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努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
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第74話 姉妹

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます


10/9 改稿あり 加筆あり

 全員に落ち着いて聞いてもらえるように、テーブルの上にフライドポテトなどを並べて座ってもらう。

 食べ物に釣られてフランソワーズ様まで来てしまったが、この際だから共犯になってもらおう。


「さっきの3人に、なぜ大きく盛って話をして貰うように言ったかなんだけどね。簡単に言うと、認識を逸らそうと思ってね」


「認識をそらすのは分かるんですが、話を大きくしただけで逸らせるとは思いません」

 ケイタ君が首を振る。


「うん、そう思うのは当たり前だよね。でもさ、噂話があると人間食いつくでしょ?」


「はい、そうだと思いますが、どのような噂かによると思います」


「あぁ・・・まぁ、そうだね。だから面白おかしくして、話を膨らましてもらうの」


「それならば、皆こぞって噂をすると思いますが、逆に目立ってしまうんじゃないですか?」


「その通り! 目立ってしまえば、嘘か本当か分からなくなるでしょ? その中に真実があっても真実かなんて解らない」


「なるほど、人を隠すなら人の中と言うことですか。しかし、そんなに上手くいくんですか?」


「う~ん、どうだろうね? でもね、人間は3人に同じ事を聞くと、それが真実だと勘違いするんだよ。集団心理って言うのかな? 間違ってたらごめんね。えっと、話を戻すね。

 簡単に言うと、今の3人が噂をしてる人達の中に介入する。そうすると話されてる人は本当か? って思うが、他の人も同じ噂をしていると真実だと思い込む。そしてここから本題、もう1グループに第三者の噂を介入させるんだ」


「第三者ですか? 他の人の噂を流しても意味ないのでは?」


「他の人って言うよりも、このクランには裏のリーダーが居るって言う噂だね」


「裏リーダーですか? どういうことですか?」


「評価や名誉を稼ぐと出てくる妬みを、俺らじゃない第三者、裏リーダーに擦り付けて時間を稼いで、自分達の地盤を安定させる」


「なるほど、スケープゴートですか。しかしそれでは、逆に悪目立ちしてしまうんじゃないですか?」


「うん、でも時間は稼げるでしょ? まぁ、勇者を目指してるなら結局目立っちゃうんだし、時間稼ぎでちょうどいいんだよ」


「なるほど、納得しました」


「面白い! 中々に面白い策だ。叔父上や父上にも進言しておこう、楽しくなりそうだ」

 フランソワーズ様が、笑いながら言う。


 あれ? 何故陛下まで・・・いや、そこまで大事にしようと思ってないんですけど。

 フランソワーズ様の顔を見るとキラキラと輝いてるように見える・・・あぁ、思いっきり楽しんじゃってるよ・・・この先どうなるんだろう。


 こうしてお開きになったが、フランソワーズ様はもちろん、グロスさんまで喜々としていた。

 面白そうに話している面々を見て、あまりやりすぎると大変なことになる気がするんで・・・とは言えなかった。


 その後は、ケイタ君とタクミ君と俺で吊り橋の作り直しをする。

 橋はそのまま橋の形状にしておき、ロープで木などに括る事が決まったが、足下をどうするか決まらなかった。


「床も、前回のようにロープを巻いたのでいいんじゃないですか?」

 タクミ君が、首をかしげながら言う。


「そうなんだけどさ。前回は、足下の隙間が大きくてユカさんが足嵌まっちゃったでしょ?」

 俺が、腕を組んでタクミ君に言う。


「ロープをぎっしり敷き詰めればいいんじゃないですか?」


「そうなんだけどさ・・・板の方が安心しないかなって・・・」


「では、グラフェンで床を作ればいいのでは無いですか?」

 ケイタ君がメガネをクイッとしながら言う。


「そうですね・・・でもナノチューブの方が強いんじゃないですか?」

 タクミ君がケイタ君に聞く。


「グラフェンは、たしか食品ラップの厚みで1t位まで(※正確に言うなら2t)なら、全く問題なかったはずですよ」


「はぁ・・・そんなに強いものだったんですか?」

 タクミ君は、良く分かっていないようだ。


「へぇ~知らなかった。じゃあ、それを外壁に使ったら強くなるって事だよね?」


「そうなると思います。金属やコンクリートで覆ってしまえば、魔力切れしてもバラけることは無いと思いますし」

 ケイタ君は、頷きながら言う。


「じゃあさ、樹脂で覆っているカーボンファイバーのような感じになるのかな?」


「たぶん、そうだと思いますよ。ただ、推測の域を出ませんが・・・」

 ケイタ君は、メガネをクイッとしながら言う。


「とりあえず、つり橋とロープを作っちゃおうか」


 そんな事を話しながら、一気に作り上げる・・・2人は、もう手馴れた動きでグラフェンとナノチューブを作っていく。


「装備のグラフェンってさ、もう作ってあるの?」


「はい、もう全部終わってますよ」

 タクミ君が、笑顔で答える。


「早くない? そんなに直ぐ終わるものなの?」


「ずっと作り続けてますから、もう片手間でも作れますよ」


「慣れって凄いね。俺が手伝うのは組み立て位っぽいね」


「そうですね・・・そういえば、鋼線を作るとかいっていませんでしたか?」

 ケイタ君が、俺に聞いてくる。


「やっぱりさ、ロマンがある武器でしょ? 基本的にはそのものだけで殺傷力があるとは思ってないよ。ただ、戦闘時のサポートなんかが出来ればいいかなって思ってさ」


「なるほど、捕縛したり足をかけたりして転ばすなどをしたいということですね」

 ケイタ君が頷きながら言う。


「うん、もう1つの付加をどうするか迷ってるんだよね」


「そうですね・・・サイコキネシスのように操れる付加魔法・・・作って貰えるか聞いてみないとわかりませんね」


「いや、柔硬一体・・・カーボンナノチューブを場所ごとに柔らかくしたり硬くしたり出来ればなって思ってさ」


「操れなければ、意味が無いのでは?」


「それは、ちょっと試してみたいことがあるから大丈夫」


「あの・・・材料出来たんで組み上げませんか?」

 タクミ君が手を上げて言う。


「あ! ごめんね、やっちゃおうか」


 吊り橋2つを作り上げ、マジックバッグに入れて保存しておく・・・軽く掃除をして寝ることにした。


 次の日の朝、いつもより少し遅い時間に起き、ダイニングに行く。


「おはようございます」


「おう、やっぱり早いな。まだ誰もおきてないから手伝ってくれ」


 キッチンに行くと、セードルフ、ミランダ、ヨシさん・・セラン君がいた。

 皆に挨拶をして、セラン君に話しかける。


「セラン君も起きてたのか・・・もう起きても大丈夫なの?」


「はい、そんなに無理しなければ問題はありません。カナタ様」

 セラン君が、恭しく頭を下げる。


 あぁ、やっぱり様は付くのか・・・さん、に治らない・・・よね。


「そっか、無理しないようにね、病み上がりなんだから」


「はい、ありがとうございます」


「朝ごはんは、タコスにするつもりだ。そこのレタスを切ってくれ」

 タダシさんが、皆に指示を出す。


 切っているところでショウマ君が来たため、一段落させて外に出る。

 ショウマ君と一緒に柔軟をしていると、ナリッシュ君達3人と、何故かミミリさんが来た。


「ミミリさん? どうしたんですか?」


「カナタさん!? 何でここに?」


「お姉ちゃん知り合いなの?」

 ミリアさんが首をかしげながら言う。


 え? ミミリさんの妹? マジで? 助けといて良かった・・・


「うん、くしの作り方を教えてくれた人だよ」

 ミミリさんが、ミリアさんに返事をする。


「え? あの可愛いのを作った人? 女の人じゃないの?」

 ミリアさんが、驚きの声を上げる。


 そりゃあ、あのデザインを見ると驚くよなぁ・・・


「デザインは違う人っていってたよ? それよりもカナタさん、ありがとうございました。危ないところを助けて貰ったみたいで」


「いえいえ、たまたま近くに居ただけですよ」


「しかも、かなり強かったんですね・・・」

 ミミリはマジマジと見てくる・・・他の冒険者から比べると、見た目は弱そうだもんね~。


「お礼をしたいので、何か困ったことがあったら言って下さいね」

 ミミリさんは、俺に頭を下げる。


「えっと、1つあるんですけど、いいですか?」


「出来ることなら・・・ですけど」


 何で恥ずかしそうにしてるんだ? 朝っぱらからセクハラはしないよ? たぶん。


「変なことではなくて、革細工できる人を知ってたら紹介して欲しいなって」


「そんな事でいいんですか? もっと無茶なお願いされると思って・・・・いえ、何でもありません! う~ん・・・そうだ! 私は知らないんですけど、ヒリスちゃんが知ってるはずです。後で言っておきますね」


「ありがとうございます。助かります」


 その後、ケイタ君とタクミ君が起きるまで近況などを話しておく。

 木工は、櫛の売り上げでかなり裕福になり、それを聞きつけた住民の弟子入りがあとを絶たないらしい。一躍脚光を浴びたため、他の職人達もアワアワしているらしい・・・いいことだ。

 骨細工も、去年の売り上げと同じ額を一週間で稼ぎ出し、第一人者のヒリスさんが死にそうになってるみたい。

 弟子入りが殺到しすぎて、工房を拡張しているそうだ。

 2人とも、弟子が全く来ないことを嘆いていたが、今では弟子を育てるのに大忙しらしい。


 無償で教えてくれた2人に恩返しをしようと思っていたが、あまり必要なくなってしまったな、嬉しいことだね。

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