
「そう?」
「ええ」
マルキーが少し微笑む。
「最初の頃は、相手の一部分しか見えてなかったじゃないですか」
「そうだったっけ?」
「そうでしたよ」
「そっかー……」
綾子は少し考える。
「私も……少しだけ思ってたんだけどね」
「害虫退治のお陰なのかなと……」
「そうだと思いますよ」
「じゃ、あのバイト…続けないとね」
「目指せ日給、金貨一枚ですね」
二人は笑いながら並んで歩く。
「明日も頑張ろうね!」
「はい!」
薄明かりの大通りを、二人は宿へ向かって歩いていった。
第二十八章 終わり




