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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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デストロイ外伝 『フィッシャーマンズ ライジング』 決戦


 鳥龍魔獣エピオン種


 体長十数m級、主に熱帯雨林に生息し、成体から三段階の成長を遂げる。


 非常に好戦的な性格だが、格下の魔獣を狩猟以外で襲う事はなく、一部の地域では信仰の対象とされている。

 個体数は少ないが寿命は数千年とも云われており、段階を踏んでの成長も数百年単位で行われるらしい。


 特徴として、靭やかに硬質化した翼鱗を放ち、頭部にある左右四つの孔を有する振動器官によって体内で生成された可燃性ガスを圧縮放出して、嘴を火打ち石の様に叩き合わせる事で火球を放つ。


 魔獣同士の開戦の口火は、文字通りエピオン·ジャックの火球によって切られた。

 闘争本能に従い徹底して遠距離からの火球攻撃を行なうエピオンに対し、ギガントプロスは防御を固めつつ、音速ソニック攻撃を放とうと顎を開く。

……がしかし、エピオンがそれを許す筈もない。


 火球を受け切り、ギガントプロスが防御の隙間から空気の射線を覗かせた時には既にエピオンの姿は無く、遥か上空から頭部の共振器官を震わせ、最大火球を眼下へ放つ!!


 完全死角からの最大火力、純粋なる野生が紡ぎ出した一撃は確かにギガントプロスの頭上付近で爆散し、その右腕を吹き飛ばした。


 ……しかしそこから数瞬の間、エピオンは上空で敵を睨みつけ、動かない。

 いや、動けなかったと言う方が正しい。

 エピオンの本能が今の攻防に違和感を訴えてきたからだ。

 ……が、即座に右腕を再生させる姿を眼にし、回復の隙を与える事こそ、死に繋がると認識したエピオンは攻撃を再開する。

 火力で押し切る力業を選んだのだ。


 その戦略、否、野生由来の直感は概ね正しい……。


 そこからの攻防はまさしく激戦となった。


 制空権を握るエピオンが速度を如何なく発揮し、ギガントプロスを翻弄しながら火球によって再生する間を与えず腐肉を削いでゆく。

 最早ジルコニアン·イエティをベースとした白銀の体毛は見る影もなく、骨身を露出させ、動きが緩慢となっていくギガントプロスに比べ、エピオンもまた振動器官を他に前例が無い程に酷使した事により凄まじい疲弊を強いられていた。


 ……地上最大級の魔獣による消耗戦、音を上げた方が敗北する、そう思われた。

 少なくとも当事者であるエピオンはそう判断していただろう。

 だがこの時、エピオンは増大する違和感、言い換えれば本能に根差した危機感に困惑を濃くしていたのだ。


 戦闘開始から約五分、斯くして異変が露呈する。


 ついに動きを止め、焼け焦げた腐肉が骨身に張り付き、煙りを数条上げるギガントプロスは胴体部以外、その大半の骨格を露わにした。

 その瞬間を最大の好機と睨んだエピオンは持てる全ての力を振り絞り、急旋回からトドメの火球を撃ち放つ!!


 まるで勝利を確信したかの様に翼を広げ、高らかに鳴くエピオン·ジャック。


 ……が刹那、エピオンの勝鬨はその半ばで途絶えてしまう。


 渾身の力を込めた一撃はギガントプロスの胸部へ直撃し、四散した……確かに直撃せしめたのだ。

 しかし、胸部の腐肉は焼け爛れる所か爆ぜてもいない……ただ、醜悪なる貌が更に歪み、明確な悪意の嘲笑に見据えられた瞬間、エピオンの全身へ戦慄が駆け巡った。


 そんなエピオンへ構わず、ギガントプロスは顎を開き……否、下顎を中心で分割し、左右へと花弁の様に展開してゆく。

 エピオンも異変に我に返り、速度で勝る火球を重ねてギガントプロスを阻止せんと動く。


 奇しくも互いの動作が鏡合わせの様に合致し、破壊の力が解き放たれる!!


 ……結果、撃ち合いの勝者はギガントプロスであった。

 速度で圧倒出来ている、撃ち合いとなれば並行して回避すら容易であると直感していたエピオンの眼前で、更に言えば火球を放つ刹那にそれは既に解き放たれていた。


 空気を射線状まで圧縮し、放たれれば周辺数kmまでも衝撃波の影響を及ぼす超音速咆……ただし、撃ち放つまでに多大な隙を生じさせる筈である。

 否、それ自体は超音速の速度域へ達していなかった。

 しかし発射までの溜めもなく、何より放たれたそれはギガントプロスの口径に沿って収束された『熱線』であったのだ。


 エピオンにとって何より幸運だったのは、火球の撃ち出しに間に合った事だろうか……。


 間近で起きるであろう大爆発に巻き込まれる、そう直感的に悟ったエピオンは咄嗟に四肢を広げ、発生した衝撃波を敢えて全身で受け止める事によって爆発の直撃圏内から逃れるという暴挙とも云える賭けにでた。


 ……結果として、エピオンは賭けに勝つ。


 衝撃波に吹き飛ばされ森林へ墜落するも、即座に飛び上がって再びギガントプロスに相対する……か細い可能性を手繰り寄せ、尚、余りに手痛い代償を払って。


 最早、エピオン·ジャックは満身創痍であった。


 それでも時を置かず、敵に相対したのは強者としての誇りであろうか?


 嘴を歪めて、『カッカッ……』と二回鳴らし、ギガントプロスを挑発するエピオン。


 先程の熱線を間近で目撃し、魔獣エピオン·ジャックは自身が感じた違和感の正体を察していた。

 ギガントプロスが放った熱線が……己の火球と同質のものであると。

 そして体感以上に自身が疲弊していたという事実、知識や理屈ではなく本能が導いた答えは吸収エナジードレインであった。


 八方塞がり、攻撃手段どころか戦闘継続すら死に直結する……ならば何故に相対し挑発したのか?


 「無知無謀、ましてや意地じゃないよね。」


 突如として呟かれた言葉に驚愕し、首を回して自身の背中を凝視するエピオン……其処には決着を付けねばならない忌々しい敵が乗っていた。

 浄火の勇者シオリ·デストロイ·トラビス……。


 「………!?」


 まるで『何故お前が乗っている!?降りろ。』と言わんばかりに目くじらを立てて、ギャアギャアと喚き散らすエピオン。


 しかしそんな一人と一体を切迫した現実へと引き戻すかの様に、ギガントプロスが全身を震わせて威嚇の絶叫を轟かせた。


 「……今は私に付き合えよ。」


 呟きと共に、シオリは銃口をギガントプロスへと静かに向けて見せる。

 ……その所作で充分であったのだろう。


 一度、嘴を叩き合わせて、鼻息を荒く噴射すると……エピオンはギガントプロスへと向き直った。


 ーー次の瞬間、勇者の蒼炎と純粋なる野生の本能が渾然一体となり、ギガントプロスを見据えて猛り狂う。


 だがギガントプロスもまた、更なる変貌を遂げようとしていた。



 つづく

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