49.
さっきから堀川の様子がおかしい
でも仕方がないのかもしれない
だって彼女が痴漢にあってからまだ1ヶ月ぐらいしか経っていないのだからその恐怖が残っていてもおかしくない
それなのに彼女はその傷を乗り越えようとしてもがいている
俺なんとは違って…………
「浜口、あんた心当たりとかないの!こんなことをするような女子!!」
「知らねえよ!女子の事情とか知るわけないだろ。というか、探し出してどうする。先生らに報告でもするのか」
「そんなことしないわよ。そしたら大問題になって明美が痴漢にあったことバレちゃうじゃん。ただ顔面に一発拳を入れるだけ」
「…………容赦ないな」
「別に女が女の顔に手を出すんだから別にいいじゃない。ま、私がそいつを殴ったってことは問題になりそうだけど」
「ちょっと待ってよ海音ちゃん!それじゃあ海音ちゃんが悪い人になっちゃうじゃん。それなら私が」
「ダメ、私が勝手に怒って勝手に手を出すんだから明美は手を出さないで。明美の代わりにキツイ一発入れてあげるから」
そして俺にはこんな心優しい友達はいない
友達と呼べるよな人が居るかどうかも分からない
俺にもこんな友達がいたらなにか変わってるのかもしれないけど、もう遅い
こんなやつら、脅せるわけないじゃないか
「じゃあ、後はがんばれよ。俺なりにいろいろと探ってみるから」
「あ、えっと……浜口くん。あの、ありがとね」
ほら、俺とは違って笑ってる
心の中では恐怖がうずまいているだろうに、それを乗り越えるために無理をしてでも笑ってる
それと比べてなんて俺はカッコ悪いんだろう
確かに昔いじめられていたのは本当だ
けどそれはもう終わってるわけではない
今《《も》》いじめられているのだ
俺をいじめている奴が堀川が痴漢にあったところを知っていた
だからそれを脅しの材料として堀川とやろうとしているのだ
これをばらされたくなかったら俺の言うことを聞けって
俺はそのための身代わり
それでも俺は言うことを聞くしかなかった
そんなこと絶対にダメだと思いながらも二人の元に来てしまった
そうでもしないと俺が痛い目に遭うから
けど俺は覚悟を決めた
堀川をいじめるのではなく、俺が殴られる
長年続いたいじめに終止符を打ってやるんだ




