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第34話 最初の侵略者ダスター・グラン・3

 W19-3



 …………

 …………

 …………

 リシアン「グラズは一人で相撲(すもう)を取っていればいいのさ」

 リリアン「スモモ? 」

 銀のハイペリオン「赤はどこだ、赤を探せ」

 レッドドラゴン「予こそが最強だと、あの者に思い知らせてやろう」

 赤の王「違う、そっちじゃない、青だ、青の方へ向かえ」

 エルミー「いえ、私は本来あるべきものを形にしただけにすぎません」

 エルミー「…こんなこと、本来はあの方に……」

 …………

 …………

 …………


 空は快晴だ。

 だが何故だろうな、鬱陶しい気分だ。

 仕方が無い、そんな時もあるさ。

 混ぜ物をした安酒をちびちびと呑みつつ、歌姫の歌声を聞き惚れる。

 何もない、からっぽな(それがし)の唯一といってよい、至福の時間だ。


 歌姫の名はタリアという。

 酒場の裏手にある噴水近くにある家(噴水の家と呼ばれている)に住む未亡人だ。

 料理人だったタリアの夫は戦地に駆り出され、その地で戦死したようだ(歌姫タリアのプロフィールや事情は周囲(まわり)の酔っ払いどもに聞いた)。


 冒険者どころか戦闘職でもなかったから、徴兵されたわけではなく、だが、料理人として軍隊の行軍に随行することを強要され、戦闘に巻き込まれてそのまま。

 やるせないなあ、戦争なんて、悲劇しか生まないのにな。


 …………

 …………

 …………

 アーガンド「違う、未来のためだ、未来のために必要なのだ」

 …………

 …………

 …………



 しかしタリアの哀切な歌声には、某の心の奥底から、何かを引き出そうという引力が感じられる。

 この声に身を任せていれば、あの郷愁をもう一度蘇らせられるのではないか、なぜか走感じるのだ。

 だが、そう夢見て早一ヶ月。

 その機会はなかなか巡ってこない。


 もう無理なのか? 

 いや、諦めるな、あそこに、あそこにこそ、某の原点があるはずだ。

 某がこの町に居ついて1ヶ月。

 まあ、色々あった。


 もっと金の無い頃には町中で野宿もした。

 タリアの家の側の噴水にもお世話になった。

 そういえば、覗きと間違われて鍋が飛んできたことがあったな。

 今では誤解が解けて、笑顔で挨拶しあう仲だが。


 薄汚れたガキどもに耳や尻尾を触られたこともあったっけな、睨みつけて唸ると、蜘蛛の子散らすように逃げていったが。

 生意気な小僧どもに絡まれた時には拳骨をくれてやった。

 変なおっさんに身体をベタベタ触られたときは、ケツを押さえて逃げた。


 だが、最初にうずくまっていた、

 ……あの場所には、もどっていない。

 刺激臭の恐怖からまだ逃れられないでいるのだ。


 あそこに戻れば、なにかある…、かもしれないが、ないかもしれない。

 だがまずは刺激臭対策をしてからだな。

 ううっ、今思い出しただけで刺激臭が蘇る。


 げほっ、げほっ。


 考えるな、考えるな、

 平常心、平常心だ、

 ここは酒場、ここは酒場。

 ふーっ、ふーっ、


 よし、思い出は遠ざかった。

 うん、今、あそこへ戻るのは無理だな。

 だとすれば、やはり、記憶を呼び起こすのはタリアの歌声しかない。


 だから(それがし)は金さえできれば、

 日がな一日タリアの歌に耳を傾けるのだ。

 安酒を傾けながらな。


 …………

 …………

 …………

 ハイエルライン「このまま滅び去るのを見届けるのでは、片手落ちというものだ」

 …………

 …………

 …………



彼はスロースターターなのです。

これでダンジョン勢は少なくとも1ヶ月と3日の猶予を得ました。

まあ、ダンジョン№1の時間軸では、まだ1日経っていませんが。

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