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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第三章 盗賊領主はハンコウする編 「問われる是非。」


 本当に久し振りの更新となります、ちょっと?短編の怪談に寄り道してました。


 たまには現代の話を書きたかったというのが本音ですが、虚実織り交ぜて書くという良い勉強になりました♪

 更新再開しますので、今後とも宜しくお願い致します。


 深夜、突如として轟いた破砕音……駆けつけたジョーにとって、眼前に広がるその光景は考え得る最悪の事態であると云えた。


 「………。」


 夥しい傷跡を晒すボロボロの内壁、封鎖されていた窓にはぽっかりと大穴が開いてしまっている……そして何より居る筈のマッコイの姿が無い。

 足元に転がるひしゃげた鉄板の形状から、一見するとマッコイが引き剥がしたのかもしれなかったが……。


 否、今はそんな疑問にかまけている場合ではない、ジョーは瞬時に思考を切り替える、たったひとつ、この最悪の事態に対して選ぶべき最優先の行動を。


 突き動かされる様に一階のホールへジョーが駆け降りてゆくと、既に部下達が集まっていた。


 「厳戒態勢をしく……。」


 張り詰めた静寂の最中、短い余韻の声音が一層、総員の緊張感を引絞ってゆく。


 ……各々が一流の傭兵と評しても差し支えない者達である、構わず正面扉へ進んでゆくジョーの僅かな視線の動きだけで察し、彼の背中に続々と人員が付き従う。

 各々が即座に課せられた役割を理解し、これを全うする為に一分の乱れも無く淡々と動き始めたのだ。


 ジョーに続いた十人が彼の直接指揮下に入り、他の者達は集落を回る途上で併合し、約二百四十名に迄増えた各小隊の人員へ招集を掛ける。

 まだまだ時間と練度の足りない新兵をカバーしなければならないが、拠点防衛という観点から見ればフェデルは優秀で、ある程度の目処は着いている状況であった。


 サルマン邸周辺は広大な牧草地帯であるが、その外縁部は霧が年中立ちこめる深い断崖となっている……今はアドからの避難民の為に仮設の柵とテントを設置し始めていた。


 (避難キャンプでは騒ぎになってない、まさかとは思うが……。)


 普段は気性の大人しい自身の愛馬を厩舎から引き出すと、手綱から伝わってくる抵抗に嫌な感覚の片鱗を認め、フェデルへの登り道を見上げるジョー。

 思考の片隅に過ぎった確信めいた推測を確かめるべく、鐙へ飛び付く様に足を掛けて鞍に跨がった。


 ジョー以下十一名の騎馬隊が勾配のきつい斜面を駆け登り、数分でフェデルの町並みへ踏み入ると……深夜だけあり、住民は寝静まっているようだ。

 やはり騒ぎになっていない、マッコイは偶々、或いは必然的に人間を避けているのかもしれない。

 つまり理性が働いていると考えられる、そこまで思い至り、先程の推測が現実めいてきた。


 ……マッコイの目的、ジョーは部下にフェデルの警備を告げてから愛馬の横腹を鐙で叩き、単騎で駆け出す。


 脇路から主通路ヘ出て、酒場を通り越すと数十m前方、町の正門が半ば開いているのが視えた。


 「………。」


 門を出た所で突如としてジョーが手綱を引き、愛馬の首を右側ヘ振らせた。

 ……そのまま愛馬は前脚を上げ90度旋回し、荒い吐息を洩らしながら時計回りに巨体を回し始める。

 声を掛け、馬なりにペースを落とさせつつ……ジョーは苦々しく、フェデルにひとつしかない出入口、その前に掛かっていた石橋へと目を向けた。


 散発的とはいえ、グールの侵攻にもビクともしなかった頑丈な石橋が向こう側から無残に崩れてしまっている……無論グールに無理ならば、ただの人間には困難な代物であろう。

 そうなるとこの破壊を可能とする者は限られてしまう、いや、状況から判断して一人しか居ない。

 そしてその理由もジョーには思い至っていたのだろう。


 「……何故だ、何故に俺達を拒むマッコイさん!?」


 ブルルッと息を洩らす愛馬の鼻頭を擦り、思考が思わず口をついて出た……と同時に、申し訳が立たない念に駆られてしまう。

 新たな友人達から託された約束をジョーは幾度も反芻しながら唇を噛み続けた。




 ーー約八時間前。



 「……コルカドを放棄するだって!?」


 サルマン邸地下にある作戦室にて、ジョーは思わず素っ頓狂な声を上げていた。

 その場には他にサルマン、ダナン、マイケル、婆様、そしてキャサリンが卓上に広げられた地図へ視線を落としている。


 「送られてきた伝書によれば、異常な数のグールが集まって取り囲まれるのも時間の問題らしい……退路がある内に千人近くを連れて出るとある。」


 「バカなっ!?もう夕刻だぞ、夜闇の中を獰猛性の増したグールから逃げるってのか!?数百人で!!明朝になればギャンビット号で救援に行けるんだ!?」


 そうまくし立て興奮醒めやらぬ様子で舌打ちを洩らすジョー……対してサルマンは冷静を崩さず、一言「それだけ切羽詰まった事態なんだろう。」と諌める。


 書状を持って来た鷹のタイムラグを鑑みれば、既にコルカドは放棄されているだろうか。


 コルカドは元々砦として築かれた街で集落を繋ぐ交易の場でもあった。

 その故に、派遣したアライブスのメンバーはフェデル同様に防衛に徹して戦力を維持しつつ、前述通りギャンビット号を待つ手筈になっていたのだ。


 「避難民九百二十に対して護衛戦力は百と数名、確かにバカげた数字だが……ともかく救援に向かうとしたら夜間の作戦行動は必定だろうな。」


 向かうとしたら……サルマンの言葉にぴくりと眉を吊り上げる婆様、他のゴブリンたちも同様の心境なのだろう、僅かに視線が鋭さを増す。

 ジョーが眼を瞑り、天井を仰いで溜息を吐くと言い知れぬ沈黙が場に流れる。

 夜間を跨ぐ救援作戦は現実的に考えれば共倒れ、全滅すらあり得る、全員がそう理解していた。

 出来る事は持ちこたえる可能性を信じて明朝を待つしかないと……。


 しかし、そんな沈黙を破り、次に口を開いたのはダナンであった。


 「……僕たちが部隊を引き連れて避難民と合流を図った場合、撤退ルートの途上で鉢合わせたグールの群れによって挟み撃ちにされる可能性が非常に高くなりますよね。」


 「ああ、最悪、俺達とコルカド組の双方が合流前に潰走するハメになっちまう。そんな事は百も承知だ。」


 「なら少数精鋭で気づかれずにルートを抜けたらどうでしょう?」


 「少数精鋭?……救援の意味がねえし、特記戦力である婆様たちをアテにしてるんだろうが、挟撃を避けられたとしても、撤退ルートは平原地帯も通るんだ。九百人の避難民をその人員で守りきれる訳がない。」


 そう指摘し、若干呆れた表情で肩をすぼめるジョーにダナンは地図を指差して見せる……そこは撤退ルートの横に位置する峡谷地帯であった。


 「……逃げる事を捨てて、立て籠もる気か?」


 「あの峡谷は奥へ進むにつれて細く入り組んでいく構造になっています……押し寄せるグールの数も抑制出来、且つ飛行するヤツが出てきても対処し易い。ギャンビット号を待つ時間稼ぎは可能でしょう。」


 ダナンが指し示す具体的な峡谷へのルートを見やり、眉間へ皺を寄せて難色を示すジョー。

 ダナンの提案は仮定が多く、夜間作戦という圧倒的な危険リスクに見合うリターンが得られないのだ。

 無駄に戦力を削がれるだけの死にたがりの戯言、英雄症候群、論外でしかない……大局を見れば、見捨てる事になろうが朝を待つしかないだろう。


 「コルカドの地理に疎いゴブリン達を誰が先導するんだ?暗闇の中を正確に、最速で向かったとして、護衛対象が全滅してたらどうする?」


 ジョーの主張はダナンの提案を一蹴するものであった、サルマンもまた同意見なのだろう、微かに頷いていた……。

 しかし、それでもダナンは退かなかった。


 「僕がマイケルたちを先導します、……というか僕以上の適任は居ないでしょうから。」


 「ばっ、何を言ってるんだ!?」


 咄嗟に驚愕が口を突いて出てしまったサルマンの強張った表情を見据え、自身は冷静さを崩さずダナンは言葉を続ける。


 「……待つしかない現況は理解しています。ですがコルカドから報せが届いたという事は、彼等が僕達に一縷の望みを掛けているという事なんですよ?唯一で最後の希望かもしれない。グールを相手に命を切り捨てる戦い方じゃ終わらないんだ、一人でも多くを救わなきゃならんでしょ、それにーー」


 そこまで言い掛けて、ダナンは黙って聴いていたゴブリンたちへ視線を送ると、各々がにやりと笑う。


 「ーーそれに団長も言ってたじゃないですか?特記戦力だって、『僕たち』ならやれますよ。」


 「……よぉ言うた!小僧、ヌシの心意気をしかと聞いたぞ。」


 「そぉねぇ、お姉さんもヤル気にさせてもらったわぁ♪」


 「仕方ないな……二人(主にキャサリン)が行くなら俺も付き合うさ。」


 ダナンを後押しするゴブリンたちの闘志に、ジョーは息を呑んで思わず黙ってしまう。

 その肩をサルマンに『お前の負けだって』と言わんばかりに叩かれては……彼も諦めざるを得なかったのだろう。



 こうしてダナンたちを先行偵察として送り出す作戦が決まった、ジョーの心情としてはまだ渋っていたが、ダナンのグールを相手に切り捨てるだけではいけないという言葉に心を揺らされたのも事実であった。


 会議後……即座に出立の準備に取り掛かろうと作戦室を出てゆく背中を見やり、不意にジョーがキャサリンを呼び止めた。


 「余計なお節介だが、まだ陽も落ちてない、マッコイさんに声を掛けていったらどうだ。」


 「……ん?」


 「何度か部屋の前に居たのは君だろう、マッコイさんも気にしていたよ。」


 最後に『すまない』と言い添えたジョーの真摯な顔に対し、キャサリンは溜め息で間を置いてから静かに応えを紡ぐ。


 「約束した猫の小物、同じやつ……私にもくれないかしら。」


 『勿論だ』と答えるジョーに涼やかな笑顔で軽く手を振り、キャサリンは出ていくのだった……。




 つづく

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