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第9話 ダンジョンルームにて・8

D01-9



 ふう、やはり沙耶さんが側にいると緊張するな。

 触れたら危険な爆弾みたいなヒトだからな。


「では、現在の危機的状況をご説明いたします」


 ヤズナはさっきもそう言っていたな。

 何がキキテキなんだ? 


「現在、このダンジョンのDPは0です」

-「これではお二人の1日分の食事もままなりません」


 おお、そうだった、そうだった。

 すっかり忘れていたよ……。

 なにしろオレは現実逃避の天才だからな。

 なにかイヤなことがあるとゲームに逃げてここまで来たんだ。

 …誇れることではないが……。


 でもDP0か……、

 DP0だと1日でDP1しか回復しないんだよな、たしか。

 む、でも確かDP1で生み出せる食料があったような……。


「なあ、明日まで待ってワイルドラット肉を出すというのは駄目なのか? 」

「文明人のあなたがたにネズミの肉が食べられるのですか? 」


 うっ、でも頑張れば、なんとか……、

 こっそり沙耶さんをチラ見する。

 彼女は頑なにこちらを見ようとしないが、歯を食いしばり、こぶしを白くなるほど握り締めている。

 うっ、怒りを溜めているようにしか見えない。


「それにワイルドラットはこのくらいあります、それが20匹分出てきます」


 ヤズナが両手を開いて一抱えほどの大きさを示す。

 ふーん、1匹が枕ほどの大きさがあるわけね。


「食べきれないってこと? 」

「それもありますが……」

-「ワイルドラットの肉はまるまる20匹分、死体のまま出てきます」

-「肉として食べるには死体を捌かなければなりません、それはワタクシがやりますが…」

-「問題は死体をそのまま放置しておくとアンデッドになってしまうということです」

-「そして、下僕(サーバント)でも守護者(ガーディアン)でもなく、食料として出てきたワイルドラットのアンデッドは、誰彼構わず襲いかかることでしょう」

「うへぇ」


 思わず呻き声をあげるオレ。

 そりゃヤバイな。

 良い案だと思ったんだがな。


 ……そうだ、

 食べる分以外は焼却処分すればいいんじゃないかな、

 それとも解体すれば良いのか? 

 とにかく後処理をきっちりやればいけるはず。


「でもよく考えてみれば… 」

-「インベントリに入れておけば、状態が固定されますので、死体も腐らず、アンデッドにもならず、新鮮な肉が食べられます」


 おお、すげぇ、そんな方法が。

 ちなみにインベントリとは、

 かさばったり、重かったりする物を収納でき、

 質量、重量ともに0にできる便利スキルだ。


 なんでも情報にしてから記録するので、

 そのものの変化や劣化が起きない…、

 ……らしい、

 ……よ?


 ヤズナの話は続く。


「……少し消極的な気もしますが、それでいきますか? 」

-「お二人の安全には代えられませんからね」

-「1日の回復量が5DPになる二桁DPにするのに10日かかりますが……」


 たまらずといった風に、沙耶さんが声をあげた。


「待って、他にも方法があるのでしょう? 」



ワイルドラット肉についてはダンジョンルームにて・2、生活支援物資一覧に記載されています。

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