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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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デストロイ外伝 『フィッシャーマンズ ライジング』⑥

風邪と厨二を拗らせた……頭がボーとしてる。


何か特殊能力でも目覚めないかなぁ。


もしくはゴミ捨て場で人型のパソコンでも落ちてねーかな……なんつって、駄目だ、頭痛くなってきた。


遠く……吹雪の向こうの中空にて、突如として激しく光が迸り直下の魔獣の姿を小さく照らし出す。


「……あれは!?」


生き残った狼犬を再編し、最低限の物資を(そり)へ積み込みながら、バララはその光景を眼にして驚嘆から上ずった声を洩らしてしまう。


(一瞬だが、あれは間違いなくエピオン種だった。熱帯の化物が何故雪山に出現したんだ?……いや、それよりもーー)


その刹那、バララは足下で倒れていたトランクケースへ視線を落とす。


おそらく、戦域が自分達から除々にではあるが逸れていっている……吹雪により距離感が掴みにくい状況下に置かれながらも、先程の閃光でバララは事態をほぼ把握するに至っていた。


(あの化物をトラビス嬢が誘導しているのか……。)


ランクAAーー大陸南部へ分布する熱帯雨林において、そのランクの魔獣は生態系の上位に食い込む力を持つ。

エピオン種は元々繁殖頻度の低い魔獣であり、個体数こそ少ないが強者を好む獰猛さも相まって、生物学者の中にはエピオン種が自然界における最強の一角であると断言する声が挙がる程だ。


またエピオン種は成体になってから更に三段階の変態を遂げる事が確認されており、一段階変態するだけでもその脅威度は激変する。


そんな魔獣を相手取り、あまつさえイニシアティブを握って戦闘を継続しているのが華奢に見える女性だとは信じ難いであろう。

まさに勇者の御業、奇跡としか形容出来ない……がしかし、本当にそうなのか?とバララは沸き上がる懸念を無視出来ずにトランクへ手を延ばしていた。



「………。」


無造作に手を広げ、挑発的に近づくシオリを眼下で睨みつけて……エピオンは僅かにトサカを広げる。


互いの距離は約10m程だろうか、純粋な野性本能を凝縮したかの様な瞳からは一切の感情が窺えない。


(近接戦闘は愚策、この距離感が妥当ね、あとはーー)


次の瞬間、不敵な笑みを崩さずに左手をエピオンへかざして火炎を放つ!


……が、炎の覇者と異名をとる程の魔獣であるエピオンは臆する素振りさえみせずに踏み込み、その翼腕で火炎を振り払いつつ逆に翼鱗を飛ばしてきた。


「………!?」


逡巡を許さぬ反撃にシオリは不様に仰け反り、間一髪で翼鱗を回避する事に成功するが、同時に背筋へ駆け上がる悪寒に苛まれてしまう。

直後、尻餅をつく彼女の後方で約2mはあろう翼鱗が数枚、地表へ突き刺さっていた。


……まるで彼女を遮る様に佇む翼鱗を一瞬だけ一瞥し、シオリはエピオンへと視線を戻しつつ、ゆっくりと立ち上がる。


微動だにせず、シオリへ向かい尚も嘴を叩き合わせて火花を散らすエピオン……その様子を眼にし、シオリは理解した。


あの翼鱗は自分へ向けた魔獣からの意思表示だと。


《外野は関係ねぇ、遊ぼうぜ……。》


(こっちの思惑を見透かされたか……本能だけの化物だと侮っていたな。)


……振り返ればシオリによる初手の火炎放射呪文、それ自体はエピオンにダメージを負わせるためのものではなく、無詠唱による威力で通じるかを見極める捨て石に過ぎなかった。

当たる事を期待した訳でもない、寧ろ警戒や怯みと言った隙を引き出したかったのだ。

対してエピオンは攻撃を合わせてきた……否、ただの攻撃ではない。

火炎を振り払うという行動を隠れ蓑として翼鱗を飛ばしてきた。

そしてその翼鱗攻撃自体もまたブラフであったとシオリは感じている……何故ならばそれだけエピオンの攻撃は絶好のタイミングであったからだ。

もし、たら、れば、の仮定の話は戦いの純度を下げる行為でしかない。

されど……もし、エピオンが更に踏み込みを鋭くし、必殺の一撃を放っていたなら、シオリは無惨な死を遂げていたであろう。


つまりは意思表示のための虚仮脅し……シオリの意図を読み、彼女の捨て石の一手に虚仮脅しを絶妙のカウンターで合わせるという皮肉をエピオンは敢行して見せたのだ。


おそらくエピオン・ジャックは知性を有している……それが本能に根差した当勘の鋭さであったとしても、いや、だからこそ、戦うという行為における自負と誇りを感じさせたのだろう。

先程の攻防を経て、シオリは確信を以てその結論に至っていた。


「………止めたわ。」


不意にシオリがそう呟いた瞬間ーーエピオンの鱗がにわかに逆立った。


吹雪だけが音を立て、吹き荒れる最中で………両者の間を吹雪が避ける様に通り過ぎてゆく。

否、通り過ぎたのではない、両者の放つ闘争本能が激突する事で凄まじい熱を発生させて吹雪を溶かす領域を形成していたのだ。


「言葉が通じるとは思わないけど……ひとつだけ言わせて。」


「………。」


「貴方を戦士として、私の全力で屠る!!」


その瞬間、一歩前へ踏み込んだシオリに呼応して、彼女の闘気が更に迸りエピオンのそれを気圧し始める……。


そしてエピオンもまた、本能からの雄叫びを上げてシオリに応えた。


斯くして、誇りを懸けた全力戦闘が始まるーー。



つづく

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