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『銀河の果てでも博多弁』  作者: リンダ


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25/28

戦争より鍋

 第25話

「戦争より鍋」

 アッカンベーショックは終わらなかった。

 むしろ、そこからが本番だった。

 ノクティア共和国の旧政権中枢では、最後の抵抗が続いていた。

「ヴォルグ艦長を反逆罪で訴追しろ!」

「リーナ副艦長も同罪だ!」

「軍の規律を守らねばならん!」

 だが、その発表が流れた瞬間。

 ノクティア国内の世論は一気に沸騰した。

 港町の食堂。

 店主がテレビを見て立ち上がる。

「はぁ!?」

 常連客も怒る。

「戦争止めた人を処分するんか!」

「撃たんかったから今こうして飯食えとるんやろ!」

「何考えとるんや!」

 別の客が真顔で言った。

「艦長処分するなら、わしもアッカンベーする」

「もうしとるやろ」

「ほな二倍する」

 農業ドーム。

 漁港。

 工場。

 学校。

 病院。

 どこでも同じだった。

「ヴォルグ艦長を守れ」

「リーナ副艦長を守れ」

「戦争より鍋」

「分け合う食卓を守れ」

 という声が広がっていく。

 一方。

 アステリア。

 リングポート交流センター。

 ヒカリがニュースを見ていた。

「艦長さん処分?」

 ミラも眉をひそめる。

「助けなきゃ」

 ユウが静かにうなずく。

「うん」

 アレンが聞いた。

「どうするん?」

 ヒカリは真顔で立ち上がった。

「簡単たい」

「嫌な予感しかしない」

「ノクティア政府に通告する」

 ユウが補足する。

「平和的にね」

 ヒカリはマイクを握った。

 その日の特別放送。

 銀河中継。

 視聴者数は過去最高を更新した。

 ヒカリが堂々と宣言する。

「ノクティア政府の皆さん」

 ミラが続く。

「ヴォルグ艦長とリーナ副艦長は、戦争を止めようとしました」

 ユウが静かに言う。

「処分ではなく、感謝されるべきです」

 ヒカリは指を突きつけた。

「もし艦長さんたちを処分するなら」

 銀河中が息を呑む。

「うちらが直接行く」

 ノクティア政府関係者が顔をしかめる。

「何をする気だ」

 ヒカリがにっこり笑った。

「極上スーパーコチョコチョ」

 会場が爆笑した。

 ミラまで吹き出す。

「ヒカリ!」

 ヒカリは止まらない。

「官邸に突入して、首相経験者も閣僚も全員まとめてコチョコチョたい」

 ユウが真面目な顔で言う。

「なお、腹筋への影響は保証できません」

 アレンが頭を抱える。

「脅迫文が平和的すぎる」

 ノクティア本星。

 官邸。

 元閣僚たちは顔を見合わせた。

「まさか来ないだろう」

「いや、あの三姉妹やぞ」

「来るかもしれん」

「スーパーコチョコチョって何なんや」

「知らんが怖い」

 その場にいた若い職員が小さく言った。

「艦長処分やめません?」

 全員がうなずいた。

「やめよう」

「やめよう」

「腹筋は守ろう」

 数日後。

 正式発表が出た。

 ヴォルグ艦長。

 リーナ副艦長。

 そして艦隊乗組員たちは、不問。

 むしろ和平交渉代表団への参加が決定した。

 リングの空の下。

 ヴォルグ艦長は苦笑していた。

「人生で初めてだ」

「何がです?」

 アレンが聞く。

「処分を止めた理由が、スーパーコチョコチョだったのは」

 全員爆笑。

 リーナ副艦長も肩を震わせる。

「軍学校の教科書には載らないでしょうね」

 ヒカリが胸を張った。

「載せるたい」

 ミラが笑う。

「何の教科に?」

 ユウが静かに答えた。

「たぶん歴史」

 その夜。

 リングの空は穏やかだった。

 艦影はない。

 警報もない。

 代わりにあるのは、鍋の湯気と笑い声。

 ヴォルグ艦長がカニをつまみながら言った。

「戦争より鍋」

 リーナが続く。

「命令より対話」

 アレンが微笑む。

「奪うより分け合う」

 ミラも頷いた。

「そして」

 ヒカリが元気よく叫ぶ。

「スーパーコチョコチョは最終兵器たい!」

 全員が笑った。

 その笑い声は、リングの空へゆっくりと溶けていった。

 次回予告

 アッカンベーショックにより、ノクティア共和国では新しい選挙が行われることに。

 和平派候補と強硬派候補が激突。

 一方、ミラとアレン、ヒカリとケンジ、ユウとソウタの恋模様も急加速。

 そして銀河中が見守る中、三姉妹はまさかの選挙特番MCを任されてしまう。

 次回、

 第26話

「銀河選挙と恋の開票速報」

 未来を決める一票と、まだ言えない一言。

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