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ネコ耳ばすた~ず 0  作者: 七海玲也
第四章 行く末
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魔人の誘惑

 何もかも忘れ目の前の女性だけを見ていたい……。

 もう何も……。


「はっ!

 オレは何をしてた!?」


 頭が重く感じる。

 あの感覚は一体なんだったのか記憶が定かではない。


「もう大丈夫にゃ。

 この人……って言えばいいのかにゃ、魔人の淫魔女(インキュバス)


「魔人だって!?

 それならっ!」


「血の気の多い子ね。

 こういう子、すごく好きよ」


「もぉ、淫魔女!

 やめるにゃ、約束したにゃ!」


「ふふ。

 分かってるわよ、仔猫ちゃん。

 艶魔力(フェロモン)、出してないでしょ」


 オレの知らないところで話が進んでいるようだが。


「魔人なのに大丈夫なのか?

 それに約束って」


「この魔人なら大丈夫にゃ。

 元々、淫魔女って男性を誘惑して精気を奪い取って生きてるにゃ。

 けど、この淫魔女は男性に困ってないらしくて、今すぐ精気が必要なワケじゃないらしいにゃ」


「そう。

 今は、ね」


「オレは艶魔力で誘惑されて……精気を抜かれそうになってたのか!?」


「そうなんだけど、精気はさっき取ったばかりで要らないらしいにゃ」


「クソ不味かったけどね。

 やっぱり若くて血の気が多い子ほど美味しいわ。

 簡単に廃人にはならないし」


 淫魔女がウインクをしてくるが、気にすることで誘惑に負ける気がして視線を外す。


「さっきのあれか。

 すると相手は」


「とっくに廃人よ。

 気持ちよく堕ちたのだから満足してるでしょ」


 確かに痛い思いをするよりはとも思うが。


「それと、約束ってなんだ?」


「にゃあ。

 それに関しては……秘密にゃ。

 今は約束の前にすることがあるんだにゃ」


 母親を捜し見つけ出すのが先決ではあるが、魔人と約束というのは嫌な予感がし淫魔女に目を向ける。


「だそうよ。

 あたしを見られても仔猫ちゃんが秘密っていうなら言えないわ。

 代わりに教えてあげられる情報ならあるわ」


 淫魔女が窓辺へ立つとオレ達を招き寄せる。


「確か、あの館のこと話してたわよね?

 あそこはもう簡単に人が近寄れない場所よ。

 言うなれば魔窟といったところね。

 魔人もいるけど魔者の棲家と化してるわ。

 ほら、あの黒い点。

 あれは魔鳥石(ガーゴイル)の群れ。

 人間共が沢山造ったおかげであんなにいっぱい」


「ってことは、あそこに人間は居ないってことか?」


「そういうことよ。

 居たとしてもバカな冒険者。

 あそこに行って生きてた人間は見たことないわね」


「すると、人間が居そうなところとはどこだ?」


「前に馬車を何度か見たことがあるけど……。

 あの館から左手に、ほら、あれ。

 小さい塔があるでしょ?

 あの辺りに向かっていたわ」


「あそこか。

 ありがとう、淫魔女。

 ミィ行こうか」


 淫魔女の情報はありがたく、すぐさまミィの手を取り宿を後にする。


「ちょっと!

 ここまで教えてやったんだから、約束。

 忘れないでよ」


「分かってるにゃ。

 あとでレイヴには話しておくにゃ」


 淫魔女と別れ小さな塔を目指す途中、日が完全に落ちると魔者の動きが活発化しているのか、屍喰鬼(グール)やらの魔者と一戦交える羽目になったがこれを軽く退け目的の場所の近くまで辿り着いた。

 警戒しつつ建物の陰から辺りを見回しながら徐々に近づいていくと、小さな塔の隣には厩舎などがあり馬車も停まっている。


「あそこだろうな。

 だが、どうやって入る?

 あの警備兵をどうにかしないと」


「武器も持ってるにゃ。

 こっそり入るにはちょっとムリがあるけど……そうだ!

 わたしが囮になるにゃ!」


 塔の入口と厩舎を行き来している二人の警備兵は武器も持ち、辺りを警戒している。

 普通の街や城ならば敵兵や怪しい人物への警戒だろうが、ここでは魔獣や魔者への警戒なのだろう。


「どうやって囮になるつもりだ?」


「多分、わたしを見ると追ってくると思うにゃ。

 中にママがいるなら人猫(ワーキャット)は捕まえたいハズにゃ」


 ただの警備兵なら人猫のことなど聞かされていないだろうが、こんな場所にいるのなら内情も知った上でいる確立は高い気がする。


「危険だがやってみるしかないか。

 ただ、二人を引きつけないと意味がないぞ」


「わたしを誰だと思ってるにゃ?

 これでも猫なんだから人間になんてそうそう簡単に捕まらないんだから」


 捕まって人間界に来ていることを忘れているわけではないと思うが。


「なら魔法銃(マジックガン)の射程まで引きつけてくれ。

 オレが物陰から飛び出したら撃つ。

 それが合図だと思って飛び退くんだ。

 くれぐれも気をつけろよ」


「了解にゃ。

 すぐ連れて来るからにゃ」


 塔から少し離れた廃屋を背に一人機会を待つ暗闇の中、魔者たちの呻き声がより緊張を高ぶらせる。

 失敗したらミィの母親を助け出すことは困難になるだろう。

 そう思うと握る魔法銃に力がこもり、一瞬一瞬がやけに長く感じる。


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