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第2話 33歳サラリーマン、泌尿器科に行く。

 陰部とのどがヤバいことになった翌日に、俺は男性専門の泌尿器科を匿名で予約し受診していた。


 診察の前の問診票に、2週間以内に不特定の相手との性交の有無を記入する欄があったので、俺は躊躇なく「はい」に丸をつけた。


 性病と思われる症状がでた直後は、あの女、ふざけんなという気持ちが正直とても大きかったが、こぶしで壁を殴りつけた後、冷静になると、自分のあまりの愚かさに自己嫌悪に陥ったのである。


 そもそも、金目当ての18歳女子に、ホイホイとつられてマッチした上、初見の相手にパパ活してしまった自分の浅はかさ、そしてホテルにいってゴムをつけて行為に及べばよかったものの、生を選んでしまったことへの後悔。


 しかも、いかにも世間を知らなさそうな娘に対して、いいおっさんが春を買うため出会いに行き、性病をうつされたことで、ドス黒い感情をそのままぶつけている自身の未熟さへの嫌悪感。


 悶々とした気持ちを抱えながら、しばらく待っていると、診察室によばれ俺は中に入っていった。


 50代くらいの色黒の壮健な医者が、俺の問診票を一瞥すると、「はじめまして、早速ですが問診票を拝見しました。陰部の痒みとのどの痛みがあって、不特定の相手と性交経験があるということは、率直に言って性病の可能性がかなり高いと思われます」そう告げてきたのである。


「早速ですが、性病検査のオーダーをさせてください。ちなみに相手の女性について何かわかることはありますか」


 俺は匿名で診察してもらっているし、何か隠すこともないので、担当医にこう告げたのである。


「相手はどんな娘なのかは正直わかりません。ただ、18歳らしく出会い系アプリで会って、そのままホテルに行きました」


「相手はお金目当てな感じでしたし、どのくらいパパ活をしていたかはわかりませんが、それなりの人数を相手にしていた感じはありました」


「俺はちょっと自暴自棄になっていた時期だったので、よせばいいのに前戯で彼女の秘部を愛撫したり、ゴムなしで性行為を行ってしまいました」


「今1週間ぐらいで、陰部に猛烈な痒みがあり、のどにも痛みがでてきて、結構きつい状態です」


 医師はカルテを記載しながらこう答えた。


「うちはご存じかもしれませんが、完全自費で匿名での診察もOKです。ただお話からして、かなりの種類の性病検査が必要となります。それなりの費用がかかると思いますが大丈夫ですか?」


 俺は躊躇しながらも値段を確認することとした。


「ちなみに全部を検査するとおいくらぐらいですか?」


「6万円から7万円ぐらいです」


「マジですか?ああっ、高いけど……でもそれでお願いしたいです」


「それでしたら、男性の方なので20種類のコンプリートパックで検査しますね」


「これは性器だけではなくのどの検査も含んでおり、例えばHIVや梅毒、肝炎やクラミジア、淋病やトリコモナスまで幅広くカバーしていますので、しっかりと診断できますので、こちらで進めていきます」


 俺は勧められるまま、性病検査コンプリートパックを受けることにした。


 検査は採血、唾液検査、尿検査と多岐に渡り、しばらく待合で待っていればその日のうちに検査結果を教えてくれるとのことであった。


 俺は、股間の痒みとのどの痛みを我慢しながら、2時間スマホをいじりながら時間を潰していると、ほどなくして診察室に呼ばれることとなった。


 そこで、男性医師から告げられたのは次のような検査結果であった。


「やはり性病にかかられていました。クラミジア感染症、淋病、そしてカンジダ症が陽性でした。今から治療のための薬をお出ししますので、そちらも自費になりますがよろしいですか」


 ドクターはそれだけを淡々と告げてきたので、俺も仕方なく「了解しました。それでは薬のほうも宜しくお願いします」そう答えるのがやっとだった。


 薬を受け取り、当日の支払いは検査代7万円、薬代1万5千円、しめて8万5千円とのことだった。一晩の過ちとしては痛すぎる出費に、俺は泣きそうになりながらも不思議と頭の中は冷静なことに、自分でも驚いていたのだった。


「ああ……俺何やってんだろう。こんな好きでもない女と一晩共にして、こんな大金払って、本当に今の俺終わってんな」


 でも同時に、何かすっきりした気持ちもあり、落ちるところまで落ちた自分だからこそこれからは上がるだけだ、底辺を知ったような気持ちになれたのである。


 あとあのアスカという娘に対して、怒りや感情の爆発はなく、むしろ俺と同じだけの性病にかかっている訳で、今後もゴムなしで病気をばらまいていくことについて、余計なお世話なんだろうけど、放っておけない、そんな気持ちが出てきたのだ。


 そういえば、あの出会い系アプリをもう開いていなかったけど、もう一回チェックしてみよう、そんな思いになり、俺は再びアプリを立ち上げたのである。


 数分後、再びスマホの画面にスクロールされる女の子たちの姿、彼女たちはやはりまるで使い捨てのように消費される商品の様だと、俺は感じてしまった。


 しかし今回の俺には、ちゃんと探したい目的の相手がそこにいたのである。


 検索画面を開き、前回と同じヤリモクでもOKそうな女の子を条件で検索をかけてみる。人気上位には当然出てこないので、画面をスクロールしていくと、やはり人気下位のところでアスカの名前が出てきたのである。


 俺はHの対象としてではなく、何というか人としての憐みというか、同情というかそんな気持ちで彼女と接したいと感じていた。


(いや……違うな)


 (本音を包み隠さず言えば、自分より下の状況というか立場の人間をみて、俺はまだマシだと安心したいという気持ちだけだったのかもしれない……)


 ただ、俺はそれでも再びメッセージを送ることにした。


「こんにちは、この前お会いした誠といいます」


「また会いたいと思い、メッセージを送りました」


「お手当なども含めて、条件をやりとりしたいので、良かったら連絡をください」


 返事が来るかどうかもわからないけど、なぜか彼女が人として放っておけないような感じがして、もう一度連絡をとってみた。


 その当時は、そのメッセージが俺と彼女のこれからを変えることになるとは、全く思いもしていなかったが、ここから運命の歯車が回りだしたのである……

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