第三章 盗賊領主はハンコウする編 「感覚の 《永遠の国にて》 ズレ」
『システム復旧及びアップデートの為の再起動が終了しました スキル使用が可能となります。』
えっ?……どう云う事……?
走馬灯が流れる最中、急に告げられたアナウンスに俺は戸惑ってしまう。
声の主はティンじゃないようだ……何となく俺がネバーランドを初めて起動した時に聞いたチュートリアルの声に似ているが。
『スキル〘伝説の樹の下で〙(トキメキ・ドリーム)の復旧が完了しました シークレットモードを終了します。』
おぉぃっ!?イキナリだなぁ、勝手に話を進めるなよ!!……ってか、あのフザけたスキル壊れてたのかよ?
会話だろ、そこは!!コミュニケーション!!か・い・わ!!ユーザーを置いてけぼりにしないで!!
『…………。』
いや黙るなよ……こっちが悪もんみてぇじゃん。
『…………。』
とまぁ……かいつまんで話すと、どうやらこの走馬灯は俺の表層意識を利用して構築されたネバーランドの一室なんだとか。
でだ、アナウンスによるとティンさん不在の間も少しずつシステム、特に『伝説の樹の下で』(トキメキ・ドリーム)のスキル部分が損傷を続けていたとの事だった。
それで自律回復機能が俺の与り知らぬ所で一部のスキル機能、主に好感度BGMをカットしていたらしい。
具体的にはアドの時点からカットしていたんだとか……そこで、ちょっと思う所があって質問してみたら案の定だった。
あの時、愉快で確信犯的なオネーサンが俺のシステムへ無理矢理に介入してきた事がスキル損傷のそもそもの原因、元凶だったのだ。
正確に言えばスキル自体は問題無い、俺の根源的能力だからだ、問題はスキルを向上させる目的で繋がれた後付のネバーランドとのバイパス部分……おかげでティンの復旧時間にまで影響を及ぼす結果となった。
いやはや、今迄気付かなかった俺も相当である……確かに最近、好感度BGM聞かないなぁとは思ってたが、ほとんど変動の少ない仲間内と接するだけだったし、まぁ色々と言い訳だわ。
因みにあまり変動しないと思っていた仲間の好感度はと言うと……悪い意味で激変していた。
MAX値のロジャーは変わらないが、イチとキャサリンの好感度が+域の下位まで下がっていたのだよ。
ただ一番好感度がただ滑りしていると思われたミシェルはあまり変動していなかったが……元々低かったし、そんなものだろう。
それで、すっかり緊張感の萎えた俺に淡々と声は告げる。
『…………。』
復旧のタイミングが余りに不自然過ぎる……そんな俺の疑問を氷解させるのに充分な説明に思わず絶句してしまったのだが、思考がダイレクトに伝わるこの空間では無意味だろう。
はてさて肝心の説明だが、俺の身体へ新たに『気』の概念が取り込まれたとアナウンスは告げた。
気の概念?と新たな疑問符が尾を引いてしまうが、すぐに思い至った。
あのジィさんのデコピンのせいだったんだな……ネバーランドのシステムですら知らなかった未知の概念を身体に注入され、一時的に生命活動へ支障が生じていたらしい。
生命エネルギーが循環する道、それをジィさんの気が分断し、循環が断たれた事で内臓機能を低下、壊死させるまであったという。
しかし結果だけ見れば、分断された俺の気が双方向からジィさんの障壁を攻撃し、取り込んだ事でそれら諸々の概念を情報としてネバーランドへフィードバックしたんだろう。
その辺りの説明は俺には難解過ぎて判らなかったが、根源へ至る真理とか言っていた……気がする。
ともかく自律回復機能が飛躍的に向上したらしいよ、多分であるが。
『………。』
嫌な沈黙である……ホントに理解してる?みたいな意図を感じるよ君ぃ。
まぁ良い、ではそろそろ動くとしよう♪はっきり言ってワクワクである。
◆
◇
カチンッ♪カチンッ♪カチンッ♪
咥えタバコに火を灯し、大口で上空へ吐き捨てるとようやく華火は背後に気付いたようだ……もう遅いが。
『サポートファミリア復旧まで……3……2……1……0。』
カウントが終わった瞬間、俺は思わず呟いていた。
「よぉ、やっとお目覚めかい……相棒。」
つづく




