大空の怪
相模湾の1千メートル上空に、美しい隊列をととのえたジェット戦闘機3機が飛行機雲をひきながら飛んでいた。
横須賀の航空防衛隊所属の戦闘機F-15Jイーグルだ。
1時間前に消息を絶った海洋調査船『つくよみ』からの連絡が途絶えたためだ。
「この辺りの海域のはずだが……『つくよみ』の船影が見つからない」
別のパイロットが無線で、
「もしかして、沈没したのではあるまいな……」
「まさか……最新鋭の船だぞ」
そのとき、三機目の操縦士が、
「あれはなんだ!?」
海面に水飛沫をあげて何かが浮かんできた。
黒褐色の物体は鯨にも、潜水艦にも見えたが、それとも違うようだ。
F-15Jイーグルの操縦士たちがいぶかしんでいると、黒褐色の物体の一画から、強烈な光が発生した。
紫色の光条が空中に走ったかと思うと、ジェット戦闘機の最後尾の機首にあたった。
すると、戦闘機は機首から尾部にかけ、まるで鋭利なメスで切断したかのように縦に真っ二つになってしまった。
戦闘機の残骸は切断面から黒煙をたなびかせながら、くるくると宙を舞いながら、海中に落下していった。 海面に没すると爆発音が聞こえた。
「莫迦な……」
一番機と二番機のパイロットは僚機の無惨な最後が信じられず、茫然と仲間の最後を見届けた。
「これは……レーザー兵器なのか? 敵国の潜水艦による攻撃に違いない!!!」
「くそっ!! 仇討ちだ!!」
「待て、攻撃するな!!」
一番機操縦士が止めるにもかかわらず、二番機のF-15Jイーグルは急旋回して引き換えし、謎の怪物体にめがけ、短射程空対空ミサイル、AIM-9Lサイドワインダーを放った。
ミサイル先端に搭載したテレビ・シーカーを経由して標的に命中させる可視光画像誘導装置がついていて、怪物体に確実に命中した。
閃光を放ち、ミサイルは爆発し、黒煙をあげた。
「ざまをみろ!!」
「莫迦!! 武力行使の新三要件を忘れたか!!」
武力行使の新三要件とは……
1、我が国に対する武力攻撃が発生したこと。又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。
2、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他の適当な手段がないこと。
3、必要最小限度に実力行使にとどまるべきこと。
……である。 これらが明確にならないと、集団的自衛権の行使が認められない。
たとえば、北朝鮮がミサイルを一基発射して、東京に着弾し、百人が亡くなったとする。
北朝鮮が宣戦布告をしたわけでなく、一発のみの発射と着弾であることから、これは組織的でも計画的でもないと判断される。
そして、北朝鮮軍に対日攻撃命令がでたか、かの国に確認しなければならない。
日本が組織的対応のできないうちに、第二、第三の攻撃、たとえば十数発以上のミサイルで攻撃されれば、組織的・計画的と認めることができる。
それでやっと、防衛出動が発動され、防衛隊は対応を行える。
なので、かなり大きな損害が出るまで日本の防衛隊は反撃できないと考えられている。
無闇に反撃すれば、核ミサイルでの報復攻撃が想定されるからだ。
もっとも現在の日本には、ミサイル攻撃のほとんどを探知して対処する装備があるので、ミサイルが都市に着弾する可能性は限りなく低い。
この装備は世界中でわずかに三ヶ国、日本・米国・イスラエルにしか存在していない。
「以前にも入ったばかりの新兵が上官に発砲する事件があったが……それ以上の失態だ!!」
「お言葉ですが……自分は後悔しておりません!」
「国際会議で紛糾するぞ!! 下手をすれば未知の国と開戦騒ぎになってしまう……きさま、軍法会議を覚悟しておけ!!」
「ですが、自分は……」
二番機の操縦士が断言する途中で通信が切れた。
黒煙のたなびく海面から、黒い怪物体が見えた。 怪物体はびくともせず、またも紫の光線を空中に放った。
二番機のジェット戦闘機はまたも真っ二つに引き裂かれ、黒煙をたなびき、ひらりひらりと扇のように海面に落下して爆発した。
一番機のF-15Jイーグルが大きく旋回して、怪物体から距離をとり、基地に帰投すべくスピードを出し、無線で連絡した。
「横須賀基地につぐ……北緯○○東経××にて、怪物体に襲撃さる……」
再び紫の怪光が発生し、残ったF-15Jイーグルは無惨に破壊されてしまった……
久しぶりに続きを書きました。
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