第二章 領主編 『最後の防衛線に集う者達』
早い更新となりました……ってか御時世ですな、会社を二週間休む事になりまして、暇してます。
私自身は感染とかではないんですがね。
「よってお前ら……全員、クビっ!!自警団は解散!!」
BooBoo♪ BooBoo♪ BooBoo♪ パッシィンン!!ヒッヒィィーン!!
沸き上がる怒号に混ざり何時ものBGMが鳴り響く……ちょっと待て、今、聞き捨てならねぇ音が混ざってなかったか!?
思わず眼下のあらくれ共の顔色を見回してしまった。
「モンテ殿、どうかなさいましたか?」
「いや……気にしないでくれ。」
咳払いをひとつし、気分を切り換えて改めて皆へ言葉を紡ぐ。
「黙れっ!!……俺の話しを聴かねぇのはテメェらの勝手だ!!好きにしろ。
だが例え過酷で残酷だとしても、事実を知りたいと願うなら態度で示せ!!」
アオハル時代に培った、腹から声を出すやり方であらくれ共を一喝してみた……ちったぁマシに話せる様な状況になればいいが。
「……まずはモンテの話しを聴いてから、各々判断して欲しい。」
ジョーからの助け舟もあってか、渋々、あるいは火種が燻る様に場が沈静化してゆく……。
落ち着くのを待ち、最初にウェストバークに現状、数万単位のグールがさ迷っている事、そしてそれらは何者かの意志と意図を以て動いているだろう事実を告げた。
「……。」 「……。」
俺の説明を聞く皆の反応は様々だったが、一様に『何者かの意志』という部分には否定的だった……当然だわな、自分達の故郷がそんなエグい奴等に狙われているなんて、信じたくないだろう。
「奴等は吸血鬼と恐らくリッチが使役するグールの混合群だろう……その証拠に俺が遭遇した群れの中には朝陽を嫌って逃げるグールが居た。」
ティンの説明によれば、吸血鬼とリッチという出自の違うグールが行動を共にする事はない。
それはこの世界の常識であるらしい……だが常識が事実として覆される時、そこには何者かの意志が必ず介在している、偶然等ない。
「最後にもうひとつ、俺の言葉を信じざるを得なくなる事実を諸君らに告げよう……この地方に在るフェデルを含めた四つの町、それ以外の集落は滅びた。」
余りに残酷な宣告に、どよめきが起きる……何人かその場に崩れ落ちる者達が居たが、どうやら滅びた集落出身なのだそうだ。
現在残されているのはフェデル、コルカド、アド、そしてナボル村か……村と言っても小規模な集落ではなくフェデルに次ぐ人口数らしいから、町と言っても差し支えないらしい。
さて皆の衆の反応は如何に……っと暫く眺めていたが、どよめきが止む気配がないな。
それ所か収拾が着かなくなりそうな程に非難の声が上がってやがる。
主に俺に対するものが多かったが、中には自分達に情報を伏せていたジョーと町長に対する声も散見された。
ホール内を見回しつつ、呆れて欠伸を洩らした俺はつい耐えきれず、階段に腰掛けてタバコを取り出し点ける……。
カチン♪カチン♪カチン♪
焦れってぇ奴等に苛立ちを示す様に、何度もジッポを弾きながら煙を吐き掛けてやった。
次の瞬間、ブチ切れた数人が当然ながら俺へ飛び掛かってきた……だがジョーの制止より速く相棒の声が届く。
『回避パターン標示。』
刹那、地面に幾重の光のラインが標示され、俺はそれに沿う形で疾る!!
刹那……そう刹那だ……俺の眼には今、襲い来る四人の動作が文字通りスローモーションで見えていた。
おまけに奴等の持つ武器が辿るだろう軌道まで視界に標示されているのだ、回避と迎撃を同時にこなす事なんざ造作もない。
凄まじい衝撃を伴い、一瞬で吹き飛ばされて壁に激突する三人……残りの一人は俺のアイアンクローで顔面を軋ませながら 跪づいている。
ギリギリギリギリギリギリギリギリッ!!
「ん?……どうしたもっと抵抗してみせろよ。」
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリッ---!!
「………。」
うん?……失禁して気を失なったか、しょうがないな。
そっと手を離し、喰わえタバコを持ち変える。
さて、解説しなければなるまい……俺が今使った能力、その正体だが実はスキルではない。
正確には全てティンさんのサポートによるものだ。
ティンさんったら、復帰早々にアーガマから譲渡されたマスター権限を行使し、事もあろうかネバーランドのシステムを一部とはいえ解析しやがった。
結果、なんと俺の周囲の時間を操作するという荒業を可能としたのだ。
無論それには制限が在る、操作出来る時間は最大三秒、六十倍まで引き延ばして時を停滞させるのみである。
因みに、武器の軌道云々はティンさんの演算による予測で標示していただけだ。
しかしそれにしても、ただぶん殴っただけなのに派手に吹っ飛び過ぎじゃない?
『時を停滞させた分、マスター自身の時は引き換えとして加速状態となります。 ……つまり、停滞時間に囚われた標的への攻撃は引き延ばした差倍数だけ加速ダメージが上乗せされるのです。』
ま、マジか……加速って言ってたけど、じゃあ今、周囲の目からは……。
『不届き者達をマスターが眼にも止まらぬ速さで蹴散らした……様に見える事でしょう☆』
おい、やり過ぎじゃね?何だよその☆は……俺もさっき語尾に付けたけどさ……殺しちまったんじゃねーか?
『大丈夫ですよ♪虫の息くらいには調節しておきました。』
恐ろしい……もしかしたら、俺はとんでもない悪魔を生んでしまったかもしれない。
「も、モンテ殿……?」
やべ、サルマンさんが青ざめた顔でこっちを視てきた。
改めて周囲を見回すと、何時の間にか非難の嵐がベタ凪ぎになってやがる……うん、そりゃあドン引きするわな、まぁ好都合だ。
「何時までも愚痴愚痴、愚痴愚痴と現実逃避の愚図共がっ!!ブチ殺すぞっ!!」
「……!?」 「……!?」
唖然とする者達へ向け、これ見よがしに深呼吸して息を溜める……そして。
「現状が誰かを非難するだけで変わると思うなっ!!そんな段階はとっくに終わってんだよ……此所っ!!まさに此所が最終防衛線だ!!逃げたきゃみんな見捨てて逃げろ!!だが大切な故郷を、大切な人間を守りてぇなら……辛くても、苦しくてもっ……もう眼を背けるなっ!!」
「モンテ殿……。」
「だから解散だ……解散して今、この一時は眼を瞑る。 逃げたい人は逃げていいよ、無理強いはしない……生き延びたいって想いを非難はしねぇさ、だから、それでも残ってくれた人間だけで始めるんだ。」
携帯灰皿に吸殻を捩じ込み、二本目に火を点けて後ろを向く……これを吸い終わったなら振り返る、それまでに一人一人が選択を終えろ。
そう告げて、沈黙を守る事にした。
何度、煙を無為に吐き出しただろうか……俺の視界にはサルマン町長とジョーが映るが、敢えてその表情を視る事をしなかった。
いや、視れなかったと形容するべきだろうか。
つくづく自分の甘さに反吐が出る……この期に及んで『逃げていい』なんざどうかしている。
だがグールの軍勢を相手どり、こちらはかすり傷すら許されない……もし仲間が傷を負ってしまったら、どんなに大切な身内であろうとも殺さなければならねぇ。
一瞬の迷いさえ在っちゃいけないんだ、そういう覚悟を自分にも仲間にも強いらなければ勝てない、それは一番俺が身に染みてる。
その時、遠くで邸の扉の開く音がした……。
理解しているよ……俺は所詮、彼等にとって余所者だ。
大した繋がりを持たないが故に割り切って、すんなりと俺は手を汚すだろう。
だからこそ、彼等が被る痛みと強いる覚悟は俺の比じゃない……その負い目がこの甘さを呼んだ。
先頭に起つなら、もうそんな戯れ言は二度と思わない……グールは一匹残らず駆逐する……。
最後の一吸いとばかりに、フィルター近くまで一気に吸い切って、吸殻を携帯灰皿へブチ込む。
直ぐに振り返らず、暫し瞼を閉じたのは甘さを切り捨てるためのルーティン……だと思う事にした。
……もう充分だろう、意を決して振り返る。
「………。」
そこには総勢五十六名の傭兵が残ってくれていた……ミシェルもその一人だ。
『離反者は二十名になります。』
いいさ……離れていった者を数えるなよティン。
改めてみんなの面構えを見回す、各々の思惑があるのか……一癖も二癖も有りそうだ。
ん?俺がぶっ飛ばした奴等も残ってんのか、これは意外だった。
「まずは礼を言う……。」
俺は深く頭を下げ、沈黙を以て礼を返してから顔を再び上げる……そして。
「テメェらっ!!此所からだっ!!此所から反撃を始める!!」
瞬間、俺へ応える様に拳を突き上げ、気迫を込めて叫ぶ精鋭達……いや、まだ精鋭とは言えない烏合の衆だろう。
だが、敢えて精鋭と言おう。
俺達がウェストバークにおける絶対最終防衛線なのだから。
「ジョー、小隊の編成は任せた!まずは他の町に赴き町長へ現状報告、協力者を募れ!!」
「了解した、既に目星を付けた傭兵団がある。」
「サルマン町長は引き続きフェデルを掌握!情報を開示するか統制するかは任せた、パニックだけは絶対に避けろ!!」
「御意!フェデル残留隊は私の指揮下に、各町長へ私からの書簡を持たせましょうぞ、これで話しが通じやすくなる。」
「俺は数名を引き連れ、予定通りにナボルへ向かう。」
「モンテ殿、その前に我々の呼称はどうされますか?」
呼称?……不意に問われ、思わず一瞬、固まってしまった。
「ペク・トー団じゃ駄目か!?」
「駄目でしょう……。」
あれっ?何か……ジョーが何とも言えない表情なんだが、みんなもちょっと複雑そうな面してんな。
後でティンさんに聞いたら、俺の世界でのピエロとか、クラウンの意味なんだそうだ……何それ、サーカスじゃん。
しかし呼称名か……考えてなかったが、ざっくりと単純で不死者に対するアンチとなるものが良いか。
「………。」 「モンテ?」
「決めた……俺達はこれより『アライブズ』と名乗るぞ。」
「あ、あらいぶず?何処の地方の言葉ですか?」
「意味は『生還者達』……俺の世界の言葉さ。」
「世界?地方や国ではなくですか?」
腑に落ちないといった表情のサルマン町長の肩をバンバン叩き、高笑いで誤魔化しておいた。
アライブズ……これより俺と共に、文字通り最後まで戦い抜いてゆく事になる俺の私兵団。
まさにその誕生の瞬間だった。
つづく
話し自体はまったく進んでねぇ……叫び回になってしまった。




