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孤島

 第16異跡が存在する孤島は直径約2㎞、海岸付近には標高360mの山が存在している。山に近い海岸から孤島に降りれば目前には金属の壁が露出する第16異跡が存在している。

 第16異跡は幅と奥行が約480m、高さ約230mのドーム型の異跡で他の異跡と見比べれば小さく見られるのだが、この高さは地上に出ている高さであり、幅と奥行も山から見えている長さでしかない。

 地上に出ているのほんの一部分でしかなく、地中深くには異跡の一部が広がっている。幅と奥行は孤島にある山から一部が露出している部分が判明しているだけで、今だ判明していない部分も含めればかなり大きな異跡である事が考えられている。

 現在の調査では入口の層を基準とし、上層部は14層、下層部は9層まで解明されている。異跡探求者トレジャーハンター本部から近い事もありもっとも調査が進んでいる異跡である。

 今回の調査は上層部の進路確認。今までの調査で判明している上層部奥地までの確認である。さすがに奥地の確認は新人探求者ハンターに任せるのは荷が重い為に経験を積んだ探求者、もしくは同行して行っている。


 第16異跡をサマク035号の甲板から見ていたサラはポツリと呟いた。

「本物みたいですね」

「は?」

 サラの言葉の意味が分からず横に立って同じ様に異跡を見ていたホルスが声を上げた。

「カモフラージュで山を作ったのか、もしくは山に作ったのか……この場所は作ったと考えた方が……」

「ちょっと待った!本物とか作ったとかどうゆう事だ?」

 1人呟くサラにホルスは理解が付いて行けず慌てて尋ねた。

 ホルスとは反対側にサラの横に立つノーマも耳を立てる。

「いえ、言った通りです」

 サラは当然と言う様に答える。

「遠目からで申し訳ないのですが、山から露出している外装が艶消しされていて作りが綺麗なんです。それに潮風に当てられているのに塩害による腐食もしていない。ダミーですと艶消しされていても少しくすんで見えたり材質もコーティング以外は1つ下の材質を使われているのです。それに、破壊を前提としているので外装よりも内装の作りが凄く甘いのです」

「……分かるか?」

 サラの説明にホルスは目を丸くしてノーマに尋ねる。ノーマは首を横に振る。ホルスも同意見のようでサラの言葉1つ取っても全く分からない。

 それもそのばず、サラの言った事は異跡探求者が認知していないし気づいてもいない事である。第一、理解しようとすれば本物やダミーとはどうゆう事なのかに始まってしまう。

 故に、サラの説明をホルスとノーマは半分聞き流しただの憶測、異跡を見た感想程度で捉えていた。

 しかし、ホルスとノーマは未だに知らないし知らされてもいない。サラが古代人、今では異跡と呼ばれるコロニーの住人であることを。

 サラはコロニーの知識が異跡探求者以上にある。目の前の第16異跡であるコロニーをダミーではなく本物である事を見ただけでそれに気づいていた。

「それより、破壊って何!?」

 今更ながらサラの説明の一部に突っ込んで尋ねるホルス。

「おーいホルス!」

 その時、背後からホルスを呼ぶ声が聞こえた。

「もうそろそろ準備してくれ!」

「おう、今行く!」

 ホルスを呼ぶ知り合いの調査部リサーチにホルスは振り返って言う。

「それじゃ、後でな」

 ホルスはサラとノーマに言うと異跡調査の準備の為に船内へと入って行った。

「けれど……」

 サラは甲板の手すりから身を乗り出す様にコロニーに開けられた穴を見た。

「露出していたとはいえ、どうしてあそこに穴を開けたのですか?」

「穴?もしかして入口の事?調査であそこが入口かもしれないから開けたんだけど」

 サラの質問に答えるノーマ。

 ジンと話している時と同じ様に欲しいと言うサラの要望により職務以外敬語は使っていない。

 異跡に入口を開ける為には調査部が精密に調査し、入口と思われる場所を機材で無理矢理こじ開けている。こじ開けられたその入口を異跡探求者は調査の入口として使っている。

「あそこは正規の入口ではありませんよね?」

「え!?」

 サラの発言に今度はノーマが目を丸くして驚いた。

 無理矢理開けた入口ならともかく、正規の入口ではないとはどうゆう意味なのか。精密に調査をしているのだからそこが入口ではないのか。

 ますますサラと言う人物が分からなくなる。

「地層はどうなっていますか?」

「ちそう?」

 どこかで聞いた事はあるが思い出せない単語に目を丸くして頭を悩ませた。

 と、ノーマは思い出したように大きな声を上げた。

「あ~、思い出した!地層、うん。今資料ないから分からない」

 と、サラに言った。

「けど、何で地層?」

 ノーマは首を傾げた。

 一応、全ての調査において、異跡の年代確認をする為に地層を確かめるのだが、それの資料を何故求めたのか分からない。

 サラはノーマの言葉を聞いてガッカリしたが聞きたい事がまだあり質問を変えた。

「穴の近くまで行く事は出来ますか?」

「え!?」

 分からない所に今度は違う質問をされた。

 穴の近く。それは入口を指している。不意の質問に驚いたノーマだがサラが異跡に入る気ではないかと考え表情を強ばらせる。

「入るつもりはりません。ジンさんにきつく言われましたし。ただ近くで見て確かめたいのです、どの場所に開けたのか」

 ノーマの表情の意味をすぐに理解したサラは誤解を解く為に理由を述べた。

 サラの言葉にノーマは考えながら口を開いた。

「今は無理ね。見送りの準備に入って忙しいくなったし、もし勝手に入られたら困るし……」

 ノーマはまだサラと言う人物を知らないし、さっきからの発言で更に分からなくなっていた。

「ジン達が異跡に入った後なら多分……」

「本当ですか?」

 ノーマの呟く声にサラが目を輝かせて覗き込む様に顔を近づけた。

「それでは、コロニーの周りも見て見たいので同行お願いします」

 笑みを浮かべるサラの発言にノーマはまだ大丈夫とも許可を出していないのに、これはとんでもないことを言ってしまったと後悔した。


  ◆


 そんなやり取りが甲板で交わされているとも知らないジンは桟橋を渡り船内へと入ると、1つの扉の前に立ち、扉を開いた。

「ようやく戻って来たか」

 扉の開けた音を聞いて装備品の点検をしていたホルスが振り返って言った。

 ジンは無言のまま後ろ向きに扉を閉めると、そのまま自分の装備品が入っているアタッシュケースを開けた。

 アタッシュケースの中身は調査部がギリギリまでメンテナンスをしたであろう第28異跡で無事だった5丁の拳銃と9つの銃身。そして、4種類の弾倉が3つずつ、合計19あった。前回なくした分も補充され、ジンが調査で装備する基本数が納められている。

 それを1つ1つ手に取り弾丸があらかじめ弾倉に入っているか確かめる。

 それを見たホルスはジンの性格上しばらく口を開かないと分かっており、少し肩を下げると自分の装備品の点検に戻った。

 全ての弾倉に弾丸入っているのを確かめると、アタッシュケースの横に置かれた横に長いアタッシュケースを手に取り、蓋を開けた。

 中には連絡をして準備させた探求者の支給品であるライフルが1丁と弾倉2つ納められている。

「珍しいな」

 それを見たホルスが少し驚いた様に声を上げた。

 ジンは目線を一瞬だけホルスに向けると、そのまま目線を落として一回り大きいアタッシュケースに納められている2丁のライフルに目を止めた。

「お前に銃を貸さない為に頼んだんだ。また折るだろ」

 ぶっきらぼうに言うとライフルの弾倉を確かめ始めた。

 ホルスと何度も組んでいるジンだから分かる。ホルスは、よくライフルを折げて壊すと。ついでに、ジンと組むとそれに加えて銃を貸して欲しいと頼んでくる事を。


 ホルスはライフルの扱いが非常に乱暴なのである。今でもどの様に扱い方を間違えればライフルを折ってしまうのか本当に分からない。

 ホルスに支給された専用のライフルは重いものの丈夫に作られ折れにくくなっている為に回数は減っている。支給品のライフルを使用していた時は調査で毎回壊しては同僚や上層部の頭を悩ませたトラブルメーカーであった。

 しかも、ジンにいたっては故意か分からないが壊れてしまうと拳銃を装備しているにも関わらずジンの拳銃を貸して欲しいと頼んでくる。

 ジンは貸したくない為にホルスと組む時は必ずライフルをホルスに貸す為に持ち込む様にしている。これも壊れてしまった場合は、状況次第だが、貸さないようにしている。

 とある探求者が皮肉ってこの様に言った事がある。

「2代目《壊し屋》だな」

 と。あいにく、この皮肉は二つ名にはならなかったが、ホルスはそれでよかったと呟いていた。


 ホルスは申し訳なさそうに呟いた。

「あ~…ジンに気使わせたか……」

「勘違いするな」

 だが、ジンは否定すると弾倉を確かめていた手を止めてホルスに顔を上げた。

「今回は遠距離射撃が必要でたまたまライフルが適していただけだ。お前の事は二の次だ!」

 言うだけ言うと再び弾倉を確かめ始めた。

 ホルスは困った表情を浮かべた。

(本音なのか気を使ったのを悟られたくないのか……)

 これ以上は追求はしない。したらしたでジンは答えないだろうし、答えたら答えたで悪態をつくだろう。

 ジンとパートナーとして組みたいと言ったホルスの理解の深さが見てとれる。

「そういや……」

 ここで思い出した様にホルスが声を上げた。

「ジン、サラちゃんって何者なんだ?」

 その言葉にジンの動きが止まった。

「さっき意味分からない事を言ってたんだよな。異跡を見て本物やダミーとか」

「……本当か?」

 ホルスの言葉にジンは手に持っていた弾倉を置くと尋ねた。

「ああ……って、まさか興味持ったのか!?本当に今日は何なんだ?ジンの珍しい行動が……」

「あぁぁくっそ!さっさと手ぇ動かせ!装備確かめろ!」

 思い出しただけなのにまさか食いついてきたジンに驚きと共に面白いと感じたホルスは少しいじろうとしたが、ジンが早くも根を上げた事でホルスは言うのを止めた。また殴られたくないから。

(本物か)

 ジンはもう1つの弾倉を手に取り弾丸を確かめながらホルスの口から述べられた言葉を考えていた。

(本物と言う事は、28異跡とは違うと言う事か……?)

 ジンはサラの正体を分かっており、本物と言う意味が何を指しているのか薄々感ずいていた。

 サラは第28異跡をダミーと言っていた。そして、第16異跡を本物と言った。どうして本物と見分けられるのか分からないジンだが、今はそれだけを記憶に留めておく。今は異跡内部の調査である。本物の有無はその後で確認すればいい。

 ライフルの弾倉を確かめ終えるとウェストポーチに手を伸ばし確認を始めた。

 ジンとホルス、2人の準備はもうそろそろ終わろうとしていた。


  ◆


 サラは異跡付近に設けられた小屋の中で初めて電話を使っていた。

『第16異跡の地層?』

「はい」

 電話の相手は情報解析部アナライズ第2班副長エリシュカである。

 電話をするきっかけとなったのはサラがどうしても地層について知りたいとノーマに粘り、地層の資料が異跡探求者本部にある事を知ると、ノーマを連れて船を出て、準備をしていた通信部リポーターに頼み連絡を繋いだのだ。

 電話が繋がった直後は本部から突然いなくなった事とそれにより心配をかかせた事で叱られたが。

『まあ、地層なら問題ないから教えられるけど……どうして地層?』

 ノーマも疑問に思っていた事を電話越しで尋ねるエリシュカ。

「少し気になる事があるんです」

 エリシュカの質問に本命を言わずに言った。

 だが、その言葉を聞いたエリシュカから何も発せられない。

 しばらく沈黙が続いく。そして、

『もしかしたら、サラさんの気にしている事は、私が考えている事と同じかもしれないわね』

 エリシュカの言葉にサラは期待の表情を浮かべた。

『副長、言われた通りの資料です』

『ありがとう』

 電話越しからその様なやり取りが聞こえ、資料と思われる紙が擦れる音が僅に聞こえる。

『大雑把な区分だけど、第16異跡の地層は表面の砂地を除いて、黒色と赤色土の混合が50~70m、砂岩60~110m、砂泥80~120m……』

 それから何種類もの地層と層厚を順に述べていった。サラは静かに全てを聞くとすぐに口を開いた。

「思った通りです。エリシュカさん、ありがとうございます!」

『えっ!?ちょっ……』

 1人納得して頷くとエリシュカの反応を聞かずに受話器を置くと、すぐさま1人で何かを考え始めた。

(後は穴がどこに開けられたかですね。これが分かれば恐らく……)

「あ~、何か考えている所ごめん」

 サラが何について考え理解しようとしているのか早々に諦めたノーマは声をかけた。

「そろそろジンが行く頃だと思うけど、お見送りする?」

「します!」

 ジンとホルスが準備を終えて桟橋を歩いているのを見たノーマ がそろそろと思い言った言葉にサラはすぐに頷いた。

「それじゃ、行こう」

 今すぐにでも催促しそうなサラにノーマは誘うと一緒に小屋から出た。


 桟橋を歩きながら、ジンとホルスは異跡の入口に集まっている後方支援サポーターを目にした。

(しっかし、相変わらず集まってるな~)

 ホルスは今では当たり前となった見送りとその様子に少し呆れていた。

 探求者の見送りは異跡の担当となった後方支援全てが見送る事が一にも二にも優先される事である。これは、危険を背負わせ死地に赴く探求者にしてやれる最大の敬意からである。

「お待ちしていました」

 今回のまとめ役で責任者である調査部の男、ノーマがリーダーと言っていたトメスが出迎えた。

 その出迎えに2人は足を止めた。2人の様子は既にポーチや装備品を身に付け、ジンの背にはライフルが1丁、ホルスの背中に交差するように2丁背負っていた。

「ジンさん!」

 その時、特定人物、ジンを呼ぶサラの声にジンは僅に目を向けた。

「お、サラちゃん!船にいないと思ったら。もしかして小屋にいたのか?」

「はい」

 ジンが声をかけない為に仕方なくノーマと共に駆け寄ってくる2人にホルスが声を上げて歓迎した。

「それと、見送りに来ました」

 サラは笑顔で言うとジンを見た。既にジンもサラに顔を向けていたが、ホルスと違いあまり歓迎している様には見えなかった。

「ジン、せっかくサラちゃんが見送りに来てくれたのに何だその表情は?」

「うるせぇ」

 ジンの肩に腕を回してぼやくホルスだが、ジンはすぐに退かすとそっぽを向いた。

 ホルスは仕方ないなと思いながら肩を小さく下げた。

「まあ、悪気はないと思うから気にしないでくれ……」

 大概この様に振る舞われると相手は気を悪くするのを知るホルスはジンに悪い印象を持たないで欲しいとサラに言うと、サラは首を横に振った。

「大丈夫です。ジンさんは優しいですから」

 その言葉に安心したホルスだが、ジンが女の子に優しくしている所を知らないし思い浮かばないホルスは、まだ2時間と経っていないのにジンの意外な一面に驚き、口を僅に開けていた。

 それは近くで聞いていたノーマも同じで驚いている顔をしていたが、心の底では笑っていた。

 そんな2人の様子と考えを読み取ったジンは不機嫌な表情を浮かべるがノーマには言う事がある為に口を開いた。

「ノーマ、しばらくの間頼む」

「分かってる。だけど、こうゆう時だけ名前で言うってどうなの?」

 ジンの言葉に頷いたノーマだが、ジンが自身の名前を言った事に少しだけ驚きつつも呆れていた。

 ジンはあまり他人の名前を口に出さない。複数と話している時かどうしても物事を頼む時、そして、悪態をつく時か誰かに心を許している相手でなければ言わない。故に、ジンが名前を言う事はあまりない。

「それでジン、サラさんって本当に何者?」

 そして、近寄るなり小言で少し早口で尋ねた。

「今度は何を言ったんだ?」

 ジンはまたかと思った。だが、サラが疑問に思う特定の、それらに類似する単語を言って尋ねるという事は、今の異跡探求者にはないサラの知識に引っ掛かっているからである。

 サラの質問を最初はことごとく無視し続けてきたジンではあるが、灌漑農法と言う単語を口に出した事で少し考えを改め、疑問に思っている内容をまだ1度も答えてはいないが、一応聞く態度をとっている。

「地層について聞いてた。それでさっき小屋……」

「ノーマ、時間だ」

 ジンに尋ねられサラに聞かれた事を言っていたが、トメスが止めた。

「はい!」

 ノーマは返事をするとホルスと話しているサラの肩に手を乗せた。

「もう時間です」

 ノーマの言葉にサラはジンを見た。ジンの表情は強張っていたが、目はサラを見ていた。

 サラはジンになんと声をかければいいのか分からなかった。ジンの目は確かにサラを見ていたが、何かを探っている様な目である。

 その威圧感にかけようとしていた言葉を忘れて何と言えばいいのか分からなくなってしまった。

「大丈夫」

 そんなサラにホルスが声をかけた。

「少し時間がかかるけど、ちゃんと調べて戻って来る」

 ホルスは笑みを浮かべて言うと、ジンに向き直った。

「と言う事だから、早く終わらせようぜジン!」

 ホルスの生き生きとした言葉にジンは短い溜め息をついた。同意をしたいが、安易に約束するなと思ったからである。

 トメスが前に1歩踏み出した。

「御武運を」

 その言葉にホルスは片手を上げ、ジンは無言で第16異跡の入口から内部へと入って行った。

 サラは心配そうにその後ろ姿を見ていた。


  * * *


 ジンとホルスの姿が見えなくなるとすぐに後方支援は迎えの準備に取りかかっていた。

 本来なら入口付近には誰もいないはずなのだが、入口を丹念に調べるサラとその様子を見るノーマが見送りの後も残っていた。

(やっぱり)

 コロニーに開けられた穴を見たサラは改めて本当の入口ではない事を確認した。そして、穴がどこに開けられたのかもおおよその予想がついた。

 穴が開けられた場所は外に面していた廊下である。入口ならそれっぽい外装をしているのだが、1000年という歳月で孤島が変化してしまったのでは仕方がないと思った。

 すぐにコロニーの本当の入口がありそうな場所を考え始めたると左側頭上に目を向けた。

 そこにはサラの目に少し凝った様な外装が施されていた。

(さすがにそこでは気づきにくいかもしれませんね)

 そう思うとずっと様子を見ているノーマに振り向いた。

「もういいの?」

「はい」

 ノーマの言葉に頷くとサラはもう1つの考えを証明する為に言った。

「異跡の裏側に行ってみたいのですがいいですか?」

「裏側?」

 サラの言葉に驚き考えるも、ノーマは自身もいるから大丈夫と考えて頷いた。

「ありがとうございます」

 サラは嬉しそうな表情でお礼を言った。

 この時までは誰も知らない、サラしか知らない事である。

 サラが述べた本当の入口の他にも入口が存在する事を。


  ◆


  露出しているコロニーの裏側は岩肌で、所々に細い幹の木が生えていた。

「カモフラージュでしょうか?それとも……」

 それを見たサラはそう呟き思考に入ろうとするのを抑えて斜面になっている岩肌を少し登りながら回りを見回した。

「この辺りのはず」

 そう言って足を止めた。

 裏側に回ったサラが最初にした事は、途中で拾ったここよりも幹が太く育った木の太い枝で岩肌の地面を叩き回る事であった。

「上手くいくか分かりませんが」

 そう呟きながらサラは特定の場所を叩き続けていた。

 それを見ていたノーマは首を傾げた。

(何をしたいの?)

 サラが何故木の枝で岩肌を叩くのか、何故特定の場所を叩き続けているのか分からないでいた。

 その時、カチッと岩肌の一部の表面が中心から裂く様に浮き上がった。

 大体30㎝の表面、蓋がその下にあったモニターと数字を打ち込む端末を隠していたが、叩かれた事で開いたのである。

 サラはその場でしゃがみ確認すると、探している物がここにある事を突き止めた。

「何これ?」

 一方、始めて見る物に何をするものなのか理解出来ていないノーマは見入る様に呟いた。

 そもそも、何故岩肌が裂けて下から正体不明の物が出てきたのか分からない。

「ノーマさん、危険ですの私の反対側にに来てください!」

「危険?」

 そんなノーマにサラは説明せずに自身の元に来る様に言った。ノーマは疑問に思いつつもサラの後ろを回り反対側に来ると再び不明のそれを見た。

 そんなノーマに構わずサラは数字が書かれている端末のボタンを押した。

「待って!」

 ノーマはすかさず止めた。

 これは異跡探求者が把握していない事で使い道も分からない。そんな物を一般人で情報解析部第2班の預りであるサラがに触れさせる訳にはいかない。

 だが、サラは気にせずに押す。押し続けた。

 そして、ガタンと2人の付近で大きな音を立てて広い範囲で岩肌が浮き上がった。

「えっ?」

 ノーマは目を丸くした。

 だが、それをよそに岩肌は2人とは反対側にスライドし、そこにあった広い空間を露にさせた。

「な……!?」

 サラが覗き込んだのを見たノーマは急いで内部を覗き、その光景に驚愕した。

 広い空間がただ広く広がっていた。

 内部は恐らく暗かったのだろう。ノーマのよく知る照明器具はどこにも見当たらず、外から差し込まれる光で周りは照されているも、奥の方は薄暗く、光が届きにくい程に広い事が見てとれる。

 そして、その空間にノーマの知識にはない鉄で出来ていると考えられる乗り物が2台。

 走るのか飛ぶのか浮くのか分からない。

「何これぇぇぇぇぇ!!」

 予想外の事にノーマは大声で叫び出した。


異跡のある孤島をどうするのか悩みました…


作中で出した地層は蓄積された土(層)の種類と各層を何mにするかとど考えて資料をみながら書きましたが、何か間違っていたり長い気が今もします(ー_ー;)

地層と言えば理科の授業!懐かしいです。本物の地層を見てみたい…


所で、日本では旧石器時代以前の人骨が発見されないってご存じですか?

実は、日本の地層は酸性土壌で人骨が溶けてしまい発見されないんです。海外と土が違うので見つからない事が残念です。


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