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イン×プリ  作者: リゼ
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オマケのあれこれ、会話文羅列でお送りいたします

 

▽ 旦那様と奥方様、結婚前出逢い編


旦那様「何故私が、貴様のご機嫌伺いに付き合わねばならん」

従兄弟「まー、ま。抑えて抑えて。今日の夜会は、下級とはいえ貴族の主催するパーティーなんだから、この機会に顔繋いで顧客獲得ぅ!」

旦那様「……(会場の一点を凝視)」

従兄弟「って、どしたの会長? あの時代遅れなドレスお召しのレディが、どうかした?」

旦那様「いや。型は古いが、生地は良い物を使っている。貴様、もっと観察眼を鍛えろ」

従兄弟「へーい。じゃ、オレは挨拶回り行ってくるけど、会長は……」

旦那様「……(凝視中)」

従兄弟「観察する訳ね。ハイハイ、じゃ、また後で」


 従兄弟君が挨拶に赴いた後も、旦那様、ひたすら奥方様から目線を外さず。ついに、奥方様の方からツカツカと近付き、尊大に顎をしゃくる。


奥方様「あなた、先ほどからわたしに何のご用なのかしら?」

旦那様「……いえ、随分古びたドレスだな、と」

奥方様「まあっ、なんて失礼な!

流行に囚われるだけしか脳のない、型にはまった残念な男ね!

これ以上顔も見たくないわ」

旦那様「あっ、お待ちをレディ……!」


 呼び止めようとして、旦那様が手にしていたグラスのお酒が、奥方様のドレスの胸元から裾まで盛大にかかる。


奥方様 (……! お祖母ちゃまの形見のドレスが……!)

旦那様「あっ! 申し訳ないレディ。そのドレス、生地代と仕立てに掛かった費用の倍は出しますので、弁償させて……」

奥方様 (なんて残念で失礼な男なの!?)

奥方様「結構よ。あなたのような残念な男には、わたしから呪いをプレゼントしてあげるわ!」

旦那様「……は?」

奥方様 (なーんて、単なるお祖母ちゃま直伝のおまじないだけれど)



▽ 旦那様と奥方様、結婚前交換条件編


旦那様「お久しぶりです、レディ。あの夜はお名前も伺えず、探すのに随分手間取りましたよ」

奥方様「あなた……今日はいったい何のご用?」

旦那様「あの夜の無礼は、この通り謝罪いたします……なので! 私にかけた呪いを、今すぐ解いて頂きたい!」

奥方様 (……? あのおまじないは、単なる気休めであって、特別な効果は無いはずだけれど……?)


 状況が掴めず無表情な奥方様に、気色ばむ旦那様。


旦那様「あの夜以来、満足に眠れず仕事の効率も落ちてしまいました。深く反省しております。どうぞ早く呪い解除を!」

奥方様 (確かにこの男、あの夜より顔色が悪いわ。それ以上に、ギラギラした追い詰められた目つきが、まるで危険人物の形相で怖いのだけれど!?)

奥方様「それなら、交換条件といきましょう」


 何とか旦那様を言いくるめて追い返し、奥方様は祖父の子爵に相談に行きました。


老子爵「ほほう……それはまた、変わったお人じゃな」

奥方様「ええ。腹いせに、あの嫌な当主に嫌がらせしたら呪いを解いてあげる、って言っておいたわ」

老子爵「……お前も大分、腹黒い娘に育ったのう。

そのお人が、約束を果たせと乗り込んできたらどうするつもりじゃ?」

奥方様「単なる体調不良を、わたしのせいにされても困るわ。ひとまず適当な方法を吹き込んでおいたから、そのうちお身内が医者に連れて行くでしょう」

老子爵 (話を聞くだに、不治の病だとしか思えんが)



▽ 従兄弟、自らの血縁のアレっぷりに愕然とす編


従兄弟「おっはよー会長ー!

今日も爽やかな朝だね」

旦那様「貴様か……我が商会は、今日から一大プロジェクト完遂を目標に、一丸となって取り組む事となった」

従兄弟「は? 何ソレ初耳なんですけど!?」

旦那様「昨夜決めた。A派閥の筆頭を引きずり落とす」

従兄弟「何で!? オレらの商売と関係なくない!?」


旦那様「ふむ……ならば、敵対するB派閥との闘争を煽って共倒れに導き、恥辱に突き落とすか。B派閥はいちいち我々に目くじらを立ててきて面倒だ。これならば文句はあるまい?」

従兄弟「更に悪化してるから!?

そもそも、何でA派閥の筆頭をどーにかするって話に?」

旦那様「かのレディに屈辱を与えた俗物だ。呪いを解く条件として出された」

従兄弟「呪い……? ナニ言ってんのカイチョー?」


 旦那様、従兄弟君に懇切丁寧かつ微に入り細に入り現状の説明。

 従兄弟君、疲労感から机に突っ伏す。


従兄弟「……会長ー、本気で言ってる?」

旦那様「無論だ。ひとまず呪いは緩和策である絵姿で凌いで……なるべく早く条件を満たさねば」

従兄弟 (何で……? 何で気が付かないの会長ー!?)



▽ 老子爵、色々諦め気味に覚悟完了編


 それから数ヶ月後、奥方様が嫌っている某当主が筆頭を務める派閥と、敵対する派閥の不祥事が新聞記事の一面を飾りました。


老子爵「……孫や」

奥方様「なぁに、お祖父ちゃま?」

老子爵「これは、あのお人の仕業じゃないかのう?」

奥方様「ま、まさか? わたしはあの当主を社会的に抹殺しろだなんて、一言も申しておりませんわ」

老子爵「チャチな嫌がらせでは逆に踏み潰されるゆえ、やるならば徹底的に叩き潰す……見上げた気概じゃのう」

奥方様 (……ぶるぶる)


老子爵「孫や、一つアドバイスをしてやろう。万が一、かのお人が、約束を果たせと迫ってきたら……」

奥方様「きたら?」

老子爵「『呪いを解く手順を踏む為には、まず結婚する必要がある』と撃退してやりなさい。男は人生の墓場には二の足を踏むものじゃ」

奥方様「流石はお祖父ちゃまだわ。これであの男も、大人しく引き下がるわね!」

老子爵 (あるいは、奮起するかもしれんのう……)


 こんな会話を交わした数時間後、老子爵の前にはめっちゃマジな顔した旦那様が、結婚の許可を貰いに現れたのでした。



▽ 旦那様と奥方様、結婚前婚約期間編


旦那様「おはよう、婚約者殿。朝の接吻を頂戴しに来た」

奥方様「……おはようございます、婚約者殿。毎朝毎朝、本当に飽きもせずよく通われますこと」

旦那様「仕方がないだろう? 君の接吻がなくては、私はもはや生きてはいけないのだから」

奥方様 (……この男、実はわたしをからかっているのではないのかしら?)


旦那様「婚約者殿? どうしたんだ? 頬が赤いが……まさか風邪か!?」

奥方様「わたしが風邪をひいたら何だと言うのです」

旦那様「風邪を甘く見てはいけない。油断すると、長引いて……」

奥方様「では、わたしの風邪が婚約者殿に感染してはいけませんから、今日から治るまで接吻は取り止めにしましょう」

旦那様「……んなっ!?

は、ははは、早く名医の手配をしなくては! それに、滋養のある食事の用意とっ!」

奥方様 (……この人、本当にバカね)


奥方様「風邪が治ったらお食事に誘って下さっても構いませんのよ? ですからあなたも、お仕事に区切りをつけておいて下さいね」

旦那様「そ、そうか! 分かった早めに片付けておく!

君も、くれぐれもお大事に……」

奥方様「ええ。行ってらっしゃい、あなた。お仕事頑張って下さいね」

旦那様「~~っ!!」


 笑顔でお見送りをする奥方様のおかげで、旦那様、急速に絶大な威力を発揮した呪いパワー(……)に、轟沈。



▽ 結婚後の奥方様、特技を身に付けようとしてみる編


奥方様「ふう……」

黒髪娘「奥方様、何かお悩み事がおありでございますか?」

金髪娘「お任せ下さいな。わたくしどもが、何でも解決してみせますわぁ」

奥方様「わたくしって……地味よね?」


黒髪娘「率直に申し上げて、虚飾に裏打ちされた派手さは皆無かと」

金髪娘「良いではございませんか。清楚で落ち着いた上品さは、後から身に付けようとしても難しゅうございますわ」


奥方様「どうも、お茶会でよそのお宅の夫人方のように、自分から場を動かす話術というものが想像もつかなくて」

金髪娘「聞き上手は立派な長所、美点でございましょう」

奥方様「いいえ、いいえ、聞いているだけではなく、自分から飛び込んでいかなくてはならないの!」


金髪娘「皆様をあっと言わせるのでしたら、手品でも披露なさいます?」

奥方様「……わたくしに出来るかしら?」

金髪娘「ええ、案外簡単ですわあ」

黒髪娘「では、それと並行して、奥方様独自の情報網を作り上げましょう」

奥方様「まあ、どうやって?」

黒髪娘「そうですね……(ごにょごにょごにょ)」

奥方様「まぁぁぁ! 庶民の広場で子どもにお菓子を? 街中の噂話を? ピエロさんって大変な職業だったのね!」

金髪娘「奥方様、楽しく練習いたしましょうねぇ」

奥方様「ええ、そうね」



▽ 結婚後の旦那様、名案を思い付く編


旦那様「……最近、奥方が家の者の冗談を聞いてはよく笑うのだ」

従兄弟「へー、良かったじゃん。一時期、嫁さん固い表情ばっかりだーって落ち込んでただろ? 会長」

旦那様「奥方はどうやら殊の外お笑いを好むようなので、劇団には次の公演は『アクションコメディ』の演目を依頼しておいた」

従兄弟「……あの人ら、めっちゃ真面目な恋愛物が持ち味なのに……」


旦那様「奥方が好むのだから仕方がない。そこで、だ。一つ良いことを思い付いた」

従兄弟 (嫁さん絡みで、マトモな事言い出した試しが無いからなー、このヒト)

旦那様「私はこれから、著名なコメディアンに弟子入りしてこようと思う」

従兄弟「止めて! マジ止めて!

うちの商会だけじゃなく、前子爵様が大打撃受けちゃうからマジ止めて!」

旦那様「大店の商会会長や子爵家当主とは、しがらみの多い立場だな……」

従兄弟「ソーデスネ……」


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