#21
―国内治安維持局―
会議室に集められた者達は皆険しい表情だ。
その表情から事態の深刻さが伺える。
「それは事実なのか?」
「連絡が途絶えたのがなによりの証拠かと・・・」
「「・・・」」
海外の傭兵部隊に所属する数名の男が国内に侵入したとの一報を受けてから調査を続けていた治安維持局。
治安維持局は国内の治安維持を目的として設立された国軍に属する組織だ。
普通の傭兵部隊に所属する者ならばここまで治安維持局がここまで目を光らせることはない。
今回の事の重大性が伺いしれる。
傭兵部隊の男達の目的を探るために諜報員を潜入させていたがある日を境に連絡が取れない状態が続いた為にこうして緊急会議が開かれたのだ。
1人の男がプロジェクターのスイッチを入れると、とあるエンブレムが映し出された。
白い蛇が2匹描かれたどこかの軍隊の部隊を示すようなそのエンブレムに一同は驚愕する。
そのエンブレムが示す傭兵部隊は白蛇と呼ばれ金さえ払えばどんな汚れ仕事でも行い、某国の内乱に関わったり、他国の重鎮の誘拐に関与したりといろいろと黒い噂の絶えない傭兵部隊であった。
しかし明確な証拠もなく国際傭兵規定にも違反していない事から拘束することも出来ず各国で対応に手を焼いている状態だった。
そんな傭兵部隊が国内入りしたという事で緊張状態が続いているが目的がわからない今無駄に不安をあおるわけにはいかないのでこの事は一般には伏せられている。
「現状で分かっているのは白蛇を率いていると思われる人物が空港で確認された事だ」
白蛇の構成員や規模などは判明していないがこの傭兵部隊を率いているであろう人物は判明している。
その人物の写真が映し出された。
「こいつが・・・」
アイパッチを着けた隻眼の男。
特徴あるその風貌は彼が依然所属していた軍で作戦中におった傷であるとも言われている。
その怪我が除隊の要因とも言われているが正確な情報では無い。
この男に関する資料は少ない。
というのも元米陸軍で対テロ部隊を指揮していたという事もあり情報開示がされていないのだ。
皮肉にも対テロ戦闘のスペシャリストが今はテロリストという訳だ。
結局この日の会議では具体的な対応策が決まらぬまま終わりを告げる。
情報収集の強化や空港や港などの監視体制の継続などが決まったことが唯一の成果と言えるかもしれない。
依然平和ぼけした国だといわれるのはこうした後手後手の対応が原因なのかもしれない。
―千華警備―
千華警備の駐車場には見慣れない車が止まっていた。
正確には車と言っていいのか悩む所ではあるが、あえてここでは車としておこう。
さて、ところ変わって千華警備の会議室では重要な会議が開かれていた。
「さぁお前たち、集まった理由は分かってるね?」
ボスが直々に出向いて会議を取り仕切っていた。
なにかウキウキしているように見えるのは気のせいだろうか?
さて、今回この会議に召集されたのは五十嵐の指揮する第2班のメンバーと第5・6班からサポート役に数名ほど。
はじめての会議に若干わくわくしていた島崎の姿ももちろんそこにあった。
次々と仕事の内容が説明されていく。
どうやら依然訪れていた三葉会長からの依頼を受ける事が決まったようだ。
まず護衛対象について説明があった。
護衛対象は三葉恵里。言わずもながら三葉会長の孫娘だ。
両親は現在海外に居る為、今回は護衛対象から外れるそうだ。
現在在学中の三光女子大内での護衛も必須との事。
まてまて、三光女子大と言えば国内屈指のお嬢様校じゃないか。
というか女子大なら俺はどうすんだろ?
外で待機になるんだろうな。
などと自分の立ち位置について思考をめぐらす島崎だった。
会議も無事終わり今日の午後から護衛を開始する事となった。
と言っても女子大に出向くなら自分の出番はないなと気を緩めていたのが悪かったのか五十嵐さんの機嫌がすこぶる悪いようだ・・・。
普段の2割、いや5割増しで視線がキツイです、ごめんなさい。
逃げるようにして詰所に戻ったが判断が悪かった。
そのまま会社の外に行くなりすれば良かったのが詰所に戻った為に逃げ場を無くしてしまった。
なんだろう、今日の詰所は空気が重い気がする。
冷房がついてはいるがそれ以上に寒く感じるのは気のせいだろうか。
いやな予感が過ったので詰所を出ようとした時に五十嵐さんと鉢合わせしてしまった。
しまった、ボスに呼び止められていたからまだ時間はあるかと思ってたんだけど、よし刺激しないように、刺激しないように。
横にずれて部屋を出ようとするが五十嵐さんも同時にずれる。
あれか、あれだな。お互いに避けようとして被るってやつね。
1歩下がって五十嵐さんに道を譲るが一向に動こうとしない。
というよりもどうも通せんぼうしているようだ。
どういう事だと思っていると詰所の入り口の鍵をかける五十嵐さん。
「え?ちょ・・・皆さんどうしたんですか?」
島崎を取り囲むように並ぶ五十嵐班の面々。
なんだ、いったい何が始まろうとしているんだ!?
得体のしれない恐怖に嫌な汗が背中を伝っていく。
「話を聞いていなかったのか島崎?」
ものすごくドスの聞いた声で話す五十嵐さん。
怖いです。泣きそうです。助けてください。
何か気にさわるような事をしましたかでしょうか?
恐怖におののく島崎だったが更なる恐怖が彼を襲う。
「三光女子大って聞いて嬉しそうにしていたもんな。お前だけお留守番じゃかわいそうだもんなぁ!」
いえ別に嬉しそうになんてしていません、って言っても聞いてもらえそうにないですね。
待機しとくだけなら楽だななんて思った私が間違っておりました。
「一緒に女子大内に入れるように手伝ってやるよ。やさしい先輩だろ?」
謝ろうと口を開きかけた時にそんな言葉が発せられた。
えっ・・・手伝うってなにを?
悪寒しかしないんですけど、すげぇ嫌な予感
おもわず後ずさりしてしまった。
「なにも逃げなくたっていいじゃないか、なに天井のシミでも数えている間に終わるさ」
「そんなセリフを聞く日が来るとは思ってなかった!」
手をワキワキさせながらにじり寄って来る五十嵐さんとその部下たち
とくに南部さんなんか鼻息が荒い。
まさかそんな女性だとは思ってもいませんでした!
「ま、待ってください!皆さん落ち着いて」
「落ち着いているさ、なに痛くしないから、やさしくするから」
「痛くしないって、なにする気なんすかぁ!」
説得しようとしたが無駄だった。みんな眼がマジなんですけど。
ほとんど無口な印象しか無かった村田さんも混ざってるしね!
あぁ、村田さんっていうのは同じ班員の先輩社員でショートヘヤーが似合う無口系文化女子な先輩です!
いつも周りの物事に興味なさそうにしてたし、必ずと言っていいほど見かけた時は本読んでたし、挨拶ぐらいしか話しなかったからコミュ能力低い人かなとか思ってましたけど、すいませんでした!
めっちゃ楽しそうに参加してますね、村田さんと南部さん。
俺、女性不審になりそうです。
いつの間にか部屋の隅に追い詰められてしまった。
「「「さぁお姉さんたちに、全てまかせなさい」」」
「い、いやー!!!」
かくして島崎は五十嵐を始め、南部や村田たちによって改造されてしまう事に。




