#52
更新が遅くなりました、すいません
―島崎SIDE―
目前の筋肉ダルマが五十嵐さんのお父上である事が分かったのは直ぐの事だった。
「紹介が遅れたな、私はここの司令官であり瑠璃の父でもある五十嵐猛だ」
先ほどの「どこの閻魔様ですか?」と尋ねたくなるような顔とは違い柔軟な顔つきになった様子の変わりように別の意味で恐怖を感じる。
「これはこれは、自分はお嬢さんと同じ職場で働いております島崎宏一です」
ぎこちない感じで挨拶をすませ、さてどう会話をもっていこうかと至難していると以外にも会話の切り出しは向こうからだった。
「こんな所ではなんだ、応接室に案内しよう」
玄関先のひと騒動から一転、室内に招き入れられた島崎は応接室へと案内される。
応接室に案内された島崎はその広い部屋に驚いていた。
豪華という訳ではないがけして質素という訳でもない、なんとなくそれっぽい調度品が備え付けの棚に飾られているくらいだが何処か気品を感じる物ばかりだ。
しばらく待っているように言われ手持無沙汰だった島崎はそれらの品々をまじまじと眺めていた。
(これっていくらぐらいするんだろうか)
頭の中はお金の事でいっぱいだった。
―五十嵐(父)SIDE―
これからどん底に突き落とすんだ、せめて最初くらいは甘くしてやるか
なんってったってこれから貴様は娘に嫌われるのだからな!
「紹介が遅れたな、私はここの司令官であり瑠璃の父でもある五十嵐猛だ」
まずは自己紹介をと五十嵐父。
あえて司令官と自身がここで一番偉い存在である事をアピール、そしてニヤリと笑みを浮かべた。
これからの事を考えるとつい笑みになってしまう、いかんいかん。
「こんな所ではなんだ、応接室に案内しよう」
招かれざる客人を応接室へと案内する。
言われるがままホイホイついて来るなんて警戒心の無い奴だ。
まぁそのほうがこちらとしても手っ取り早いから楽でいいからな。
応接室へ着くとここで待っているよう伝え娘の元へと向かう。
「瑠璃ちゃん、悪いのだが客人にお茶の準備を頼めるかな?」
「お父さん、あの・・・」
「分かってる。分かってるから安心してね。じゃあお茶お願いね」
ふふ、これで準備は完璧だ。
大丈夫、瑠璃ちゃんの頼れる世界一のお父さんはちゃんと分かっているよ。
娘にお茶の用意をお願いし余所者の居る応接室へと足を向けた。
―五十嵐(娘)SIDE―
なんであいつがここに居るんだ。
ほんの数分前に事を追い出すだけで顔が熱くなるのが分かる。
いままでこんな感情になった事は一度もなかっただけにどうしたらいいのか戸惑うばかりだ。
「なんでって迎えにきたんですよ」
「ええ、お見合いするって聞いて…」
「可愛いといいますか。とにかく素敵ですね」
なんども同じ言葉が脳内で再生される。
ボン!って音がしたんじゃないかってくらい茹蛸のように赤くなってしまった彼女だが言った張本人がそれほど深い意味を込めて言っていないというのだからちょっとかわいそうである。
どういった意味で、あいつは本気なのかなどと瑠璃が考えているうちに問題の人物は自分の父にそそのかされて応接室へと向かっていった。
どうしようか、会って直接聞いたほうがいいか、でもどんな顔して会えばいいのかと悩んでいると
「瑠璃ちゃん、悪いのだが客人にお茶の準備を頼めるかな?」
「お父さん、あの・・・」
「分かってる。分かってるから安心してね。じゃあお茶お願いね」
そう言ってお父さんは私にお茶の用意をするようお願いしてきた。
そうか、お茶を出すのを口実に会話をすればいいのか。
普段とは違ってぎこちない態度の私に気を使ってくれたのかさすが私のお父さんだ。
そうと決まればやる事は一つ。
台所に向かいお茶うけとお茶の準備に取り掛かる。
ものの数分で準備ができた。
この準備時間だけでも心を落ち着かせる事が出来たのは気転をきかせてくれたお父さんに感謝しなくては。
トレーに三人分のお茶を載せ応接室へと向かう。
仕事でもこれほど緊張した事があっただろうか、いや無い。
これもすべてあいつが変な事言うから悪いんだ、きっとそうだ。そうに違いない!
悪者に仕立て上げられて島崎をどう扱いてやろうかと思いを巡らせているとあっという間に応接室へ。
深呼吸して落ち着かせてドアをノックしようとした時、室内の話声が聞こえた。
つい聞き耳を立ててしまったのは仕方がないと思う。
超不定期更新ですが今後とも宜しくお願いいたします




