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今日から傭兵 -就職先は軍事会社でした-  作者: 蒼乃堂紋
第6章『要人警護は命がけ:激闘編』
37/62

#35


銃声がした方に走っていくとビル解体現場が見えてきた。

入り口には柵が絞められていて誰かが出入りしたような形跡は見てとれない。


「確かこっちの方向からだと思ったんだけどな」


ここに来るまでそれらしい場所は無かった。

銃声がしたとすればここ以外には考えられないのだが中の様子を外から伺う事は出来ない。

柵の前で腕を組んで考え込んでいた時だった。

工事現場の敷地内から2発の銃声が聞こえやはりここが現場だと確信する。


「やっぱり・・・今行きます!」


島崎は柵を乗り越えると解体現場の敷地内を銃声のした方へと駆けていった。


―――


ここは何処だろうか

途中から記憶が曖昧だ。確か何かガスが噴き出すような音がしたと思ったら意識が遠のいた気がする。

曖昧だった記憶を整理しているとぼやけていた視界がやがてはっきりと見えるようになってきた。

どこかの部屋のように思う。パイプ椅子が視界に映ったし、冷たいタイルの触感がする。

立ち上がろうとしたが上手く手足が動かない。というよりも動かせなかった。

どうやら縛られているようだ。

自由に動く頭だけ動かすと近くにもう1人居る事が分かった。

あの警備会社の人だ。

彼女も縛られている。まだ気を失っているようで動く気配は無い。

最悪の状況だ。

拉致された上に体の自由を奪われている。

おまけにここが何処かも分からない。どれくらいの間、気を失っていたかも分からないので最悪国外だって可能性もある。

最悪のシナリオに背筋に嫌な汗が伝う。


「おや?もうお目覚めで」


ハッと声のする方を恵里が見ると部屋の入り口には青山が立っていた。

青山はニヤニヤと笑いながら恵里へと近づいて行く。


「青山、貴様なんのまねだ!どういうことだ!」


恵里は青山を睨みつけながら怒鳴る。


「いけませんねぇ三葉重工のご令嬢ともあろうお方がそのような態度では」

「うるさい!答えろ青山!」


なおも怒鳴る恵里にイラついたのか青山はチッと舌うちすると恵里の頬を平手打ちした。

勢いよく叩かれた恵里は手を突くことも出来ずに、起こしていた体を激しく床に叩きつけた。

床に蹲る恵里を見下すように青山は言う。


「まったく教育がなっていませんね、まぁいいでしょうこれくらい気丈な方が屈服させがいがありますしね」


そう言うとニタァと気持ちの悪い笑みを浮かべると青山は自分の顎下に右手を持っていく。

その後恵里がジンジンと痛む頬を忘れてしまうような出来事が起こった。

青山は顎下から顔の皮膚をぺりぺりと剥がし始めたのだ。

いや正確に言うならば青山の顔をしたマスクを外し始めたと言ったほうがいい。

それはスパイ映画なんかでみるワンシーンのような光景であった。

みるみる内にマスクを剥がし終わった男。

床にパサッとマスクが落ちた時そこには別の男が立っていた。

病気かと思えるほど顔色の悪い色白の男がそこに居た。


「ふぅ、やはりこちらの方が落ち着きますね」


首の骨をコキコキと鳴らし準備運動とでも言わんばかりに背伸びをする。


「だ、だれだお前は・・・」


あまりの恐怖の出来事に恵里はそれを言うのが精一杯だった。


「誰だっていいじゃないですか、そんな事。それより自分の事を心配した方がいいんじゃないですか?」

「・・・」

「これから自身の身に降りかかる事を想像すると私の名前なんてどうだっていいでしょう」


そしてまたあの気持ち悪い笑みを浮かべる。

まとわりつくような気持ち悪い視線と笑みに最悪のイメージが脳裏をよぎった。

彼女だってもうすぐ成人になる。そういった知識が無い訳ではない。

普段彼女が愛読している少女マンガならばここで正義のヒーローしかり王子様が助けに来てくれるのだがそこはマンガの世界での話。

現実世界ではそう上手くはいかない。

自身は体の自由を奪われ抵抗出来ない。

目の前の得体のしれない男は相変わらず気持ち悪い笑みをニタニタと浮かべたまま舌なめずりしている。


「急に静かになってしまって、もう自身の運命を受け入れたのですか?だとしたら残念ですね。泣き叫び、許しを請う貴方を見るのを楽しみにしていたのですが・・・」


ゆっくりと確実に近づいてくる男。

もう助からない、誰も助けてくれない。

マンガのように上手くはいかない。


いかないと思っていた恵里だったが・・・。


現実から逃れようとするように目をギュッと瞑り男が居る方とは反対に顔を向ける。


(お願い、誰か助けて!)


恵里の悲痛な願いが通じたのか部屋の外から物音がし、それを気を取られた男の足が止まる。

次の瞬間ドアが開かれた。


「おい、今は取り込み中だ見回りならよ・・・・・・ひぃ!!!」


仲間の誰かが来たのだろうと思ったのか男がイラついた様子でドアを開けた者を叱責しようとしていたが驚きのあまり動きを止め、悲鳴まで上げる。

無理もない、ドアの前に立った血まみれの男が物凄い形相でこちらを睨みつけていたからだ。

しかも手には血まみれのナイフを持っている。

この男の姿を見たら全員が殺人鬼と口をそろえていうだろう。それくらいの迫力がその男にはあった。


「くっ来るな!」


血まみれの男に完全に怖気づいた男は青白い顔をより一層青くさせながら後ずさった。


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