第二章 領主編 『思い掛けない結託』
久し振りに1週間で書けた……このままペースを上げていけるんじゃね?
とか妄想する今日この頃ですわ。
「おい……本当に大丈夫か?」
まだボンヤリとしている俺の傍らでジョーが顔を覗き込んでくる。
焦点の確認をするために人指し指を眼前で左右に動かして、ちょっとウザいよ。
「ああ問題ない、それよか俺は何分くらい意識を失なってた?」
「……4~5分って所だな。」
「ふーん、ありがとう傷の治療をしてくれて、礼を言うよ。」
「構わん、大体の事情は聞いた(それにほぼ何もしてないしな)。」
まだ倦怠感が残っていたが、爺さんの肩を借りて何とか立ち上がる。
どうやら俺が倒れている間に爺さんが事情を説明し、俺の治療を嘆願……ってか捲し立てていたらしい。
後で改めて礼を言っておこう。
さて、現実に戻って単刀直入で『用事』を済ませてもいいが、それだと恩人の爺さんがとばっちりを受ける可能性があるな……ここは様子見がてら気になった事を探ってみるか。
「ジョーさん、今までの失礼な振る舞いを詫びるよ、すまなかった。」
「ん……ジョーでいい、いきなり何だ?まぁ元はと言えばうちのバカ共が原因だし気にするな。」
「それで一応、そこに居るミシェルからは爺さんの此所での身の安全は保証してもらっているんだけど、出来ればそれを『今後も』保証してくれない?」
俺のお願いの言葉に対し、大仰に眉をひそめて見せるジョー。
「……お前さん、最初から俺に団員達の手綱を締めさせるのが目的だったのか? だがその言い方だと自分の身の安全は頭数に入ってないようだが。」
「うーん、巻き込みたくないってのが本音かな……それにそちらにも面子がある以上、そこまで都合の良いお願いは出来ないよ。」
(巻き込みたくない……裏を返せば事を構える覚悟がある、いや、それだけじゃないな、コイツ。)
……ティン、ここまでで反応は出たか?
『対象であるジョーの脈拍及び心拍数に大きな変化は認められません……。』
つまり、必要以上に面子に固執はしていない……のか?もしくは俺のつつき具合が足りていないか、どっちにしても冷静なタイプなのは違いない。
「じゃあ爺さんが言うように、このフェデルの町が閑散としてるのは何でだい?さっきのあんたの言動から、住民への配慮を払っているようにも思えるんだけど?」
「質問が多いな、その答えを引き出したかったらまず、君の素性を明かすのがフェアってもんだぜ♪」
素性か……初めて聞かれたな、流石に異世界から神サマーに選ばれて来た転生者なんて、ネタも甚だしい話は出来ないわ。
「もう一度聞くぜ、お前は何者なんだ?」
「モンテ・クリストフ・モンキーパイソン……このウェストバーク地方の新しい領主だよ。」
その瞬間、場にどよめきが巻き起こった……ジョーはおろかミシェルやあらくれ共まで表情を変え、爺さんに至ってはまたも放心状態で呆けている始末だ。
「兄ちゃん……あんた、領主様だったのかい?」
「誰か、町長を連れてこい!」
ミシェルがそう叫ぶと団員の一人が血相を変えて二階へ駆け上がってゆく……するとものの五分程で団員に脇を掴まれ、小柄な禿げオヤジが脂汗を流しながら降りてきた。
「何をするっ!?私は忙しいんだ!!お前らは私の貴重な時間まで奪う気かっ!!」
何か如何にもなオッサンだな……ちょっと苦手なタイプだ。
「悪いね町長、是非確認したい案件が発生したんでね。」
軽快な口調で町長を宥めつつ、ジョーが俺の名前を聞いてみる……まだ拝命してから日が浅いからな、通達されてなかったら面倒だわ。
「……確かに本国からの通達書類にその名前が明記されていたが?それがどうしたと言うのかね。」
「……その新しい領主が彼みたいですよ。」
「どうも~照会ありがとうございますぅ♪モンテちゃんだよ、てへっ☆」
俺のナイス言動に更に脂汗を噴き出させ、卒倒しそうになる町長……だが失神なんざ許す訳ねーじゃん、即座に首根っこに腕を回してホールドしてやった。
「町~長~♪随分と羽振りが良いみたいだね(笑)……魔族領からの被害とバルローから予算をケチられてる筈なのにどうしてかな?どんな錬金術使ったの?おせーてよぅ☆」
「あ、あの……これはその、誤解なんです……。」
「誤解?勘違いするなよ……俺はあんたを買っているんだからさ。行政の目の届きにくいこの地方で私腹を肥やすなんざ、確信犯だろ?ただ今後は周りにもちょっとその利益を分配して欲しいだけなんだ……なっ、吐い(ゲロ)しちまえ。」
厭らしい口調で囁きつつ、町長自身のネクタイで脂汗を拭ってやった……。
すると、しばらくしてその様子を訝しげに見守っていたジョーが溜め息をついて言葉を接ぐ。
「ここじゃあ話し難いだろう、応接室にでも場所を移さないか町長。」
「ああ……是非そうさせてもらおう。」
「勿論、あんたも一緒だよなジョー……さっきの質問の答えも聞いていないし、爺さんの件もな。」
「分かっていますとも、爺さんに限らず、この町の住人にこれ以上迷惑は掛けない……必ず遵守させる、これでよろしいか?」
「上出来だ……爺さん、ありがとなちょっと話し合いに行ってくるわ。」
「兄ちゃん、いや領主様と呼ばなきゃならんな。」
「兄ちゃんでいいよ、また賄いメシを食わせてくれ。」
互いに笑い合い、振り返って大階段へと町長の後に続く。
「なぁ、本当にお前さんって何者?」
不意に後からジョーがデジャヴな言葉を投げ掛けてきた。
「その質問には答えたろうよ。」
「肩書きはな……だが背景よりもお前さん自身の本質の方が重要だと、俺の直感が言ってるんだよ。」
(コイツの治療をしようとした時、既に深傷は塞がりかけていた……あの出血量では考えられない事だ、コイツにはきっとまだ秘密がある。)
「はは、他人様に語れる程の中身じゃねーし、まぁ買い被りだよ。」
「ならいいんだがな……お前さん、倒れる後と前じゃ印象が全く違うぜ。」
「そうだろうな♪何せ……意識飛んで、超絶可愛い天使のスマイルを見ちまったからよ。」
『………♪』
「ふーん、いいだろう今は煙に巻かれてやるよ。」
BooBoo♪BooBoo♪
あらら、割と事実なんだけどな……。
とかおふざけを挟みつつ、俺は二階へ上がった訳だが……やっぱり町長、このおっさん私腹の度合いがエグ過ぎる。
古城なんだから間取り……ってかそれなりに広いとは想像してたが、こっちの想定を越えてきやがった。
何だ、この絵画とか壺とか甲冑は……これ見よがしに廊下に飾りやがって、ここまでくると悪趣味だわ。
『いえ、鑑定しましたがこれらは全て贋作か二束三文の価値しかありません。』
マジか……って事はわざと悪趣味を演じているのか、すると。
とか考えている間に応接室の前まで来た……。
最後に俺が入り、扉を閉めた瞬間、これまたエグい骨の軋む音が嫌な余韻を残して鳴りやがった。
なんと町長とジョーがキレイなフォームの右ストレートで互いの頬に一発入れている……まさかこの世界で幻のライトクロスを拝むとは。
「……。」 「……。」
無言で同時に崩れ墜ちてゆく二人……お前ら何がしたいんだよ。
「意味不明な茶番は済んだか?本題に入ろうよ……君達。」
丸テーブルを挟んだ三人掛けのソファに座り、腫れた二人のツラを見回すとまだ仏頂面をしていたが、町長が先に口を開く。
「先程はお恥ずかしい所を見せてしまいましたな……改めて名乗らせて頂きます。 このフェデルの町を預かっております、サルマンドロス・フェデルナスカと申す。このすっとこどっこいのジョー・アベルとは幼馴染みでしてな。」
「幼馴染み!?でも、さ、サル……マンドロスさんの方が結構歳上に見えますけど?」
「サルマンで結構ですよ……いやはやお恥ずかしい、気苦労のせいですかな?これでも同じ39歳なんですわ。」
う、嘘だろ……下手したら五十代だって言われた方がしっくりくるぞ。
「何が気苦労だよ、お前は昔から頭が薄かっただろ♪」
「またブチかますぞっ!!ゴラァ!!」
「いいからっ!!話しが進まないでしょ二人共。」
「おおっ、これはすいません領主殿……して何の話しですかな?」
「お惚けかい……まぁ先刻まではサルマンさんの儲け噺をメシの種にして、今後のウェストバークを考えようと思ってたんだけどさ。」
「先刻まではですか?」
「あんた思った以上には私腹を肥やしてないな……廊下の美術品は贋作だし、ジョーとの間柄を団員達に隠している。 かと思えば俺にはそれを見せた……なら領主である俺を巻き込む覚悟をしたんだろ?ほら、言ってみなよ。」
「………。」
「なるほど、ジョーが気にするだけの御仁だ。 あなたが私を脅すだけの揺すり屋なら、迷わず始末する予定だったんですがね……。」
「怖いな……で?質問には答えてくれそうかい?」
「質問によりますな。」
「あんたの裏稼業は領主として、追々聞くつもりだ……だが今は住民や団員にまで本心を隠してこの町に傭兵団を常駐させている理由を訊こうか。」
……俺の質問に暫し口ごもり、何事か私案する素振りを見せるサルマン町長、その様子を横目で視ながら腕を組むジョー、おそらくジョーから口を開く事はないだろう。
何となくだが、二人の関係性は互いの視線のやり取りで伺い知れる気がする。
なら、俺の方からもう一押し、予想と確認をするべきだろう。
「最近、近辺でグールの目撃、あるいは被害例がないか?」
「………!?」
「顔色が変わったな……事態は予想以上に悪化しているかもしれない、下手な隠し事はお互いナシにしよう。」
「あなたがグールについて語るとなると、少なくとも私達の敵ではないようですね。」
グールについて語る?その事を質問しようとすると、横からジョーが順を追って話すと追随してきた……どういう事だ?
「御存知かもしれませんが、この地方には四つの町が存在しています……。」
「ああ、それは知っている、魔族領からの被害に遭っても故郷を捨てられずに残っている人々が居るんだろう?」
「アームベルン本国ではそう云われているのでしょう、ですが実際には年間の被害はそう多くありません。 集落によっては魔族領と取引を行っている所もありました。」
ありました?集落?……嫌な言い方するな。
「お気づきですか……去年からです、本来この地方には四つの町の他に大小併せて七つの村や集落がありました。 いずれも本国から認知されていないものでしたが……全て滅びましたよ。」
「……!?」
俺は思わず立ち上がっていた……まさか、だとしたら森林街道で遭遇したグール共の規模はその村や集落の者達か。
「納得したよ……実は俺達の一団も森林街道でグール共に襲われた、 死者も出しちまった。」
「それは……お辛いでしょう、私共も親しい者達を亡くし……いや、安寧である筈の死を冒涜されました。」
「だが仲間が本国に助けを呼びに行っている……ギルドが介入するのも時間の問題だろう。」
「それはどうだろうな……。」
初めてジョーが横槍を入れてきた……苦虫潰して尚も咀嚼させられてる様な渋いツラで……。
「私共は最初の集落がグール共の群れに潰滅されてから幾度と本国に報告致しました。 被害や敵の規模、ギルドにも依頼を要請致しましたが、魔族領からの被害にいちいち取り合っていられないという理由から討伐隊が編成される事はなかったのです。」
「領主代行のバルローは何をしていたんだ……?」
「何も……だからこそ、本国に近い人間は誰も信用なりません。」
「じゃあ俺に話すのはいいのかい?」
「まだ完全に信用している訳ではありませんよ、ですがあなたはわざわざ此所まで足を運ばれた……少なくとも我々が危惧している類いの人間ではないと判断しました。」
危惧している類いの人間……それはおそらく。
「サルマンさんはアームベルン内でグール被害の情報を握り潰している者が居ると考えているんだね?」
「はい、傭兵団の伝手を使って他の地方にも探りを入れましたがグールの被害はこのウェストバークに集中しています、そこに何者かの意図や思惑が介在しているのではと考えています。」
「……だからこそ、住民にグール共の存在を明かしてパニックになる事を避けたかったのか。 団員には私腹を肥やすダメ町長の豪邸を占拠し、好き勝手出来るように見せて。」
「実際に町の住民に被害を出した事は詫びる……俺の監督不行き届きだった。」
だがそうする必要があった……交差する二人の眼差しが言葉よりも雄弁にそう語り掛けてくる。
「この町にまで現れたんだな……。」
「入り口の石橋で交戦したよ……団員には野生化したグールだと言っておいた。」
「団員の中で事態に気付いている者は何人居る?」
「数人は薄々勘づいているだろうな、ミシェルもその一人だ。」
完全に俺の想定を遥かに凌駕し、事態は悪化し続けていやがる……詰んでね?お手上げじゃね?終わってるよと諦めて逃げた方が楽だな。
少し前の俺なら当然の様に見捨てて、一目散に逃げただろう。
だが今回は見過ごせねぇ……何より、俺を信じてくれたティガーを死に追いやってくれた落とし前を着けなきゃならねぇだろが。
「分かった……ここから先は俺も腹を括った。 互いに利用しあう間柄といこうじゃないか。」
success♪ success♪
それから二時間後……俺は町長とジョーを伴い、一階まで戻る。
おっ、何だよまだ爺さん居るのか……そう声を掛けたら、兄ちゃんだけを置いて帰れる訳ないじゃろっ!!とか激昂された。
いやはや、義理堅いねまったく……嬉しくなっちまう。
さて、じゃあいっちょやるか。
「ああ~皆さん静粛にっ!新領主のモンテですっ!ハイ、拍手!!」
……うん、聴こえる訳ないとは思っていたよ、マジで。
何か殺伐とした静寂がホールに沈澱してんなぁ、おい。
「……領主として、この町を占領し、住民へ被害をもたらした事件は見過ごせない。」
「……。」 「……。」
「よってお前ら……全員、クビっ!!自警団は解散!!」
その瞬間、またも沸き上がる怒号の嵐……さて、どうなる?どうするよ?
つづく
ええ~どうでしたでしょうか?
かなりシリアスっぽくなってしまいました。
これ、コメディとして書き始めた筈なのに(焦)
異世界ものは思った以上に難しいです。
すんません、言い訳ぶちかましました……見捨てずに、読んでやってつかぁさい。
お願い申し上げます。




