始めてのお泊まりその1
カルナと付き合い始めて、一週間が経った。
この一週間、本当に幸せだった。
毎朝の「おはようございます」で始まり、その日にあった出来事を話し合う。
そして最後は「おやすみ」で一日が終わる。
たったそれだけの事なのに、俺は毎日が楽しくて仕方なかった。
そして今日は、付き合って初めての休日。
カルナと会う約束をしている。
朝六時に目が覚めた。
待ち合わせは昼過ぎだというのに、二度寝なんてできそうにない。
仕方なく外へ出て散歩をする。
いつもと変わらない道。
いつもと変わらない景色。
それなのに、今日は何もかもが少しだけ輝いて見えた。
家に戻り、シャワーを浴びる。
服を着替え、髪を整え、鏡を見る。
……悪くない。
そう思って部屋を出ようとして、もう一度鏡を見る。
それから五分後、また鏡を見る。
我ながら気持ち悪い。
でも仕方ない。
彼女に会うのだ。
しかも、一週間ぶりに。
結局、待ち合わせまでまだ一時間以上あるというのに、俺は家を飛び出していた。
カルナの家の近くのコンビニに着いたのは、約束の二十分前だった。
「着いたよ」
そうLINEを送ろうとして、俺は手を止める。
まだ少し早い気がした。
待たせるのは論外だけど、早く着きすぎるのも何だか気持ち悪い。
俺はコンビニの隅にある喫煙所へ向かった。
タバコに火をつける。
一本吸い終われば、ちょうどいい時間になるだろう。
そう思っていた時だった。
──ブルッ。
ポケットの中でスマホが震える。
画面を見る。
カルナからだった。
『もしかして、コンビニに居る?』
思わず周囲を見回す。
なんで分かった?
キョロキョロと辺りを探していると、
「ぷっ」
どこからか笑い声が聞こえた。
振り返る。
電柱の陰から、ひょこっと顔を出したカルナがいた。
俺と目が合った瞬間、
「見つかった!」
そう言って、ニヤニヤ笑っている。
反則だ。
一週間ぶりだというのに、そんな満面の笑顔を向けられたら、こっちが恥ずかしくなる。
「久しぶり」
なんとか平静を装って声をかける。
「久しぶり!」
カルナは相変わらず元気だった。
その笑顔を見ているだけで、自然と口元が緩んでしまう。
「とりあえずコンビニで何か買う?」
そう聞くと、カルナは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせた。
「わかってるでしょ!?」
「温かいお茶!」
七月。
外気温は三十度を超えている。
そんな日に温かいお茶を飲みたがる人間を、俺はカルナ以外に知らない。
「まだそれ言うの?」
呆れながら笑うと、カルナは少し頬を膨らませた。
「だって思い出の品やもん」
思い出の品。
そんな大げさな物じゃない。
ただのコンビニのお茶だ。
でも。
あの日、カルナを送った帰り道。
温かいお茶を渡した事から、俺たちは少しずつ近づいていった。
そう考えると。
ただのお茶なのに、少し特別な物に思えてくる。




