#20
―ボスSIDE―
社長室から五十嵐と島崎を追い出した後、ボスは三葉会長となにやら話始めた。
ボスは自分の机に向かうとメモ用紙に何かを書きながら会話を始める。
「まさかあんたがここを頼って来るとはね」
「ふん、お前さんを頼ったのではない」
どうやら古い付き合いのある2人のようだがその関係を話すのはまた別の機会に。
書き終わったメモ用紙をはぎ取ると三葉会長に突き付けた。
「今回の依頼を受ける条件だよ、言っとくがあの坊やに頼むって事はこの私に頼むって事なんだよ」
「・・・」
メモ用紙に目を通すなり時間が止まったかのように動かなくなる三葉会長。
その様子をあざ笑うかのようにボスは言葉を付け足した。
「おや?先ほど出来る限りの協力をすると言っていたのはどなただったかな、まぁその条件も呑めないようじゃ器がしれてしまうでしょうがね」
「く・・・いいだろう。用意出来次第連絡しよう」
拳を握りしめやや顔を赤らめながらそう吐き捨てて社長室を出て行く三葉会長の背中をしてやったり顔で見送るボスであった。
―五十嵐SIDE―
なぜだ。
なぜこうもイライラしているんだ。
五十嵐は先ほどから続くイライラ感の原因が分からずに悩んでいた。
先日迎えたばかりなのであの日ではないのは確かだ。
これといって思い当る節は思い浮かばないのだが・・・。
イライラの根源を探している時に後ろから島崎に話かけられた。
「ボスはこの依頼受けるんですかね?」
「・・・さぁ、どうだろうな」
ややぶっきらぼうな感じで返事をする。
島崎の顔を見た時にはっきりした。
原因はコイツだ。
顔を見た時にイラッとしたのだ。
よくよく考えれば頷ける理由があった。
さっき三葉会長から孫娘の写真を見せられた時、食い入るように見やがって。
鼻の下なんか伸ばしやがってだらしないったらあらしない。
これだから男って奴はどいつもこいつもスケベなんだ。
そんなに女性らしい女性がいいのか?好きなのか?
確かにいかにも和服が似合いそうな和風美人だったけど、あたしだって・・・。
ふとそんな事を考えていて気づいた。
これじゃまるであたしが嫉妬しているみたいじゃないか。
まさか。
まさか、そんな事がある訳が無い。あるはずが無い。
あたしがアイツに好意を抱いているとでも言うのか・・・。
そんな訳あるか。
あってたまるもんか、こんな奴に!
「あの・・・五十嵐さん?」
「あぁ?なんだよ」
イライラ感を隠す事もせずに話かけてきた島崎にぶつける。
一瞬ビクッとした島崎だったが、なんでもありませんと言ってシュンとなってしまった。
その様子を見ていた五十嵐はため息をつく。
銀行強盗の時に見せた姿は勇ましいものだったのに一度仕事から離れると頼りない姿になってしまう。
裏表があったり、優柔不断や頼りない感じのする男をあたしは嫌いだ。
だからこんな奴に好意を抱くなんてありえない!
そう確信をもつ五十嵐であった。
―?SIDE―
三葉会長が千華警備を訪れていた頃、窓の無い個室で数人の男が話しあっていた。
中でも目立つ人物が2人いた。
1人は体格が良くプロレスラーを彷彿とさせるような大柄な男。
別のもう1人は色白で痩せているが他の男達とは明らかに目つきが違う鋭い眼光の男。
この両者からは一般人ではないオーラがにじみ出ていた。
ひそひそと話しあっていた男達が会話を止め静かになった。
どうやらまた新しい男が入った来たようだ。
新しく入ってきた男はアイパッチを付けた隻眼の男だった。
アイパッチの陰からは古傷であろう痕が見えている。
「そろったようだな」
「・・・」
男の冷たい声に誰かの息を飲む音が聞こえる。
男はチラッとだけその音がした方向を見ると話を続けた。
「今回の我々の仕事は簡単で、なおかつ高額な報酬が用意されている」
高額の報酬という言葉に歓喜が飛び交うが隻眼の男が咳払いで一括する。
「だが油断は禁物だ。情報によれば民間軍事会社が関わっているようだ、各自抜かりなきように・・・」
「「オウ!」」
その言葉を合図にするかのように男達は部屋から出て行った。
全員が出て行き部屋には隻眼の男だけになった。
部屋には他に誰も居ないのだが男は口を開く。
「ネズミが紛れ込んでいるようだ・・・後始末は任せた」
「・・・」
部屋の角、もっとも暗い所から湧いたように現れた男は頷くと部屋から出て行った。




