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#58


あれからいろいろとあった。

ヘソをまげた南部さんの機嫌を戻すのにスイーツ店をはしごしたり大変だった。

もっと大変だったのはあの引き留める為に言った話がなぜか俺の公開告白になっている事だった。


「いえ、海軍への就職には興味無いのでご遠慮させていただきます」


「海軍どうのなんて話は必要ありません!自分に必要なのは彼女なんです!」



「居なくなって初めて気づいたんです。どれだけ大事な存在だったか…」


ことあるごとにそれで周りから揶揄われるんだが別に嫌な気がしないのは外堀から埋められているからだろうか?

そんな事を考えながら詰所の掃除をしていると首筋に冷たいものを感じて思わず変な声をだしてしまった。


「ひょ!」


驚いて後ろを振り向くと彼女が冷えた缶ジュースを持って立っていた。


「なんだよ変な声だして」

「いやビックリするでしょ普通」

「じゃあいらないんだ」

「いえありがたくいただきます」


綺麗にお辞儀して両手を差し出す。


「まったく調子のいいやつめ」


そういって冷たい缶ジュースを渡してくれた彼女はなんだかんだ言ってもいい人だ。

そうそうあの日以来変わった事がある。

もうお分かりかと思うが彼女、つまり五十嵐さんなんだがちょっとだけ優しくなった気がする。

今みたいに差し入れを持ってきてくれる事もあるし遅くまで残業していると見てらんれぇなとか言って手伝ってくれることもある。

最初はえ?なに?なにかあんの?って警戒してたけどどうも善意100%らしい。だから決して疑っていたなんて気付かれてはいけないのだ。


「じゃあちょっと休憩しますか」


受け取った缶ジュースを飲もうと椅子に腰かけると隣に彼女も座る。

プルトップをつまんで起こして開けるとプシュと気持ちのいい音がする。いつもこの瞬間が好きなんだよなと思っていると隣に座った彼女は缶を開けることもなく手の中で遊ばせていた。

どことなく緊張しているようにも見える。

なにか相談事でもと思い顔を覗き込んでいると意を決したように真剣な表情になるとこっちを見つめてきた。


「な、なあ(コウ)

「はいなんでしょう?」

「・・・」


無言のプレッシャーを感じで降参。

あの日以来彼女は時々俺の事を下の名前で呼ぶようになった。

フルネームは宏一(コウイチ)なんだけどそれは恥ずかしいらしい、基準が分からん。

そんでそうやって名前で呼ばれた時はこっちも相手を名前呼びしなくちゃいけないんだけどこれが予想以上に恥ずかしいのなんの…。


瑠璃(ルリ)さんどうかしました?」

「・・・」


ちょっと目つきが怖くなった。

名前呼びの時はさん付けも敬語口調も駄目だったのを忘れてた。

上官の命令は絶対だって譲らないんだもんな。


「瑠璃どうした?」

「つ、次の休暇なんだがな。えっ映画なんてどうだ?面白そうなのがあってだな」

「「フルスロットル8ですよね」っていうんだけど…」


フルスロットル8。フルスロットルシリーズ8作目で最新作。

超有名なカーアクション映画で運転好きな瑠璃が好みそうな映画だ。

毎回ぶっ飛んだ設定で話題をさらっているがなんと今回が南極でカーチェイスするらしい。

ちょっと内容が気になって調べていたんだけど正解だったようだ。


「ふっふっふ、私を甘く見てもらっては困るね」


そう言って映画のチケットを取り出す。


「なんとここに映画のチケットが偶然にも2枚ありましてね」

「・・・」


何かを期待するようね目で見つめてくる。くそその上目遣いは卑怯だぞ!


「一緒にいかないか?」

「もちろん!」


嬉しさのあまり抱き着かれたのだが俺のあばらが崩壊しそう。

やっぱ力つえぇ!


さっしの悪い人でもお気づきだと思うがあの日から俺は瑠璃とお付き合いを始めた。

当初の予定では彼女の退社を阻止して俺が辞めるはずだったのだがなにがどうしてこうなったのか未だに分からない。

でも後悔はしてない。

あんなに辞めようかと思っていた会社も今では就職して良かったと思っている。

多少の危険はあるがやりがいのある仕事だし職場の人間関係や環境も良好だ。

職場恋愛なんて禁止だ!って言われるかと思っていたけど周りも協力的だ。

ただイチャツクと殺気が四方から飛んできたり会話や様子を社内で放送放映されるので自重してます。

まだ不安はあるけど頑張っていこうと思えるのは彼女の存在が大きい。

そんな彼女と出会えた事を感謝して、就職先が軍事会社で良かったと思う。




今日から傭兵―就職先は軍事会社でした―  終H29.0508


これで一応完結となります

最後に人物紹介とあとがきを投稿して終わりです

長い間ご愛読ありがとうございました。

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