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第1話 目覚め

ご覧いただきありがとうございます。よろしくお願いいたします。

更新は不定期となりますが、少しずつ続きを書いていきます。


[お知らせ]

艦橋AIの名称を「ノア」から「エル」へ変更しました。作品内での設定や役割を考慮し、より適した名称であると判断したためです。

なお、物語の内容や展開に変更はありません。これまで通りお楽しみいただければ幸いです。

(2026年7月19日)

会社員の神谷大和、29歳。仕事終わりの泥のような疲労を抱え、このフルダイブゲームのコックピットに身を沈めることだけが、唯一の救いだった。


「やっと大規模なプレイヤー同士の艦隊戦が終わった。」


サーバーランキング1位、第304機動艦隊司令官。それが、このゲームにおける俺の居場所だ。大規模艦隊運用だけは誰よりも自信がある。


「さすがに眠くなってきたな。」


視界がゆっくりとぼやけていく。最近のフルダイブは、夢に落ちる感覚まで容赦なくリアルだ。そのまま、意識が深い闇へと沈んでいった。




重いまぶたを開けると見慣れたはずの机があった。白い照明に照らされ、金属のきめ細やかな傷まで鮮明に見える。


「……また寝落ちしたか」


身体を起こそうとした瞬間、ノイズのない澄んだ声が鼓膜に届いた。

「おはようございます、司令官」

「現在、本艦は未知の宙域にて単独漂流中です。」

「現在時刻は艦内標準時0730。連邦標準時との同期を試行しましたが、応答がありません。」


寝起きの頭ではその言葉の意味をすぐには理解できなかった。

「未知の宙域?」

「はい。現在位置は連邦標準星図に登録されているいずれの星域とも一致しません」


見慣れたゲーム内の連邦標準星図がそのまま表示される。

何年もこのゲームを続けてきた。連邦標準星図の隅々まで調べたつもりだったが、こんな場所を見た記憶はまったくない。


「へえ……そんなことあるんだな、どうなってんだこれ」


部屋を見回した。壁にも机にも物理的な損傷は見えない。全く匂いがないとは言わないが、どこか機械設備から出る独特の匂いがする。

「……気のせいか。」


とりあえずこの部屋は無事らしい。そうだ、一番大事なことを忘れていた。

「今、使える戦力は?」


ホログラムの少女は目を青く光らせ、一瞬だけ沈黙した。

「本艦には重大な損害は確認されていません。」

視界の端に青白いホログラムが展開され、簡易表示が映し出される。

「詳細はホログラムへ展開しましょうか?」


「なら、あとでいいや」


艦が無事なのは幸運だった。動いていない艦など、ただの的に過ぎないからな。

状況を確認するうち、寝起きの気だるさは完全に消えていた。空調と機器の駆動音だけが静かに響いている。ついさっきまで数千隻が入り乱れる艦隊戦を指揮していたとは思えないほど、この部屋は静かすぎた。


ホログラムの少女の目が緑色に光った。

「艦橋より優先通信を受信。」

「艦長、副長、および艦隊司令部幕僚が司令官の到着を待機中です。」

「現状報告および基本方針決定のため、艦橋への移動を推奨します。」

その言い回しは、ゲームの運営が用意した定型文にしては、妙に堅苦しい。

まるで本物の軍隊の通信だ。


「……やっぱりイベントでもあるんだよな?」

ホログラムの少女は人間のようにわずかに首をかしげた。


「判定不明です。」

「艦橋への臨席を強く推奨します。」


ここに籠もっていても埒が明かない。隠しイベントなのか、それともシステムが壊れているのか。いずれにせよ、艦橋に行けば何かが分かるはず。


「この状況確認くらいしておくか」


ため息をついたあと、椅子からゆっくり立ち上がった。静かな司令室には空調の低い風の音だけが響いていた。


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