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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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デストロイ外伝 『フィッシャーマンズ ライジング』慟哭 シオリside


 ◆

 ◇

 ◇


 「………。」


 通常空間に復帰して一時間近く……シオリ達は捜索に戻ってきていた登山隊と合流し、犬艝で麓を下っていた。


 瞳を閉じて口をつぐむシオリの様子が気になったのか、バララは率直な疑問を言葉にして問う……。


 「本当は何があった?」


 「……本当とは?」


 「ガイドに確認した、俺達は約三日間も遭難していたらしい。だが記憶があやふやなのは不自然じゃないか。」


 「バララは高山病で意識が混濁していたからな、無理もないだろう。」


 ……高山病、確かに麓であっても標高は高いのだから最もな理由ではある、しかしバララは自身の意識に言い知れない霧の様なものが掛かっている事に対し、どうしても無視出来ない不安を抱えていた。


 「微かな記憶だが、俺はデスサンデーで子供の声を聞いた気がする……。」


 (記憶が残っていた?……精神作用の魔法に高い抵抗力があるか、或いはバララも私と同様の胸騒ぎを感じているかだな……。)


 そう思いながら、しかしそのまま異空間にまつわる因果の全てを忘れた方がいい、少なくとも……と思考を紡いだ所で、シオリはそれ以上の堂々巡りを止める事にした。


 あの時、ホランドという男の本質と望みに触れた人間として……。


 それでも止めどなく流れる景色へ微かに嫌気が差したのか、感情にフタをしようとシオリは遥か遠くの曇天を見据えたが、思わず唇を噛んでしまう。


 ……本当に遠く小さく、それは何とか視認出来る程であったが、確かに雲の切れ間をその鳥龍は飛んでいた。

 悠々と白線が尾を引いて……まるで今の自分に対する皮肉だと彼女の眼には映ったのだろう。


 「あいつ……やっぱり生きてたか。」


 ふとそんな事を呟いた時、指先が冷えて痺れてきているのに気づき、無造作に法衣のポケットへ手を差し入れる……と、何かに触れた。


 シオリが取り出すとそれは、赤色のクレヨンであった。


 (これは……ガトの。)


 おそらく悪戯心で入れたのだろう、子供らしく乱雑に扱われたそのクレヨンは短く、頭が平たくなっていた。


 ーーその時だった。


 腰に装着されたホルダーから目映い光が放たれ……そして。


 (たすけて……お姉……ちゃん。)


 「停めろ!!」


 期せずして発せられたシオリの怒号に、狼犬を操っていたガイドは慌てて手綱を引き絞る。

 ーー雪を舞い上げ、緩やかな斜面へ不恰好な形で停まった艝から飛び降りて、シオリはデスサンデーの方角を睨みつけていた。


 「今のは……俺にも聞こえた。」


 事態を飲み込めず、だがシオリに追随する様に降り立ったバララは彼女の背中へそう問い掛けた。


 「間違いない、あの子の、ガーラントの声だった。」


 告げられたその名前を聞いた刹那、軋む様な頭痛と共にバララの脳裏で断片的な記憶が再生されてゆく。


 「あれは……やはり。」


 ……背後からの声に、シオリは苦々しくも確信を得る。

 異空間を眼にした二人が聞こえた以上、空耳などではない。


 (セバスチャン、今の現象は……?)


 『確証がありません。』


 (推測でいい、話しなさい!!)


 『直前にアストラルマテリアの反応を検知しました……おそらくは感応波の増幅による受信ではないかと。』


 ホルダーから反応のあった薬莢形の容器を取り出すと、既にその輝きは失われている……。


 増大する胸騒ぎに震える手を握り締めるシオリ。


 理解が追いつかない、確かめる術もない……だがガトの声は紛れもなく苦しんでいる様だった。

 間違いなく何か異変が起きている。


 やがて停滞する沈黙に歯噛みしそうになった次の瞬間。


 「子供が助けを求めてる、動くのに理由がいるか?」


 バララの静かな一喝がシオリの背中へ叩きつけられ、そして。


 (アルカディア起動!!)


 ーー彼女に行動を促した。


 切り替わる仮想空間、だがそこは彼女の部屋ではなく、初期に設定されていた宇宙空間に光のグリッドが引かれた空間であった。

 洗練された物腰で一礼するセバスチャンへシオリの激が飛ぶ。


 「何でもいい、あの異空間へ行く方法を導き出せ。」


 現実世界の時を限りなく停止状態に近づけた仮想世界で、転移方法を探るしかないとの判断だった。

 まさに彼女にしか行えない選択であろう……そんなシオリに対して、セバスチャンが発した言葉は彼女にとって想定外のものとなる。


 『転移は既に可能です……お嬢様とドーン氏の転移の際 通常空間からアクセスする者達の転移波形も観測していましたので。』


 アクセスする者達……そのワードに対し、一瞬何を言っているのかシオリは理解出来なかった。


 「どう言う事だ!?」


 『質問の意図が判りません。』


 「侵入者の存在に気付いていたのかと聞いている!!」


 声を荒げるシオリとは対極に何事もなく静かに微笑んで肯定の意を示すセバスチャン。

 だがその微笑みは酷く人工的なものに映る。


 『気付いておりました……転移方法ですが おそらく行先に目印(マーカー)が付けられていたと思われます。』


 淡々と機械の様に、尚も言葉を発するセバスチャンの顔をシオリは無性に殴りつけたくなった。

 握りしめた拳を震わせ、振り上げようとした……が、その時、彼女の思考に衝撃が駆け巡る!


 思い至ってしまった……あの時、あの異空間において異物であり、目印となるもの……それはひとつしかない。


 「私達だったのか……。」


 力なく呟かれたその言葉に……期せずして追い討ちを掛ける様に、セバスチャンは同意を示す。


 と同時、明らかとなった事実の背後に隠れたもうひとつの事実に、シオリは苦々しく、掠れがちに盟友の名を口にしていた。


 ◆

 ◆

 ◇


 決意と共に現実へ戻り、シオリは振り返ってバララへ頷く。


 「戻るわよ……!!」


 そして艝から徐にトランクケースを降ろすと、厳重に施された封印を解き……中から取り出したのは漆黒の銃身にゴールドのラインが入った二丁拳銃であった。


 ーードミニオン・ギルド兵器開発部門が浄火の勇者専用に開発した、排莢と次弾装填の自動化を実現、シングルマガジンを採用し特殊弾に耐えうる強度を目指した魔石内蔵型第二世代試作拳銃……その名も『迅雷(神螺威)Dー44』


 (やはりリボルバーよりも不慣れだな……。)


 口中で音に為らぬ舌打ちをしながら、両手へ力を込める……と、シオリの瞳に蒼い炎が静かに揺らめいていた。



 つづく

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