暗黒事務所を打ち破れ!4(完)
「グオオオオオオオーッ!」地面からの襲撃を行うつもりだった転生キラーは突然の大質量攻撃を受け逆方向に吹き飛ばされた! 2階の床を突き破る! 1階の床を突き破る! そして地下室の石床に叩きつけらた!
(ウワーーッ! なんだおい! 今の搖れ! お前生きてるかっておいおい物が落ちてくる! 死ぬ! 私拘束されてんだぞおい! 机の下に……)ブツッザーザーザー。レインとの連絡が途絶えた。虫が潰されて死んだことで、念話が切れたのだろう。
「ハァーッ、ハァーッ……」転生キラーは背中に温かいものを感じた。出血が激しい。もはやチョップ一つ繰り出せぬダメージだ。「……死ぬわけにはいかぬ……。」転生キラーの瞳は土色から通常の黒に戻った。これはスライモールのスキルが使用できないことを示している。「私は生きる、生きて殺す……! どんなてを使ってでも!」
「ハ、ハァー……グウ……。」エターナルはもはや元の30%弱しか残らぬ床の上で息を切らした。膨大な魔力量を誇るエターナルのチートスキルであっても、過大なエネルギーを使用する魔術は肉体に激しい負荷をかけるのである。「……エターナル。ここまでやったからには、わかっているな。」ルチアーノが低い声で言った。「……確実に! 殺す!」ルチアーノはその時、忠実な部下によって明確な恐怖を感じた。
怒り。大悪人であるルチアーノが、今まで感じた全ての怒りよりもそれは凄まじいものであった。この時彼は、転生者は人間とはーー少なくともこの世界の人間とはーー違う生物であると理解した。その悪意の次元が異なっていた。
「ギ……ガ……サン、ダー!」無尽蔵に生成される魔力と、強力な魔術による肉体のオーバーロードに苦しみながら、エターナルは全身に電撃を纏った! 「ハアーッ!」そして床穴にダイブした! その姿まさに、落雷の如し!
「ハアーーーーッ!」爆音! エターナルは、指一本動かせぬ転生キラーに確実なるとどめをさした、はずであった。しかし!
「ヌゥゥゥン!」転生キラーの右ストレート!「ゴバァーッ!?」エターナルはまともに食らった!
一体何が? 何故まだ動ける? エターナルの疑問は彼の思考回路を動かした。そして、恐ろしい結論を出してしまった。
転生キラーの瞳が土色から灰色に変わっていた。いや、それよりも。敵から発せられる雰囲気が、自身のかつての同業者と同種であることが、エターナルを困惑させた。まさか。
「ダスティシルクの……? まさか、そんな……。有りえぬ!」「俺は殺した転生者のスキルを使う。不本意ながらだが……。」ダスティシルクのチートスキル。薬効を最大化させるスキル。そして転生キラーの傍らには空の注射器が落ちていた。
聡明な読者諸君にはわかってであろう! 転生キラーは先程違法薬物キャビネットに叩きつけられた際にそのドラッグを回収、そしてダスティシルクのカードを使用し、そのチートスキルによって薬効を強化……疲労を忘れ、無理な肉体稼働を実現したのだ!
「チートスキルを奪うチートスキル……!」エターナルは戦慄した。そしてその優れた思考力は、もう一つの懸念を浮かび上がらせた。そしてその予感は現実になった。「取得。」床破壊によって落ちてきた物体の一つ。マリシャスアサシンの頭部。「やめろーーッ!」エターナルは反射的に転生キラーに飛びかかった。
だが時すでに遅かった。違法薬物『一生懸命X』により人間の限界を超えた速度で転生キラーが動いた。「転生!」マリシャスアサシンの屍から溢れ出た光の粒子がカード状になり、それに触れた転生キラーが真紅のオーラに包まれた。「マリシャスアサシン……」一瞬が引き伸ばされた時間の中でエターナルは恐怖した。その声は、数分前まで生きていたマリシャスアサシンの声そのものだったからだ。
「グアアッ!」エターナルの攻撃はたやすく破られ、首を捕まれ床に叩きつけられた!勝負は決した。
酔生夢死……。」地獄の底から響くような冷徹な声。転生キラーのもう片方の腕に黒色のオーラが集まった。
「エターナルと言ったな。これから貴様を拷問する。質問に答えれば楽に即死させてやる。抵抗しても即死させる。」「……何が目的だ。」「……ハイヤーセルフについてだ。」「……!」エターナルの瞳孔が一瞬開いたことを、転生キラーは見逃さなかった。「知っているのか! 言え! 知ること全てを!」転生キラーは叫んだ!
「……。俺はハイヤーセルフのソウルメイトだ。」「何だと!」「俺も詳しくは知らない……。ハイヤーセルフにも合ったことは無い。奴の手下を殺した。」「言え!」「そいつの名前は知らん、名乗らなかったからな……。俺はソウルメイトと呼ばれる転生者を殺せばその力を得られるという話を聞き、そいつを……ソウルメイトを名乗る転生者を殺した。……実際、俺の魔力量と魔術の力は強大化した。それだけだ。その後は他のソウルメイトは見てないし、ハイヤーセルフとかいう奴にも襲われたりはしなかった。」
「……! その話は、ソウルメイトととやらに関する情報はどこで手に入れた!」転生キラーはエターナルを揺さぶる!「あの男の名は、センチネル。俺がブラック市の酒場で飲んでいた時相手から話しかけてきた。そして一方的にその情報を与えて行っちまった。やつに何の得があったのか、なんで俺が転生者だとわかったのか、なにもわかんねぇままさ。」「……他に知っている転生者はいるか。」
「レッドハンマー、カワダスエンチャンター、クレイフィッシュ、オムニバラス、ジェットブースター。これだけだ。傭兵と、ただ暴れ回る奴ばかりだ。……もういいだろ、いい加減殺せよ。」エターナルは諦めるように言った。転生キラーは無言で黒い手を彼に触れた。エターナルは眠るように死んだ。
「取得。」エターナルの魂がカードの姿に変わった。
転生キラーは今しがた知り得た情報を噛み砕いた。センチネル。ソウルメイト。ようやく収穫を得た。宿敵、ハイヤーセルフの情報を。転生キラーは重い足取りで地下室から去った。
「畜生!」一方、廃墟と化したオフィスの上階では、ルチアーノが激しく怒っていた。「大損害だ! 大枚を叩いて雇ったと言うのに、使えん奴ら!」ルチアーノは少しでも残った財産をかき集めていた。「……だがまだ分割して保存した財産はある……更に使える転生者を揃えれば、俺はまだ勝ち上がれる……この損失も余裕で挽回できる……!」「それはどうかな?」「何っ!?」
ルチアーノは凍りついた。いつの間にか、全く知らない人間が立っていた。いや、この場合はおそらく、人間ではなく……。「俺様はブレインワーム。ま、転生者ってやつよ……。」「貴様一体何の用で……エ……が。ハ……。」ルチアーノは白目をむき痙攣した!「アア、アバババ……」
「俺のチートスキルは洗脳よ。金で転生者を雇えるなら、その金持ちを洗脳しちまえば早いと思ってな。まさかこんな絶好の機会に出会えるとは思わなかったが。」ブレインワームはおぞましい笑みを浮かべた。「転生キラー、おっかねえやつだなァ。絶対出会いたくねえよ、マジ。」「アアバババ……!」
「ハハ、俺のチートスキルは全然スマートじゃねえなぁ。虫が蠢いて苦しそ。……そーいやソウルメイトとがどうとか話してたっけな。俺様もそれやれば強くなんのかな? でも転生キラーに会いたくもねえし、どうするか……。 うーむ。やはり気になるな……。」象牙色の瞳を持つ転生者、ブレインワームはルチアーノを抱えて夜の街に飛んだ。
「おい誰かーッ! 怪我人だぞコノヤロー!」
一方その頃、崩れた建物の下敷きになりつつも奇跡的にできたスペースで生還していたレインは叫んでいた。
「おいおいマジでこのままかよ? 虫は使えないし……。」
しかしそのとき、不意にレインを覆い尽くしていた瓦礫が取り除かれた。
「ひぃっ!」レインは悲鳴を上げた!そこに現れた男は全身に血を浴び、その瞳は底なしの闇。全てが死を予感させる恐ろしい姿だ。
「……いや、アンタは、まさか! 勝ったんだな!」「……当然だ。」「はははは! 正直忘れられてんじゃないかと心配してた! いやでも当然だね! 私のサポートがなかったら危なかったろ?」「戦闘ではむしろ注意が逸れて迷惑だったがな。」「でも勝ったんだろ! つまり私のおかげだ!」
「無駄口の……多い……」
「んんーっ。」レインは転生キラーに腕を引かれ、瓦礫の山から脱出した。「生き延びたぞ! いえいいえい!」のんきに叫ぶ。「それじゃ、これでアンタとはおさらばな! まさかまだ最初の事引きずってはいないよな? 今回のでチャラ! それじゃ私はとっとと逃げるからアッでもその前に火事場泥棒しておくか……って。」レインは何かに気づき軽口の嵐を止めた。
転生キラーが地面に倒れ伏した。「おい、アンタ、どうした! 何が……。」しかしレインは即座に理解した。単純な理由だ。転生キラーのダメージが限界を迎えたのだ。
ダスティシルクからの連戦、ギガインパクトの直撃、3連続の転生、薬物使用。いかな強力な転生者の肉体と言えど限界はあったのだ。既に限界であった体を悪意によって動かしていたのだ。
「……。こんな状態で私を助けに……。」レインは満身創痍の男を担ぎ上げた。「律儀な奴……。」魔術師の少女は廃墟から、己の住処に向かって去っていった。
【暗黒事務所を打ち破れ】終わり




