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Ghost Mirror ―鏡合わせの七不思議と常世の生者―  作者: 鳥路
第一章:澄んだ世界を合わせたら
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3:現に繋がる鏡合わせ

「次は、第五の七不思議「渡り廊下の抜け道」。通行禁止の四階渡り廊下が対象らしい。まあ、ゲームのコマンドみたいに「決められた方向」に「決まった歩数」歩くことで、七不思議側が指定しているエリアに跳躍できるらしい」

「ゲームってなんだ?」

「世間ズレしてるね紘一…」

「ゲームしたことないとかどこのお坊ちゃんですか…?」


「俺たちに身元聞くより、媽守先輩に身元聞いた方が見つかるんじゃないか?」

「媽守先輩も心当たりなさそうだった。紘一、カッターナイフ向けられてたし」

「不審者扱いでもそれは可哀想だろ。先端恐怖症だったら責任取れるのかあの人」

「そこまで心配してくるの、西間先輩だけな気がします」

「可哀想だと思うなら…いい加減名前を呼んでくれないか…」

「それとこれとは話は別だ」


同情はしてくれるけれど、信頼はまだまだ足りないらしい。

紘一と虎太郎。彼らを二人きりにするのはまだ危険そうだ。


「ところで、そのコマンドって分かっているの?」

「全然。存在しているって眉唾の噂だけ。それに空間の移動だけじゃないみたいなんだよな」

「移動先は、必ずしも同時刻の別空間ではないのか?」

「ああ。どこに飛ばされるか分からないし、それが必ずしも「同じ世界」とも限らないとか…。戻ってこられる保証もないかなら」

「…神隠しみたいなものか」

「確かに、この七不思議に関してはそう言えるな。試すならお前だけで試せよ不審者。四季も魚澄も巻き込むな」

「その時は書き置きを残した上で、一人で挑もう」

「…律儀だね、紘一」


やはりコマンドを使用して移動を成すには…それを知っていそうな存在に接触する必要がありそうだな。

…校内を徘徊している、自我のある存在とかに。


「次は第六の七不思議「音楽室の眠りメトロノーム」。これは元々吹奏楽部の備品で、使用したらたちまち眠ってしまう代物なんだそうだ。これを使うほど真面目に練習をしていた生徒はこのメトロノームの効果で眠り、真面目にやれと怒られたり、練習不足でコンクールの参加権を得られなかったりしたそうだ」

「努力家が認められなくなる環境…か。そのメトロノームは今、どこに」

「音楽室準備室の備品の中に、紛れ込んでいるらしいぞ…」

「管理が雑すぎる!」

「まあ、叫びたい気持ちも分かるぞ不審者…こればかりは生きている世界でも実害出たって聞くレベルの代物だからな…管理ぐらいちゃんとしておいて欲しいよな…」

「その実害が出たって噂…誰が」

「和民先輩。このメトロノームと思わしき代物で練習したらよく寝落ちするようになったらしい。今はそれを上手く利用してるっぽいけどな…」


「メトロノームを何に使っているの?」

「睡眠導入。あの人、寝落ちするようになってから部活仲間とも上手くいかなくなったとかで…同じ部活のクラスメイトからも嫌がらせとか受けていたらしくてさ…」

「…メトロノームの効果で、不真面目に見えてしまっていたということでしょうか」

「それこそ、七不思議と同じような流れ…だよね」

「そんな感じだな。詳しい話は本人から聞いた方がいいかもしれないぞ。和民先輩は音楽室にいるから」

「そっか。そうしてみるよ」

「…まあ、ほぼ寝ているから、決まった時間に行かないと会えないけどな」


彼女に話を聞く為には条件を揃えないと行けないらしい。

この環境で過ごし続けた虎太郎の情報は凄く貴重だ。これも含めて、メモに取っておこう。


「というか、虎太郎って和民先輩と会ってるの?」

「ん?ああ…たまにな。あの人、同居人が許していないだけでカップ麺大好きだから定期的に、こっそり食いに来るんだよ。なんならそのタイミングを待った方が確実だぞ。二日に一回は絶対食いに来るから」

「頻度意外と高いな…。てか、同居人…?」

「ああ。和民先輩は我持先輩と一緒にいる」

「なかなか性格キッツいですよ…和民先輩もなるべく別行動をしたいらしいとか。でも、双子の姉を放って置けないらしいです…」

「…双子?」

「両親が離婚して、それぞれの苗字になっているけど双子だって聞いたぞ」


苗字を聞いただけじゃ分からない繋がりまで教えて貰えているということは、虎太郎も魚澄も揃って和民先輩からの信頼を得ているらしい。

七不思議関係は厄介満載だが、和民先輩の情報を得られたのは大きい方だな。


「最後に。第七の七不思議「屋上前踊り場の鏡合わせ」。屋上に繋がる扉の前に姿見があるだろう?」

「ああ…確かにあるね。なんであんなところにとは思うけど」


誰も来ないような場所に飾られた鏡。

他の踊り場の鏡と相違ないそれは、別の場所に移動したっていい気がするのに。


「あの場所から鏡を動かそうとすると、不幸な事故が多発したらしくてな。あの場所から動かされないというか…」

「動かせない…が、正当表現だな」

「で、その動かせない屋上の鏡は何があるんですか?」

「七不思議の情報によると、それに何でも良いから鏡を合わせたら…「あの世」と繋がるらしい…」

「「!」」


僕と紘一は互いに顔を見合わせる。

紘一には既に、僕が七不思議を使って事件を追う様に指示されている旨を伝えている。

彼も、分かってくれたのだろう。


「…もしも「あの世」で鏡合わせをしたら、どうなるんだろうな、四季」

「…もしかしたら「この世」に繋がるかもしれないよ。紘一」

「…二人して何を?」

「紘一!ここ理科室だよね!実験に使う鏡とかあるんじゃない!?」

「探してくる!」

「お、おい四季。急にどうした」

「ごめん虎太郎。僕らちょっと行くところが出来た」

「四季、鏡を手に入れた!屋上前に向かうぞ!」

「ああ!虎太郎、魚澄、ちょっと僕ら出てくるね!」

「なんで!?」


動揺する虎太郎を背に、僕と紘一は鏡を片手に目的地である屋上前の踊り場へ向かう。


「慌ただしい人達ですね…」

「魚澄、お前まで行くの…?」

「そりゃあ行きますよ。二の舞は、ゴメンですから。西間先輩は?」

「…俺も行く。何か出来ることがあれば、したいし」

「そういうと思いました」


鏡合わせの七不思議。それを用いれば…きっと考えているとおり。

それに屋上前を根城にしている人間には心当たりがある。

鏡の前に彼女が現れ、空間が繋がるまで何度も試す必要はあるだろう。

それでも、僕らは手に入れたと考えたい。

あの世とこの世の繋がりを。

この世でしか探れない情報のパスを———!

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